COLUMN経営コラム

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【必読】2022年1月から!改正電子帳簿保存法への対応

2021.12.18

税務

DX化、IT、AI、ペーパーレスなど色んなものがありますが、こういったデジタル技術は基本的に、たいへん便利なものです。

インターネットや、スマートフォンなどの技術。エクセルやワードなどのソフトウェアのない生活に戻ることははちょっと考えられません。

しかし、部分的に不便を感じておられる方もおられるのではないでしょうか?例えば

  • 電話で済ませたいのにメールやチャットでの連絡を強いられるのが嫌だという方
  • ◯◯さんにに□□の分、納品したから、この前言っといた金額で計上しといて」と事務担当者に言えば住んでいたのが、「システムにログインして納品完了にチェックを入れて…」といったふうに事務作業が煩雑になったと思う営業担当者

など、いわゆる電子化によって不便性が増したと思われることも多いでしょう。

経営者や経理担当者、更には税理士にとっても実は似たような状況があり、「電子化は便利なところだけを享受して、あとは旧来通りやっていこう」という風潮が確かにありました。これはどんな業種・職掌でも同じだと思います。

したがって多くの事業者では、財務・会計資料の完全な電子化には至っていないことと思われます。

こういう「いいとこ取り」のデジタル化が、税務・会計の現場において今後、困難になる可能性があります。

2022年1月から適用となる「電子取引の帳簿に対する電子保存の義務化」はその尖兵といっていいでしょう。

本記事は2021年12月18日にアップロードしました。2022年1月1日から適用される電子帳簿保存法の改正に関する記事としては遅きに失するとお考えかも知れませんが、決して遅くはありません。

対応が遅れている方、既に対応済みの経営者の方にも、どうか最後までお読みいただき、今後の社会の電子化の流れにどう立ち向かっていくかのヒントにしていただければ幸いです。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

この中に「国税関係帳簿書類」とあることから、税金に関する法律であることがわかります。

要は、従来、紙に印刷して保管していた書類をデータとして保管することを、条件次第で認めるという法律です。

電子帳簿保存法の趣旨

電子帳簿保存法の第一条には、この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法・法人税法・その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。との記載があります。

これから分かる通り、電子帳簿保存法は当初より「情報化社会への対応」と「適正な納税」両者のバランスをとる目的で制定されました。

電子帳簿保存法の歴史

電子帳簿保存法が最初に制定されたのは以外に古く、1998年。この年の家庭用パソコン普及率は25%程でした。

一方、コンピュータによる会計事務は1970年代から80年代にかけて飛躍的に進化しました。
それに追い付くために、1998年の法制定に至ったということが言えます。

税務当局のデジタル化に対する初期の対応は、必要に迫られていたとは言え、官公庁の中では最も素早いものでした。

その後、電子帳簿保存法は時代の要請もあり、電子的に保存可能な書類の範囲を広げていきました。

反面、税法上電子保存を可能とするための要件は厳しくなり、手続きも煩雑となっていきます。

なぜなら、当時の技術では電子記録の改ざんを防止することが困難だったので、税務上の要請に応える帳簿記録としては不十分と考えられていたからです。

課税当局としては当時、当たり前の懸念でした。

結局、全体としては「厳しい要件を満たしてそれを届け出、当局に認定されてはじめて、会計上の電子記録が認られる」という、ある意味中途半端な、旧来的施策が実行されていたのです。

今回(2022年1月~)の改正|義務化の流れ

2022年1月からは、一部取引について電子記録による保存が義務付けられます。

これは「条件を満たせばデジタル保存も認めてあげましょう」という従来のスタンスからすると、かなりの急転換です。

将来の会計データが全面的にデジタル化されることに税務当局が対応し、データの保存方法などについて明確なルールを設けたものと言えるでしょう。

ルールが適切に整備されれば、それに沿ったソフトウェア・サービスを提供することができるので、会計システムなどを手掛ける業者は一斉にそちらへ舵を切ることになります。

規模・業種関係なし!対応が急がれるのはどんな場合?

