COLUMN経営コラム

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クラウド会計の選び方|機能編
2021.11.09
経理クラウド
企業の経営者や個人事業主、またこれから事業をはじめようとしている方々の多くは、クラウド会計の導入について検討したことがあるかと思います。
クラウド会計サービスは、経理処理のオートメーション化など様々な利点があり、検討に値するサービスです。(※)
※導入の利点・考え方については以下の記事もご参照ください。
マネーフォワードやfreeeが有名ですが、既存の会計ソフトもどんどんクラウドに参入しており、たくさんのサービスがあります。
選択肢が多い事自体は基本的に、ユーザーにとって良いことです。
では、その中からどれを選ぶかとなると、頭を抱える方も多いのではないでしょうか?
クラウド会計に限りませんが、こうしたサービス選択のポイントとして、
- 使いやすさ(ストレスなく使用できるか)
- 安全性(データが安全に管理されているか)
- 信頼性(大切な会計データを任せるに値する会社か)
- 永続性(長期間に渡ってサービスを提供し続けるか)
と言ったことがあげられます。どれも大切なことです。
しかし、経営者として最も気になるのは、サービス内容(=機能)とコストのバランスでしょう。
コストについては、各サービスのHPに料金表がありますので、簡単に確認できます。
この記事でも、ざっくりと料金を比較できるようにしています。
どのクラウド会計サービスでも、料金は「◯◯プラン」とか「◯◯コース」というようにレベル分けされており、サービス内容が少しずつ異なります。
経営者が正しくサービスを選択するには、機能面(サービス内容)について知っておく必要があります。
この記事では、クラウド会計が提供しているサービスについて
- どんな内容のサービスで
- 誰に(どのような会社)とって
- どれくらい必要なのか
を、わかりやすく説明します。
個人事業主から企業経営者。更には経理部門責任者・経理担当者まで、幅広い方にお役立ていただける内容となっています。
クラウド会計サービスは比較的新しい技術で、日々進歩しています。
最後までお目通しいただき、クラウド会計サービスの基礎知識を押さえることで、今後更新される情報も簡単に理解できるようになるでしょう。
クラウド会計のサービス内容(=機能)の解説
クラウド会計サービスは、大きく個人用と法人用に分けられます。
個人用は主に個人事業主を対象としたもの。法人用は会社向けとなります。
更に、個人用・法人用がそれぞれ「零細・小規模・中規模」の3クラスくらいに分けられます。
提供会社ごとにクラス分けの数や基準が異なりますが、大雑把にくくると、以下のようなイメージ(※)です。
区分 | 売上高 |
---|---|
零細 | 1千万円未満 |
小規模 | 5千万円未満 |
中規模 | 1億円未満 |
おおまかな区分がわかったところで、個別のサービスを見ていきましょう。
以下では、サービス内容に続き、重要度を☆の数で示します。
☆☆☆☆☆・・・ | 絶対に必須の機能 |
☆☆☆☆・・・・ | 事業の状況によって必須の機能 |
☆☆☆・・・・・ | クラウド会計を導入するからには備えたい機能 |
☆☆・・・・・・ | 使いようによっては便利な機能 |
☆・・・・・・・ | 通常は必要でない、特殊なケースでのみ必要となる機能 |
日常業務|会計処理
モノやサービスを売る・仕入れる。経費を使うといった各種の取引を会計帳簿に記載するのが日常の会計処理の範囲です。
クラウド会計サービスでは、基本的な会計機能に加え、処理を簡単にするための様々な自動化機能を提供しています。
▼ この記事の内容
仕訳入力|☆☆☆☆☆
仕訳入力が会計ソフトの第一目標なので、実装していることは当然です。
内容 | 事業上の取引を帳簿に記載することを「仕訳」といいます。 この「仕訳」をデータに入力する機能です。会計ソフトの基本中の基本機能と言っていいでしょう。 | ||||||
対象 | 全ての事業者にとって必須の機能です。 | ||||||
重要度 | 絶対に必要。これがなければ会計ソフトとは言えません。 | ||||||
提供状況 |
|
口座・クレジットカード等との連動|☆☆☆
従来は、通帳やクレジットカード明細を一行ごとに仕訳入力する必要がありました。専門の経理担当者がいない場合、これが大変な負担になることがあります。
そうした方には、非常に便利な機能です。
内容 | ネットバンク口座やクレジットカードの明細情報をもとに半自動的に会計情報を取得してくれる機能です。 | ||||||
対象 | 預金・クレジットカードなどの取引件数が多い事業者。 これらの取引を入力する時間がない、または簿記・会計の知識に自信がない経営者。 | ||||||
重要度 | せっかくクラウド会計を導入するのならば、このくらいの機能は欲しいところです。 | ||||||
提供状況 |
|
請求書の作成および会計との連動|☆☆
一部の小売業を除いて、通常の売上では請求書を発行し、後日入金されます。
これは会計上、①請求書の発行 ②売上計上(仕訳)③入金確認(消込み)④入金処理(仕訳)と、4段階の処理を必要とします。
クラウド会計システムでは、請求書を発行するだけで、その他の処理は半自動的に行うことが可能です。
大変に便利なのですが、サービスやプランによっては「登録取引先件数◯件まで(それを超えると1件あたり◯円の超過料金がかかる)」といった制限があることもありますので注意しましょう。
