COLUMN経営コラム

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暗号資産(仮想通貨)の申告は税理士に相談できる? | 節税の方法も3つ紹介!
2021.08.22
税務
近年、新しい形の財産として注目を集めている暗号資産(仮想通貨とも言います)。その新規性と市場規模の急速な拡大のために法整備や税制上の対応は遅れがちでしたが、2021年現在では金融取引法や税法上の取り扱いもまとまってきています。
こういった時代の情勢を踏まえ、個人の方が運用する暗号資産(仮想通貨)の税金にスポットを当てて、これから主に次のような事項について解説したいと思います。
- 暗号資産(仮想通貨)の概要
- 暗号資産(仮想通貨)にかかる税金の概説・申告方法
- 暗号資産(仮想通貨)の税金を節税する方法
- 暗号資産(仮想通貨)について税理士に相談する方法・ポイント・費用
これらの全ての内容を、おおよそ10分以内でご理解いただけるよう説明しています。
短時間で暗号資産(仮想通貨)にかかわる税金のエッセンスを学ぶことができます。
サラリーマンの方など給与所得を主としており、暗号資産(仮想通貨)の利用を始めた方・検討しておられる方には特に役立つ情報となっております。
この記事で、暗号資産(仮想通貨)と税金の関係について正しい知識を身につけましょう。
▼ この記事の内容
暗号資産(仮想通貨)とは
ビットコインやイーサリアムなどの、インターネット上でやりとりできるある種の財産的価値をまとめて暗号資産と呼びます。
似たものに電子マネーなどのサービスがありますが、暗号資産(仮想通貨)は電子マネーとは根本的に異なります。大きな違いとしては、
- 紙幣や硬貨のような物理的実体がない
- 国家などが価値を保証して発行したものではない
といった点があげられます。
従来の「通貨」の概念とは大きくかけ離れた、新しい「財産」・「決済手段」が登場したと考えるべきでしょう 。
「暗号資産」、「仮想通貨」どっちが正しい?
「暗号資産じゃなくて仮想通貨じゃないの?」という方もおられるでしょう。このような財産的価値を指すために、以前は専ら「仮想通貨」という言葉が使われていました。しかし、2020年5月に施行された金融商品取引法・資金決済法の改正によって、法令上の呼称が仮想通貨から暗号資産に変更。以降、行政文書などでは「暗号資産」と記されることになっています。
「仮想通貨」という用語が禁止されたわけではありません。民間では仮想通貨という言葉もよく使われています。
これらの事情を鑑みて、この記事では基本的に「暗号資産(仮想通貨)」という表現に統一することにします。
今後のこの記事内では、暗号資産と仮想通貨は同義であるとお考え下さい。
暗号資産(仮想通貨)の定義・特徴
実像を把握するために「日本の法律上、暗号資産(仮想通貨)がどのように定義されているか」「実用上どのような特徴があるか」を概観します。
暗号資産(仮想通貨)の法律上の定義
暗号資産(仮想通貨)は、資金決済法において以下の性質をもつものと定義されます。
- 不特定の者に対して代金の支払い等に使用可能。法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる。
- 電子的に記録され、移転できる。
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない。
暗号資産(仮想通貨)の特徴
また、暗号資産(仮想通貨)には、従来の貨幣などとは違う特徴があります。
- 銀行などの第三者を介さずにやりとりすることができる。
- 通常は金融庁・財務局の登録を受けた暗号資産交換業者から入手または換金する。
- 国家や国の中央銀行が発行する法定通貨ではないため価値の変動が大きい傾向にある。
こうした特徴などから、暗号資産(仮想通貨)は決済手段としてというより投機の対象として取引されることが多くなっています。
取得・換金の目的が何であれ、価値が変動する暗号資産を売買すると、利益・損失が発生することになります。そこで税金という問題が登場して来るのです。
暗号資産(仮想通貨)にかかる税金
個人が暗号資産(仮想通貨)の取引で利益を得ると、その利益に対して税金がかかる可能性があります。
暗号資産の取引による利益(税法では所得と言います)は、通常、所得税の区分上「雑所得」とされます(※)。サラリーマンの場合、暗号資産にかかるものも含めた雑所得の合計金額が20万円を超える場合には税金がかかるため、確定申告をしなければなりません。
暗号資産(仮想通貨)の雑所得が発生するタイミング
具体的にどのような場合に暗号資産の雑所得が発生するのか、所得の計算方法とともに見ていきましょう。
取引 | 取引内容 | 所得(利益)の計算方法 |
---|---|---|
売却 | 暗号資産を売却したとき | 譲渡価額 – 〔1単位あたり取得価額(※) × 売却した数量 〕 = 所得金額 |
決済 | 暗号資産で商品・サービスの代金を支払ったとき | 商品・サービスの価額 – 〔1単位あたり取得価額(※)× 支払った数量 〕 = 所得金額 |
交換 | 暗号資産(仮想通貨)で他の暗号資産(仮想通貨)を購入したとき | 購入した暗号資産の価額 – 〔1単位あたり取得価額(※) × 支払った数量 〕 = 所得金額 |
これらの所得金額の合計が20万円を超えると、確定申告をする必要があります。
所得がマイナス(損失発生)の場合はどうなる?
