未分割遺産が分割された場合の手続き
相続税の場合には、未分割遺産の分割・遺留分の減殺請求・遺言書の発見など、いわゆる後発的事由が生じる例が少なくないです。
今回は相続税に関する後発的な事由が生じた場合の申告方法を紹介していきます。
未分割遺産に対する課税と分割後の税務手続
相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人間で分割されていない場合には、その未分割財産は、各共同相続人が民法に規定する相続分に従って取得したものとして課税価格を計算し、相続税の申告を行うこととされています。
そして、その申告後に遺産分割が行われた場合には、各共同相続人が実際に取得した財産の価額に基づいて相続税の精算を行うことになります。
この手続きについては、おおむね次のとおりであります。
①遺産分割により取得した財産に係る相続税の課税価格が当初申告に係る課税価格より減少した場合
→更正の請求
②遺産分割により取得した財産に係る相続税の課税価格が当初申告に係る課税価格より増加した場合
→修正申告
③遺産分割により財産を取得したことにより新たに申告義務が生じた場合(新たに納付すべき税額が生じた場合)
→期限後申告
これらのうち、修正申告と期限後申告については期限がなく、税務署長による更生又は決定があるまではいつでも可能です。
なお、未分割遺産が分割された後の課税価格に基づく共同相続人全員の納付すべき税額と当初申告に係る課税価格に基づく共同相続人全員の納付すべき税額が異ならない場合には、上記の手続きによることなく、共同相続人間で負担税額相当額の金銭を授受することによって調整を行うことも可能です。
相続税法の特則規定による更生の請求
相続税法には申告後に生じる相続に特有の後発的事由に基づく期限後申告、修正申告及び更正の請求の各特則規定を設けています。
その事由は次のとおりです。
期限後申告・修正
①課税価格が計算されていた場合において、その後財産の分割が行われ、共同相続人等がその分割により取得した財産に係る課税価格が既にしんこく申告した課税価格と異なることとなったこと。
②死後認知、推定相続人の廃除、相続放棄の取消等により相続人に異動が生じたこと。
③遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。
④遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があったこと。
⑤いわゆる条件付物納が許可された場合において、その後に物納財産である土地について土壌汚染又は地下に廃棄物があることが判明したため、その物納許可が取り消されることとなったこと。
⑥相続、遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと。
⑦死後認知により相続人となった者から民法910条(分割後の被認知者の請求)の規定による請求があったことにより弁済すべき額が確定したこと。
⑧条件付又は期限付の遺産について、条件が成就し、又は期限が到来したこと。
⑨死亡退職金の支給額が確定したこと。
更正の請求
❶(上記①~⑧の事由と同様)
❷相続財産法人からの財産分与があったこと
❸未分割遺産が分割された時以後において配偶者の税額軽減規定を適用して計算した相続税額が既に申告した相続税額と異なることとなったこと。
❹未分割であった特例対象宅地等が分割されたことにより小規模宅地等の特例の規定を適用して計算した相続税額が既に申告した相続税額と異なることとなったこと。
したがって、国税通則の規定による「5年」を経過した後であっても、相続税法の事由が生じたことを知った日の翌日から「4か月」以内であれば、更正の請求が可能であります。
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