税務調査で要注意!!給与と外注費の線引きは?
会社が支払う人件費には、主に「給与」と「外注費」があります。
この会社で支払った経費が給与か外注費かは、税務調査において多くの論点になります。
給与と外注費の区分がなぜ税務上の争点になるかというと、外注費の方が課税上有利になるからです。
給与と外注費の相違点と計算例
給与と外注費には、下記の図のような違いがあります。
①消費税 | ②所得税 | ③社会保険 | |
給与 | 控除→なし | 源泉徴収→必要 | 会社負担→あり |
外注費 | 控除→あり | 源泉徴収→不要 | 会社負担→なし |
例えば外注費を毎月50万円ずつ年間600万円計上していたとします。
この外注費が税務調査で「給与」と指摘されました。
そうなると追徴税が次のように発生します。
①消費税
600万円×8/108=約44万円
②所得税
給与所得の源泉徴収税額表(乙覧)より
143,500円×12ヵ月=約172万円
合計約216万円となります。
さらにこの216万円+延滞税・加算税となり、給与と外注費では同じ経費でも大きく異なります。
給与と外注費の判定基準
給与
雇用契約もしくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務の提供の対価です。つまり、雇用主が従業員に支払う労働への報酬であり、残業手当などの諸手当も含めた会社からのすべての報酬です。
外注費
会社の業務の一部を委託する業務委託契約書や請負契約もしくはこれに準ずる契約に基づき、外注先の企業や個人事業主が実現した業務への対価です。
基本的には給与は「雇用契約」、外注費は「請負契約」です。
しかし、給与と外注費は形式上だけではなく業務の実態も加味して総合的に勘案して判定されます。
「消費税法基本通達」
個人事業者と給与所得者の区分
1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
上記の事項を簡単にまとめると次のようになります。
(1)他人が代わりに行える。
〇 外注費 × 給与
(2)勤務時間が管理されていたり、指示された作業をしている。
〇 給与 × 外注費
(3)不可抗力で滅失した場合に報酬をもらえる。
〇 給与 × 外注費
(4)作業のために使う材料や用具が用意されている。
〇 給与 × 外注費
まとめ
給与と外注費は基準のみで判断されるのではなく、個別の契約内容・業務実態に応じて客観的で総合的に判断されます。
絶対的な線引きがあるわけではないので慎重に判定し、税務調査を乗り越えましょう。
上記についてご不明点がございましたら、専任の税理士が担当しますので、お気軽にご相談下さい。