2017年9月24日 11:08 pm

相続税節税の基礎の基礎~財産額が80%減額できる小規模宅地等の特例とは~

 

相続税は相続財産から基礎控除と呼ばれる非課税枠を差し引いて計算しますが、

2015年1月から基礎控除が引き下げられて、課税対象者の範囲は大幅に広がっています。

 

そしてこの相続財産の内訳は土地(金額ベース)が一番の割合をしめており、もちろん居住用の土地も相続財産の対象です。

 

例えば相続財産の内訳に換金性の良い現預金等が少なく、主たる相続財産が換金性の悪い不動産や土地だとしたら、相続税を支払うために住んでいる家や土地を売却しなければいけない。

そんな事態もありえます。

 

このような事態を避けるための制度が「小規模宅地等の特例」です。

 

この制度は、相続により取得した土地のうち一定の面積までは土地の評価額を80%減額することができるというものです。(一定の要件あり)

 

もし、小規模宅地等の特例の居住用宅地等に該当し、土地の評価額が1億円だった場合、相続税の計算上、その土地の評価額は1億円-8000万円で評価額は2000万円になります。

8000万円の減税となります。

 

では、この小規模宅地等の特例を活用するための要件等を説明していきます。

 

 

対象となる宅地等の要件

小規模宅地等の特例の対象となる宅地等(宅地及び宅地の上に存ずる権利をいう)とは、次の①~③までのすべての要件を満たすものをいいます。

 

①次の(イ)(ロ)(ハ)のいずれかに該当する宅地であること(他2種類は割愛)

 

(イ)被相続人等の事業用宅地等(相続開始の直前において、被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されていたもの。)特定事業用宅地等

(ロ)被相続人等の居住用宅地等(相続開始の直前において、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されていたもの。)特定居住用宅地等

(ハ)被相続人等の貸付事業用宅地等(相続開始の直前において、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されていたもの。)貸付事業用宅地等

 

補足;この①における「被相続人等」とは、「被相続人若しくは被相続人と生計を一にしていた※被相続人の親族」のことです。したがって、被相続人のみならず、被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等についても小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

 

※被相続人と生計を一にしていたとは

この「被相続人と生計を一にしていた」の判断については相続人の法令通達等には、この点についての規定や取扱いはないため、一般的には所得税の取扱いに準じて判断せざるを得ないと考えられています。

 

(ⅰ)「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではない

 

(ⅱ)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次のような場合には、これらの親族は生計を一にするものとして取り扱う。

(イ)当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が勤務、修学等の余興には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合。

(ロ)これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養等の送金が行われている場合。

 

(ⅲ)親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとしてと取り扱う。

 

 

②棚卸資産又はこれに準ずるものとされる雑所得の基因となる宅地等に該当しないもの。

 

 

③被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての個人が取得した上記①に該当する宅地等のうち、限度面積要件※を満たす部分として、その個人が一定の方法により選択した宅地等であること。

 

※限度面積要件

減額が認められる面積がそれぞれの用途ごとに区分されていて、次の通りになっています。

  限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

 

小規模宅地等の特例はダブルで適用することも可能で、貸付事業用宅地等とダブル適用する場合は以下の計算式により適用部分を算定します。

 

特定居住用宅地等×200/330+特定事業用宅地等×200/400+貸付事業用宅地≦200㎡

 

ここまでが小規模宅地等の要件です。

次は相続人の要件です。

 

相続人別の要件

誰が相続を受けるかにより適用要件が異なり、なので誰がその土地を相続したかということが重要になります。

 

①配偶者が相続した場合

→無条件で本特例を使えます。

 

②同居親族又は同一親族が相続した場合

→被相続人と同居又は生計を一にしていた親族であること。

 

家なき子が相続した場合

→配偶者及び同居相続人がいないこと。土地を相続する相続人が、相続開始前3年以上、借家※住まいであること。

 

※家なき子とは

「借家」とは、個別で借りている家である必要はありません。

親が持っている家に1銭もお金を払わずに住んでいても「借家住まい」となるため、家なき子特例の適用対象となりえます。

逆に親がマンションや家を購入する際に、子が少しでもお金を出してしまうと「持ち分がある」ことになるため借家にはならず家なき子特例の適用はできません。

さらに、持家をもっていても家なき子になる方法はあります。

今住んでいる持家を貸し出すか売却を行い借家に住み、家なき子になるという方法です。

 

 

おわりに

 

小規模宅地等の特例を活用すれば大幅に相続税額を減らすことをできます。

 

しかし、上記で記載した通り要件が複雑であるため適用できるかの判断が難しいです。

 

生前にしっかりと小規模宅地等の特例を利用できる状況にしておく必要があります。

 

現状で小規模宅地等の特例が適用できるかご不安の方、まずは現状の財産診断をおこないましょう。

 

生前の財産診断はこちら

 

 

 

相続税の申告・生前対策・相続財産シュミレーションを検討される場合は、名古屋市東区の会計事務所、末松会計事務所にお任せ下さい。