2017年10月13日 5:22 pm

今注目の民事信託③~新しい自社株継承の方法~

 

 

ここまで2回の「民事信託」の記事で、信託を使うと仮に認知症になったとしても資産の凍結を防げ、財産管理を出来ることはわかって頂けたと思います。

これは復習ですが、信託するということは所有権の分解を示しています。

所有権を「権利」と「名義」に分けることをいいますが、全部の財産を信託出来るわけではありません。

信託出来る財産には限りがあるのです。

 

信託出来る財産

①現預金

②不動産

有価証券(上場株式・非上場株式・一部投資信託など)

④その他積極財産で委託者より分離出来るもの

※負債、年金は不可

年金なのですが、これは国民年金法及び厚生年金保険法に「譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。」と定められているために、信託出来る財産の対象外となっております。

 

上記の通り、有価証券にも信託を活用することが出来ます。

つまり、株式の所有権の分解が可能なのです。

 

 

株式の所有権の分解

株式(株主権限)の中身は、次のように分かれます。

管理処分権(議決権)=会社支配権

使用収益権(配当・換価価値)=財産的価値

 

従来の自社株継承対策は、株式の所有権(管理処分権及び使用収益権の両方)を渡すか渡さないかの2択であり、渡す方法としては、贈与・売買・相続による継承で、贈与税・買取資金など資金の負担が必要でした。

しかし、この株式信託を活用することにより今までにない自社株継承対策が実現出来るのです。

 

 

株式信託のメリット

(前提)父→社長 子→後継者

信託をするということは、所有権の分解ですから、株式の所有権のうち会社支配権を後継者に渡します。

・財産価値は社長にあるまま、後継者に支配権が移る。

・信託と同時に代表取締役も長男に譲れば、会社経営権は長男が握ることができます。

・父(社長)が長期入院、認知症、海外移住しても会社経営はとまりません

・信託後、父(社長)の成年後見人は信託財産である株式には手を出せなくなります。

・買取資金・贈与税・譲渡所得税といった資金負担がない

※もし、子(後継者)が支配権を乱用したとしても、父(社長)に指図権を設定することで議決権に紐付けが可能です。

 

 

株式信託の終了

信託終了事由発生により、残余財産である株式の帰属権利者を子(後継者)とすれば、最終的に会社支配権と財産的価値を子(後継者)に集約でき、自社株継承完了となります。

信託の終了は所有権化(所有権に戻る)ということです。

 

 

おわりに

このように株式信託は会社支配権と財産的価値の移転時期を分離することが可能です。

ただ、会社ごとに状況はそれぞれで違いますので、自社にあった自社株対策を考えていかなければなりません。

 

 

信託、自社株対策、事業承継対策についてご不明点がございましたら、専任の税理士が担当しますので、お気軽にご相談下さい。