経営者保証なしで融資ができる!?~経営者保証に関するガイドラインとは~
今回は金融機関から借り入れを行う際に求められる経営者保証を外す方法について解説します。
中小企業が借入れを行う際、多くの金融機関は経営者個人の保証を求めます。
これは金融機関が融資額の回収可能性を高めるためです。
しかし、これでは仮に融資を受けられたとしても、経営者に保証債務があるためリスクを負うような積極的な経営判断できなかったり、事業承継を控える会社では後継者候補が引き継ぎに難色を示す懸念があります。
そこで、政府は個人保証を伴わない融資を促進し、そのための枠組みを経営者保証に関するガイドラインとして定めて
2014年から適用を開始しました。
要するに経営者保証に関するガイドラインを満たせば経営者の保証なしで借入ができるということです。
では、経営者保証に関するガイドラインとはどんなものなのでしょうか。
まず対象者を確認してみましょう。
ガイドラインの対象者
①主債務者が中小企業であること。
②保証人が個人であり、主債務者である中小企業の経営者等であること。
③主債務者である中小企業と保証人であるその経営者等が、弁済に誠実で、債権者の請求に応じて負債の状況を含む財産状況等を適切に開示していること。
④主債務者と保証人が反社会勢力でなく、そのおそれもないこと。
以上が対象者の要件です。
この要件は多くの企業が満たすことができるのではないでしょうか。
では、次に経営状況の要件を確認してみましょう。
中小企業に求められる経営状況
①法人と個人の分離
→融資を受けたい企業は、役員報酬・賞与・配当、オーナーへの貸付など、法人と経営者の間の資金のやりとりを、「社会通念上適切な範囲」を超えないようにする体制を整備し、適切な運用を図る。
簡潔にまとめると公私混同がないことです。
②財務基盤の強化
→融資を受けたい企業は、財務状況や業績の改善を通じた返済能力の向上に取り組み、信用力を強化する。
簡潔にまとめると純資産がプラスで、債務超過ではないことです。
③適時適切な情報開示
→融資を受けたい企業は、自社の財務状況を正確に把握し、金融機関などからの情報開示要請に応じて、
資産負債の状況や事業計画、業績見通し及びその進捗状況などの情報を正確かつ丁寧に説明することで、
経営の透明性を確保する。
→情報開示は、公認会計士・税理士など外部専門家による検証結果と合わせた開示が望ましい。
簡潔にまとめると翌月には前月分の数字が上がるなど月次試算表が正確で作成スピードが速いことです。
上の3条件を満たした企業は、経営者保証を外すように金融機関に求めることができるとしています。
金融機関にはガイドラインに従う法的な義務はないものの、努力として求められています。
ここでのポイントは、個人と法人の分離になると思います。
法人と経営者の間の資金のやりとりが多く、役員貸付金や役員借入金が多額に計上されているのが中小企業の現状だと思います。
時間をかけてでも公私混同の状態を改善していく必要があります。
最後にガイドラインの効果を見てみましょう。
ガイドラインの効果(新規借入時・既存保証契約見直し時)
①経営者保証なしで新規融資を受けることができる可能性があります。
②経営者保証の解除ができる可能性があります。
ガイドラインの効果(保証債務履行時・保証債務整理時)
①必要な生計費や自宅を手元に残せる可能性があります。
②引き続き経営に携わったり、再起を図れる可能性があります。
ガイドラインの実績
政府系金融機関(※1)における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績
*1 商工組合中央金庫・日本政策金融公庫
まとめ
上記実績の表のように保証を伴わない融資を受けるケースは徐々に増えつつあり、平成28年度でも全体の3割を超えてきました。
ただ、このデータには民間の銀行や信用組合は含まれていないので、ほとんどの中小企業は経営者保証ありでの融資契約なのが現状です。
中小企業に求められる経営状況を満たし、多くの企業が経営者保証なしで融資が実行できるようにガイドラインを活用していきたいものです。
参考資料;納税通信第3456号及び中小企業庁HP
ガイドラインの対象・経営状況に当てはまるかもと思った経営者の方は、専任の税理士が担当しますので、お気軽にご相談下さい。