上記の計算で所得金額がマイナスになる場合、どうすればよいでしょうか?
マイナスの雑所得が発生した場合は、原則として他のプラスの雑所得と相殺することができます。
ただし、国内FX取引にかかる雑所得など相殺できないものもあるので注意が必要です。また、給与所得や不動産所得など他区分の所得との相殺もできません。
暗号資産(仮想通貨)1単位あたり取得価額の算出(評価)方法
暗号資産の取得価額の計算方法には総平均法と移動平均法の2つがあります。
算出(評価)方法名 | 計算 | 特徴 |
---|---|---|
総平均法 | 購入のつど「購入金額合計 ÷ 購入数量合計 = 取得単価」を計算 |
|
移動平均法 | 「1年間の購入金額合計 ÷ 1年間の購入数量合計 = 取得単価」で算出した単価をこの年の全ての取引の取得価額とする |
|
計算(評価)方法は暗号資産(仮想通貨)の種類ごとに選択することが可能。ただし、あらかじめ税務署に届け出る必要があり、一旦選択した方法は3年間継続して使用しなければなりません。
暗号資産(仮想通貨)で得た所得の確定申告 | 自分で申告する場合
暗号資産(仮想通貨)で生じる雑所得の計算は、これまでの説明でお分かりのように簡単です。
計算ができれば、自分で確定申告をすることもできます。
確定申告には、国税庁のe-taxが便利です。e-taxはインターネット上で税金の申告書作成などを行うためのサービスで、専門知識がなくても簡単に確定申告をすることができるよう工夫されています。
暗号資産(仮想通貨)の所得計算には国税庁が提供しているエクセル計算表があります。
計算した所得をこちらの説明どおりに入力すると雑所得の書類作成完了です。
サラリーマンの方の場合、あとは源泉徴収票の内容などを入力するだけで確定申告書が完成します。
暗号資産(仮想通貨)の所得を申告するには、通常、このように自分で申告する方法で十分です。
暗号資産(仮想通貨)の所得税を節税するには? | 3つの方法を紹介!
