国税庁が将来像を公表!税務調査にAI活用!?
6月末に国税庁がAIやICTの活用など、10年後の税務行政の姿を描いた資料を公表しました。
この「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」と名がつけられた資料の内容を簡単にまとめていきたいと思います。
まずは国税庁がAI導入を検討するにあたった背景を見てみましょう。
以下のような環境変化があるため、国税庁では今後AI・ICTの活用を検討していると思われます。
○ 経済取引のグローバル化 近年、個人投資家の海外投資や企業の海外取引が増加するなど、経済社会がますますグローバル化している。
○ 定員の減少と申告の増加 厳しい行財政事情により国税職員の定員が減少傾向にある一方、所得税申告件数や法人数等が増加している。
○ 調査・徴収の複雑・困難化 国際的な租税回避への対応や富裕層に対する適正課税の確保、大口・悪質事案への対応のために、マンパ ワーを重点的に投入していく必要がある。
では、具体的に国税庁が掲げる将来像を見てみましょう。
1、カスタマイズ型の情報の配信
○マイナポータルを通じて、納税者個々のニーズにあった税情報をタイムリーに配信
(例)・不動産を売却した方に対する申告案内 ・災害発生時に適用可能な税の減免制度のお知らせ
現在ハガキで来るお知らせがマイナポータルで配信されるようになりそうです。
2、税務相談の自動化
○ メールやチャットなど多様なチャネルによる相談・回答
○ AIを活用した相談内容の分析と最適な回答の自動表示
現状では申告書を作成する際の相談は電話や税務署への訪問が必要なので、税務署とメールやチャットができるようになるのは非常に便利ですね。
3、申告・納付のデジタル化の推進
○ 確定申告や年末調整に係る情報のマイナポータルへの表示による手続の電子化
(例) 生命保険料データ 、確定申告の医療費通知データ等
○ 行政機関間のバックオフィス連携(注1)による手続の簡素化(添付書類の削減)
○ 国と地方への電子的提出のワンストップ化
○ 電子納税等の推進
(例)・複数口座からのダイレクト納付※・自動現金領収システムの導入
※ダイレクト納付 : 税務署へ事前に預貯金口座の届出をすれば、インターネットバンキングを利用しなくても、e-Taxを経由して、即時又は納税者が指定し た期日に口座からの振替により納付ができる電子納税の仕組み
今年から国税のクレカ納税も始まりましたし、キャッシュレス化が進んでいる流れから電子納税は確実に普及していくものと思います。
4、申告内容の自動チェック
○ 申告内容と財産所有情報等との自動チェックによる申告漏れ等の迅速な把握
○ 不動産取引事例などの各種情報の自動収集による路線価・株価等の自動評定と申告財産の 評価額との自動チェック
5、軽微な誤りのオフサイト 処理
○ 是正が必要な誤り事項等の納税者への自動連絡
○ AIを活用したコールセンターの機能強化
(例)・応答事績の自動作成と分析 ・効果の高いコールリスト(注2) の自動作成 軽
相談内容を分析し、適切な回答を自動表示できるようなシステム開発されるそうです。
6、調査・徴収でのAI活用
○ AIを活用したシステムによる精緻な調査必要度判定、納税者への最適な接触方法と要調査項目の提示
○ AIを活用したシステムによる納付能力の判定、優先着手滞納事案の選定及び滞納状況等に応じた滞納整理方針の提示
○ AIを活用したシステムによる滞納者情報と国内外の財産情報等との自動マッチングによる差押財産等の迅速な把握
調査先もAIが決めることに・・・脅威ですね。
このように申告から納付までの税務手続を抜本的にデジタル化し、税務署に出向かず、 スムーズかつスピーディに手続が完了する環境が構築されます。
これにより納税者の利便性は更に向上することになります。
これに対してAIを活用した申告書内容の自動チェックや調査先の判別などが進むと、課税・徴収が効率化・高度化することとなります。
これは、納税者にとってあまりメリットとはいえません。
このように税務行政は大きく分けると利便性の向上と課税の効率化の2つの面で改善が進んでいく見込みです。
行政側もAI技術等を取り入れながら、段階的に改善に取り組んでいくとのことなので、民間企業も将来を見据えてAI技術にしっかりと対応していきたいものです。
末松会計事務所では、AI技術を使ったクラウドアプリケーションにより中小企業のクラウド化支援を推進しています。
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引用資料:https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/syouraizou/pdf/gaiyou.pdf