内容 | 請求書発行をクラウド会計サービスから行うことによって、自動的に売上を計上し、サービスによっては入金確認もある程度自動的に行うことができます。 | ||||||
対象 | 取引先が多い事業者には、特に有効。 | ||||||
重要度 | 掛け売りの多い業種で取引先件数が多ければ多いほど、重要度は増します。 その場合、消込みの機能を備えたサービスを選択しましょう。 | ||||||
提供状況 |
(※)両社とも、最安のプランでは消込機能を搭載していない。 |
税務申告|個人・法人の所得税・法人税・消費税
法人税の申告を、知識・経験のない方が行うのは、まずもって不可能です。5千万円以上の売上があるような個人事業主も同様。
税理士という職業が成立する理由の一つがそれです。
ですが、マネーフォワードなどのクラウド会計サービスでは、確定申告もサポートしています。
これは非常に小さな規模。例えば事業主一人で営業している方のためのサービスです。
個人の確定申告書作成・送信|☆☆☆
事業規模が非常に小さい場合(売上高1千万以下ぐらい)であれば、税理士を介さずに自身で申告するという選択肢がありえます。
そのようなときに、クラウド会計システムを導入するなら、確定申告書の送信までサポートするものを選んだほうがよいでしょう。
内容 | 会計データなどから、確定申告書を作成し、サービスによっては税務署に送信することもできます。 | ||||||
対象 | 一人ですべての事業・事務・会計・税務などを行う個人事業主。 | ||||||
重要度 | 税理士なしで確定申告を済ませたい個人事業主ならば、備えておきたい機能です。 | ||||||
提供状況 |
|
法人税申告書作成・送信|☆
法人税の申告書は、素人が簡単に作れるものではありません。
現状のクラウド会計システムでも、適正な節税を行い、なおかつ適法な申告を行うことは困難です。
内容 | 会計データなどを集計し、法人税の申告書作成をサポートします。 (※)ただし現状では、クラウド会計システムだけを用いて、素人が完全な法人税申告書を作成することは困難です。 | ||||||
対象 | 法人税申告に対して知識や経験がある経営者。もしくはそういった経理担当社の方に任せる場合。 | ||||||
重要度 | 法人税申告は基本的に、税理士に依頼すべきです。 | ||||||
提供状況 |
(※)やはり困難なのか、法人税の申告を完全自動化したクラウドサービスは今のところ存在しません。 |
消費税|☆☆(消費税の課税事業者にとっては☆☆☆☆)
消費税がかかる売上高が1千万円を超えると、国に消費税を納めなければなりません(現在、売上が1千万以下であれば消費税を申告・納付しなくてもよいことになっています)。
そのためには、消費税の適切な会計処理・申告が必要です。
消費税を納めることになれば通常は、税理士にすべての処理を任せることになります。
この記事の本意とは外れますので詳細には触れませんが、2023年10月から「インボイス方式」が導入されることに伴い、売上高1千万以下の事業者・会社も消費税を支払う必要が出てくる可能性があります。
結局、これからの事業者は、今現在、消費税を納税する立場になくとも(売上高が1千万以下であっても)、今後を見据えて消費税を集計できる会計システムにしておくべきでしょう。
内容 | 会計データから消費税の集計をサポートします。 申告書を直接作成するサービスもあります。 | ||||||
対象 | 消費税の課税事業者(だいたい、年間の売上高1千万円超が基準)。 | ||||||
重要度 | 軽減税率の導入で消費税の申告は非常に複雑になりました。 消費税の申告をする必要がある方は、なるべく早く税理士に相談しましょう。 | ||||||
提供状況 |
(※)マネーフォワードは現在、消費税の集計のみ可能。対してfreeeでは申告書の作成・送信までサポートしている。 |
給与計算|☆☆☆
従業員が一人でもいれば、勤務時間や残業代などを計算して給料を払わなければなりません。
給料からは、雇用保険料や社会保険料、税金などを差し引く必要があり、年末にはそれを精算する年末調整という業務もあります。
毎月の給料をただ支払うだけでも、仕訳にすると一人あたり数行~十数業に達することがあります。
クラウド会計サービスには、こういった業務を簡略化したり自動化するシステムが備わっています。
内容 | 給与から税金や社会保険料などの差し引き額を計算し、更には会計と連動する機能です。 主にオプションとして、勤怠データ(タイムカードなど)から自動的に給与を集計できる機能もあります。 | ||||||
対象 | 労働者を雇っている全ての経営者。 | ||||||
重要度 | タイムカードからの集計を全て税理士などに依頼するとかなりの料金がかかります。 クラウド会計で処理できる範囲の給与計算は自社で行った方がよい場合があるかも知れません。 | ||||||
提供状況 |
(※)マネーフォワードは現在、5名までサポートしている。対してfreeeでは、給与のサポートは完全な別サービスとなっている。 |
まとめ:税理士がついているなら、マネーフォワードがオススメです。
ここまでの記事をご覧いただき、ありがとうございます。
本記事で得た知識をもとに、最適なクラウド会計サービスをご選択いただければ幸いです。
それでもどこにしてよいかわからない場合は、マネーフォワードの中間的なプランを一度検討してみましょう。
特に、「税理士と契約しているが、経理コストをもっと削減したい。」という経営者にマネーフォワードをおすすめいたします。
私見ですが、マネーフォワードは、コストと機能のバランスが絶妙です。
機能(=サービス)について、基本的な解説をしましたが、コストについてはまた次の記事で案内します。