2017年10月18日 11:19 pm

銀行の決算書の見方~融資可否判断~

 

 

融資を受ける際に決算書を銀行に提出しますが、実際に銀行が決算書をどのように評価し、判断しているのか気になりませんか?

銀行が基準にしている要素等が分っていれば、決算時に融資対策を打つことも可能になりますので、今回は銀行がどのように決算書を見ているのか紹介していきたいと思います。

 

 

1、銀行は何をもとに判断しているのか?

・業種の動向

・経営者の考え方

・決算書、財務数値(黒字か赤字か?、実質自己資本は?)

・会社全体の債務償還年数

・将来性

・その他

 

これらをもって「キャッシュ・フローが生み出され、返済が可能」と判断されると融資を無事に受けることが可能です。

そして、上記の項目などを勘案して、銀行は格付・債務者区分判定し、融資の方針を決定しています。

格付・債務者区分についての詳しい説明は割愛しますが簡単に説明しますと、格付を元に「自己査定による債務者区分・引当率・新規借入可否」を区分しているのです。

なので、良い格付をしてもらえないと新規借入などは断れてしまいます

 

 

2、格付のための2つの視点

①定量的評価(財務評価)

損益項目

・収益性項目(会社が儲かっているか?各活動の成果は?)

・成長性項目(会社が成長しているか?伸び率は?)

貸借項目

・安全性項目(倒産の危険性は?安全な会社か?)

・返済能力(貸した金の返済能力はあるか?)

*定量的評価は決算書を見て評価されます。

 

②定性的評価(非財務評価)

・市場動向、競合状況

・経営者及び経営の状態、営業基盤

・ネガティブチェック(財務資料の信頼性、提出遅延、資金使途違反等)

 

定量的評価が最も重要になっています。

評価の割合でいうと定量的評価と定性的評価でおおよそ2:1で評価されますので、決算書の対策が融資を受ける上で大切になってきます。

 

 

3、定量的評価の主なポイント

収益性項目

→営業損益、経常損益、当期純損益は黒字が継続しているか。

→売上高対各段階損益比率は伸長しているか。

安全性項目

→流動比率・当座比率は100%超を示しているか

→自己資本比率は十分な水準であり、実質自己資本で債務超過ではないか。

返済能力項目

→キャッシュ・フローはプラスであるか

債務償還年数は一定の範囲内であるか(基準は10年以内)。

 

 

4、銀行の評価の仕組み

銀行は提出した決算書を組み替えて評価します。

例えば以下のようなものがあります。

・土地に含み損がある→土地の簿価を、含み損を考慮後の金額に修正します。

・滞留債権(決算書にずっと残っている売掛など)がある→滞留債権の評価を0とみなす。

・費用処理すべきものが資産として計上されている(減価償却資産など)→評価を0とみなす。

 

このように組み替えて、時価の変動や資産価値を決算書に反映させた自己資本を評価しています。

ここで注意しないといけないのが疑わしきものでわからないものがあると評価を0とみなされてしまう可能性があるということです。

銀行員も1人で何十社と担当を持っていると確認している暇がないので微妙なものは評価0とされ判断されているかもしれないので、事前に説明しておくと良いと思います。

 

 

5、定量的評価で使用される決算書項目と算式(一部抜粋)

使用される算式が多くあるので、一部だけ紹介していきます。

 

自己資本比率(平均:赤字企業-4%、黒字企業27%、優良企業53%)

自己資本(純資産合計)/総資産(負債・純資産合計)×100

この自己資本比率が40%以上だと倒産しにくい企業といわれています。

 

流動比率(平均;120-150%)

流動資産合計/流動負債×100

流動比率が100%以上であることは短期的な支払い能力が支払義務をまかなって余りあるということで、支払余力があると推測することができます。逆に100%以下どと資金がショートする可能性があり、支払能力に問題があると推測することができます。

 

債務償還年数

有利子負債(短期借入金+長期借入金+社債)-運転資金(売掛金+受取手形+在庫+-買掛金-支払手形)/キャッシュ・フロー(簡易的VER当期純利益+減価償却費)

10年以内がベストですが、数年前より緩和され20年程度まで許容範囲とされています。

 

他にも以下のようなものがあります。

・ギアリング比率

・固定長期適合比率

・売上高経常利益率

・総資本経常利益率

・経常利益増加率

・インタレスト・ガバレッジ・レシオ

格付項目の中で、特に重要と考えられる指標が営業利益・自己資本比率・債務償還年数です。

なので、どれだけ総資産、自己資本、借入金、営業利益の数値を改善できるかがポイントとなります。

 

 

6、格付けを向上させるためには?

・定量的評価の改善

→スリムな決算書/財務内容を実現し、定量的評価の改善を行う。

・定性的評価の改善

短期・中期事業計画や資金繰り計画等を活用し、定性的評価項目に関する情報を開示する。

 

 

まとめ

格付は新規借入の可否のみに影響するわけではありません。

格付が改善すると、借入枠の増加や、金利をはじめとした借入条件の改善、ビジネスマッチングの可能性などにつながっていきます。

そして、格付を改善する方法は様々あるので、融資を検討している方は決算書の見直しをすることをお勧めします。

 

 

 

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