今回の改正では、電子取引の書類について電子による帳簿保存が義務化。事業の規模や業種に関わらず、電子取引については、2022年1月以降法令に沿った電子的な保存が義務となります。

電子取引とは

義務化の対象となる電子取引には、クレジットカードなどインターネット上で決済データがやり取りされる取引や、請求書などをメールでやり取りする取引が該当します。

つまり、紙媒体でやり取りを行わず、ネット上で書類を交換する取引全般について、2022年1月以降、電子的な保存が必要となるのです。

電子帳簿の保存とは

法律が求める電子的な帳簿保存は、「メールのデータを削除しないで取っておく」というような簡単なことではありません。

会計データの改ざんや不正を防ぐための措置が講じられたシステムを用いて、適切に保管する必要があります。

そのためには、専用のソフト導入などが必要です。

つまり、電子取引を行うすべての事業者は必要なシステムを導入して電子取引で交わされる書類を電子的に保存する義務が生じるということになります。

電子取引をしているが、対応が間に合わないという方|まだ大丈夫です。ご安心を!

電子取引を行っているが、電子帳簿保存に未対応の方もおられるかも知れません。

ここまでを読んで「今からではとても2022年1月に間に合わない」と焦っている方に朗報です。

電子取引では2022年1月から電子帳簿保存が義務付けられます。その事情は変わらないのですが、2年間の実質的な猶予期間が設けられる見込みとなっているからです。

12月10日に発表された「令和4年度税制改正大綱」には「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な以降のための宥恕措置の整備」という項目があります。

長く難解な文章ですので引用はしませんが、要約すると、2023年12月31日までは従来どおり紙による保存を認めるという内容です。

なぜこのような猶予期間が設けられるのか。おそらくは電子帳簿保存の対応が間に合わない事業者が数多くあり、そうした事業者が義務的な電子帳簿保存を行わないでいいように電子取引をやめて紙によるやり取りに逆行する可能性があるからでしょう。

こうなってしまっては、そもそもの趣旨と反対の現象が起きることになるので、2年間の猶予を設けるものと思われます。

税制改正大綱は閣議決定されたいわば法律のたたき台であり、これを元に法案が練られ、国会での審議を経て法律となるものです。

したがって決定事項ではありませんが、こうした措置(猶予期間の設定)が講じられるのはほとんど確実と考えてよいでしょう。

まだ電子取引の電子帳簿保存に対応していない方は、顧問税理士に相談するなどして早急に対応するようにしましょう。

クラウド会計の導入で改正電子帳簿保存法に対応可能!

電子帳簿保存に対応する簡単な方法の一つに、クラウド会計システムの導入があります。

例えば、マネーフォワードクラウドは、以下5つのサービスにおいて既に改正電子帳簿保存法に対応しています(公式プレスリリース)。

  • マネーフォワード クラウド会計plus
  • マネーフォワード クラウドBox
  • マネーフォワード クラウド経費
  • マネーフォワード クラウド債務支払
  • マネーフォワード クラウド債権請求

こうした認証を受けたサービスを利用することによって自動的に電子帳簿保存に対応したことになるため、簡単かつ安全な方法と言えます。

また、クラウド会計サービスはその他の面でも非常に便利なものです。

電子帳簿保存法の改正をきっかけに、より効率的なクラウド会計システムに移行して、ただの法改正への対応でなく、業務改善につなげるという発想も大切です。

まとめ:まずは顧問税理士に相談を!

電子帳簿保存法の改正は、将来、より広い範囲の帳簿を電子的に保存するよう求めてくることになるでしょう。

こうした将来の予測も踏まえて、今回、どの程度まで電子帳簿保存に対応するのか、顧問税理士とよく話し合うようにしましょう。

一般的には、クラウド会計ソフトを導入するなどして包括的な対応を行っておいた方が良いと考えますが、会社の状況によって今回は部分的な対応にとどめておいたほうが良いなど判断は個々に行われるべきだからです。

そのとき最も頼りになるのはやはり顧問税理士です。

顧問税理士と電子帳簿保存法改正への対応を話し合うときに、本記事の知識をお役立ていただければ幸いです。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。