2019年1月31日 10:54 am

働き方改革~施行事例紹介~

今年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されることとなります。今回はその一部を簡単にご紹介します。

 

○労働条件の明示がメール等でも可能に

労働者を雇い入れる際、使用者は労働条件について書面で明示しなければならないこととされています。2019年4月より、労働者が希望し、かつ、労働者が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができる場合に限り「メール等」での明示が可能になりました。

281aa877-136177

○フレックスタイム制の清算期間上限を3か月に拡大

フレックスタイム制とは、 「清算期間」(現行、最長1か月)で定められた所定労働時間の枠内で、労働者が始業・終業時刻を自由に選べる制度です。結果的に、労働時間が長い日もあれば、短い日も生じ、労働者は、あらかじめ定められている清算期間中の所定労働時間(総労働時間)に達するよう、労働時間を調整して働くことになります。

これまでのフレックスタイムは1ヶ月以内に清算が必要だったため、忙しいタイミングが1ヶ月以上続くことが多い場合は、調整できないことが多かったという点が問題でした。月の前半が忙しいからと多く働き、月の後半は働く時間を減らすという作戦でも最終的には月末まで忙しい時期が終わらず、結果として大幅な時間外労働になってしまっていました。今回の法案では3ヶ月以内に清算できればよいとなっています。3ヶ月も連続で忙しいということは少ないと思いますので、就業時間の調整ができ、本来のフレックスタイム制の良さを発揮できることでしょう。

60009000307

○時間外労働の上限規制の見直し(罰則付き)

(大企業2019年4月適用、中小企業2020年4月適用)

法定労働時間は、1週間で40時間、1日8時間までと定められています。それ以外の労働を時間外労働といい時間外労働といい労働基準法で禁止されています。しかし労使協定の合意があれば時間外労働が適法に行える協定に36協定があります。しかしその36協定では時間外労働の上限について、36協定で定める労働時間の延長の限度等に関する「特別条項」とよばれる制度があり、36協定届の所定欄に理由と延長時間を記載することで、限度なく時間外労働が可能となってしまいます。これを、時間外労働時間の上限が1ヶ月100時間、1年で720時間が上限となりました。また時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月が限度とされています。違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

20160706-column

○高度プロフェッショナル制度の創設

この制度では対象の労働者を労働時間の規定から除外します。

今までの労働制度では働いた時間の分だけ賃金が支払われていましたが、高度プロフェッショナル制度では働いた時間は賃金に反映されません。労働時間に関係なく成果をあげた人が高い労働賃金を得ることができます。高度プロフェッショナル制度は『特定高度専門業務・成果型労働』ですので、対象となるのは特定の業種や年収の労働者に限定されます。

対象となる業種は以下の通りです。

研究開発、アナリスト、コンサルタント、金融商品のディーラー等

また、現段階ではこれらの業種につく労働者のなかでも、年収1,075万円以上の方が対象とされています。

consulting-3

○有給休暇「年5日以上」取得の義務化(罰則あり)

 全ての企業において年10日以上の有給休暇が付与された労働者に対し、うち5日以上を取得させる義務を会社が負うことになります。また、従業員が自ら取得しない場合は、会社のほうで時季を指定して強制的に取得させることが法的義務となります。違反した場合は罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

publicdomainq-0008225gyj

○客観的方法による「労働時間把握」の義務化

会社は従業員に対し、客観的な手法による労働時間の把握義務を負うことになります。

厚生労働省作成のガイドラインでは、企業は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し記録しなければならず、その確認方法としては、使用者自らが労働者の始業・終業時刻を確認する方法、あるいは、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し記録することが求められます。と記載されています。また労働時間の把握については他に「「労働時間の状況を把握」の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない」と省令で定められました。

0366_00000006310

○最後に

規制規制の世の流れですので、今まで以上に意識してこれを機に労働規則や業務フローを見直してみてもよいのではないでしょうか。