損益計算書(P/L)の分析~損益分岐点売上高~
今回で3つ目の経営指標の紹介です。
最後は貸借対照表ではなく、損益計算書の分析で用いれられる「損益分岐点売上高」です。
売上に関する指標ですので、ぜひご覧ください。
損益分岐点とは、営業利益の支出と収入がちょうど0になる時を言います。
損もしていないし、利益も出ていないという時の売上高が損益分岐点売上高となります。
なので、損益分岐点売上高は「売上がいくら出れば赤字にならないか」を測定するための指標です。
損益分岐点売上高の計算式
損益分岐点売上高は次の通り計算します。
損益分岐点売上高=固定費÷(限界利益÷売上高)
このままの算式だとわかりにくいので用語の説明と分解しながら説明していきます。
用語の説明
まず、損益分岐点売上高を計算するにあたっては、①営業利益、②変動費、③固定費、④限界利益の意味をしっておく必要があります。
営業利益は次の通り計算します。
①営業利益=売上総利益(売上高-売上原価)-販売費及び一般管理費
※売上総利益=粗利益
営業利益に関しては損益計算書にも記載があるので馴染みがあると思います。
②変動費とは、材料費や仕入のように、モノを製造したり、販売したりして、その売上高に比例して増える費用を言います。
販売数量が増えると比例して、製造数量や仕入数量が増える費用という意味です。
一般的な中小企業では「売上原価」とイコールだと捉えて大丈夫です。
③固定費とは、従業員の給与、減価償却、賃料のように、売上高の増減に関係なく、必ず一定的に発生する費用を言います。
つまり、売上がゼロだったとしても支払わなければならない費用という意味です。
一般的な中小企業では「販売費及び一般管理費」とイコールだと捉えて大丈夫です。
費用はこのように変動費及び固定費に分けられます。
④限界利益=売上高-変動費
一般的な中小企業では「売上総利益(粗利益)」とイコールだと捉えて大丈夫です。
※限界利益率(粗利益率)=限界利益÷売上高(粗利益率÷売上高)
これで用語の説明は終わりです。
ここからは損益分岐点売上高を分解していきます。
損益分岐点売上高の分解
上記にも記載した通りの計算式です。
損益分岐点売上高=固定費÷(限界利益÷売上高)
では、この計算式が成り立つまでの過程を説明していきます。
青字表記は上記の「変動費→売上原価」、「固定費→販売費及び一般管理費」、「限界利益→売上総利益(粗利益)」と置き換えた算式を表示します。
(Ⅰ)売上高-費用=利益
↓費用を変動費と固定費に分解します。
(Ⅱ)売上高-(変動費+固定費)=利益
売上高-(売上原価+販売費及び一般管理費)=利益
↓上記で説明した通り、損益分岐点売上高は利益が0になる売上高なので、利益を0にします。
(Ⅲ)売上高-(変動費+固定費)=0
売上高-(売上原価+販売費及び一般管理費)=0
↓
(Ⅳ)売上-変動費=固定費
売上高-売上原価=販売費及び一般管理費
↓売上高から変動費を差し引いたものは限界利益です。(④参照)
(Ⅴ)限界利益=固定費
売上総利益(粗利益)=販売費及び一般管理費
↓限界利益は限界利益÷売上高(限界利益率)×売上高と置き換える事が出来ます。
(Ⅵ)売上高×限界利益率=固定費
売上高×粗利益率=販売費及び一般管理費
↓損益分岐点売上高を求めたいので、限界利益率を右側にもっていきます。
(Ⅶ)売上高=固定費÷限界利益率
売上高=販売費及び一般管理費÷粗利益率
↓限界利益率を限界利益÷売上高に置き換えます。
(Ⅷ)売上高=固定費÷(限界利益÷売上高)
売上高=販売費及び一般管理費÷(粗利益÷売上高)
このような根拠で損益分岐点売上高の計算式は成り立っているのです。
まとめ
例えば、上記の算式の売上高を「販売個数×販売単価」と分解すると何個売らないと損益分岐点を割るのかも分かります。
そして損益分岐点を下げる(安全性を高めること)にはどこを改善しなければいけないか見えてくると思います。
「変動費が高いのか、固定費が高いのか、売上単価が低いのか」と企業によって見えてくるものは違うと思います。
一度自社分析をする際に活用してみてはいかがでしょうか。
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