暗号資産(仮想通貨)にかかる税金は節税できないでしょうか? 結論から言ってしまいますと、効果的な節税の方法はかなり限られます。
なぜなら、暗号資産(仮想通貨)にかかる税金で説明したように、所得の計算方法が単純で、工夫・選択の余地が少ないからです。
それでも節税できる可能性はあります。以下、主な方法を3つ紹介します。
① 取得単価の算出(評価)方法の選択
暗号資産(仮想通貨)1単位あたり取得価額の算出(評価)方法の選択によって年次ごとの所得(利益)金額は大きく異なることがあります。
ただし、その選択が節税になるのか、結果的に増税になってしまうのか予測は困難です。
また重要なこととして、評価方法の違いは単年では所得金額に際を生じるものの、長期的な総計では同じ利益となります。
よって、評価方法の選択によって今年の税金が減らすことができた場合には、将来の税金が増える(トータルの納税額はあまり変わらない)と考えましょう(※)。
② 総平均法の場合の税金の一時的節税
取得価額の算出(評価)方法として総平均法を採用している場合、暗号資産(仮想通貨)の時価が高いときに購入することでその年の取得単価全体を上げることができます。そうすればその年の所得、ひいては税金を安くすることが可能です。
高値で暗号資産(仮想通貨)を買うことになるので、その後の更なる価値の上昇が見込めなければ投資として失敗する可能性がある点、注意が必要です。
また、翌年以降価値が上がりつづければ、売却の際の税金が余計に高くなるリスクもあります。
③ 確定した損失がある場合、他の雑所得との相殺処理
暗号資産(仮想通貨)で生じた損失はその年の他の雑所得と相殺することができます(本記事内で解説)。この損失は翌年以降には使えません。
損失が起きてしまった場合、含み益のある他の暗号資産(仮想通貨)を適度に利益確定させ、その利益との相殺によって損失を無駄なく節税に利用することが考えられます。
節税のために早期に利益確定することでかえって損をすることもあり得ますので、売買の判断には総合的な分析が必要です。
以上、暗号資産(仮想通貨)の利益にかかる税金の節税方法を見てきました。
①、②の方法に関しては恒常的な節税とは言えません。その年の税金を翌年以降に先延ばししているようなものであることは覚えておきましょう。
③はうまく行えばより実効的な節税となりえますが、節税目的で利益確定を決断すべきかどうか、投資家として慎重に行動することが求められます。
どのようなケースでどの方法を用いればいいのかの判断は難しいところです。節税といえば税理士。節税方法の選択に際しては税理士のアドバイスを受けるのがおすすめです。
暗号資産(仮想通貨)の節税・確定申告を相談する税理士の選び方
暗号資産(仮想通貨)にかかる税金を減らしたいという方のために、税理士を選ぶ際のポイントを3つのケースで解説します。
料金の目安についても一緒に見ていきます。
料金についてはあくまでも目安として紹介していますので、その点ご了承ください。
顧問税理士に相談する
事業をしているなど、既に顧問税理士がいる場合は、まず顧問税理士に相談しましょう。顧問税理士はあなたの収入や財務の状況を把握しており、ベストな回答が期待できます。
追加料金は発生しないか、あっても比較的少額(数千円~2万円程度)で済むでしょう。
暗号資産(仮想通貨)が得意な税理士を紹介してもらう
知人のつてなどで暗号資産(仮想通貨)の税務に詳しい税理士を紹介してもらえれば、頼もしい相談相手になります。
「どうすればいくら節税できるのか」といった具体的な試算をしてもらうには数千円~数万円の費用が必要で、その場合には申告作業までまとめて依頼した方がコストパフォーマンスの面で上回ることが多いと思われます。
無料電話相談サービス・メール
コネクションがなければ「〇〇市 暗号資産 税理士」などのキーワードでインターネット検索すればお住まいの地域で暗号資産(仮想通貨)を得意としている税理士が見つかります。
「仮想通貨」ではなく「暗号資産」で検索するのがコツで、最新の情報を仕入れてHPに反映させている税理士に絞り込むことができます。
たいていの税理士事務所は電話やメールでの問い合わせサービスを提供していますので、まずはそれらを利用して相談したいことを投げかけてみましょう。
電話・メールなどの問い合わせサービスの上手な使い方については、当サイトのこちらの記事がお役に立つと思います。
まとめ:暗号資産(仮想通貨)の節税は限定的だが可能 | 節税ばかり考えて本末転倒にならないことが大切
暗号資産(仮想通貨)にかかる税金の節税には税理士に相談することがとても有効です。注意して欲しいのは、節税を重んじるあまりに投資家として間違った行動を取ってしまう可能性があること。
税理士は、税金のことはもちろん何でも知っています。更に求められれば、投資行動の指針についてもアドバイスしてくれる税理士もいるでしょう。しかし、暗号資産(仮想通貨)の取引について最終的な責任を追うのは投資家本人(あなた自身)であることを忘れないでください。
本記事で得た知識や税理士のアドバイスなどを上手に取り入れて、健全・安全な暗号資産(仮想通貨)の運用にお役立て頂ければ幸いです。