COLUMN経営コラム

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税理士補助・税理士事務所事務員の仕事|内容や、税理士志望者の働き方も解説!

2021.12.25

税務

前回の記事では、税理士の仕事内容や必要な資質について説明しました。

税理士事務所や税理士法人では、国家資格を持った税理士以外に、以下のような人々が活躍しています。

  • 税理士補助
  • (税理士事務所・税理士法人の)事務員

こういったのサポート役の存在なくして税理士事務所や税理士法人の運営は成り立ちません。

本記事では、このような仕事にスポットを当て、それぞれがどんな業務を担うのか、実情に沿って詳しく説明しています。

また、どのような人材が税理士補助や事務員として求められているのかについても詳説します。

  • 税理士事務所に就職したい
  • 税理士を目指しているが、どのような税理士事務所に就職するべきか迷っている
  • 税理士事務所の事務員として働きたいが、どんな資格等が必要なのかわからない

という方におすすめの内容となっていますので、どうぞ最後までお読み下さい。

税理士補助と事務員の違い|外勤か内勤か

税理士補助とか事務員という職掌の違いについて法律上の定めなどはなく、事務所や税理士法人によって呼び方やその待遇は様々です。

多くの税理士事務所や税理士法人では以下のような使い分けをしていると思われます。

1.税理士補助

クライアントの担当(数社~40社程度)を持ち、担当各社の会計・税務全般の監査を行う。また、申告書などの作成実務や社長などとの定期的な会見も担当する。
実質的に代表税理士の代理として振る舞うことが要求される。

よって、基本的に事務所の外に出て仕事をする機会が多い。

事務所の体制によっては、会計データの入力や事務所内の様々な雑務も担う。

2.事務員

一般的な(会計)事務員と違い、クライアントの会計データ入力業務を任される事がほとんど。

加えて、事務所運営に係る事務そのものも任せられる場合も多い。

税理士補助の他に事務員がいる場合は、事務員が事務所外で仕事をすることはまれである。

この分類はあくまで、「多くの税理士法人や税理士事務所で用いられていると思われる用語」です。

実際に就職する際には、「税理士補助」的な仕事をしたいのか、「事務員」の仕事をしたいのかを決めて、就職先の仕事内容について詳しく聞いてから決めるようにしましょう。

税理士補助・事務員に必要な資質|法・モラルを遵守する精神が何よりも大切!

税理士事務所・税理士法人での仕事では、他人や他社の金銭・人事などの動きを細かく知る事になります。

よって当然のことですが、

① 業務上で知り得た他人の秘密や情報を他に漏らさないモラル(口の堅さ)

が必要です。

また、社会人として当たり前のことですが、

② クライアントとのやり取りや仕事上の問題・進捗状況について上司に細大漏らさず報告する誠実さ

も必須です。

そして何より、

③ 税法をはじめとした法律を遵守するという精神

が重要となります。

その後ではじめて、次のような資質が問われることになるでしょう。

④ 仕事が丁寧・正確でかつ迅速である
⑤ 相手に応じて礼儀正しい対応ができる
⑥ 身なりや整理整頓がきちんとできる

これらを下位に置いたのは、上記①~③がこの業界でたいへん重要であることを強調したかったからです。④~⑥を軽視しているわけではありませんのでご注意下さい。

以上の税理士事務所での勤務に必要な資質を、もう一度まとめておきます。

① 業務上で知り得た他人の秘密や情報を他に漏らさないモラル(口の堅さ)

② クライアントとのやり取りや仕事上の問題・進捗状況について上司に細大漏らさず報告する誠実さ

③ 税法をはじめとした法律を遵守するという精神

④ 仕事が丁寧・正確でかつ迅速である

⑤ 相手に応じて礼儀正しい対応ができる

⑥ 身なりや整理整頓がきちんとできる

税理士補助・事務員に必要な資格・経験

税理士補助や税理士事務所の事務員というからには、会計や簿記に関係する資格が必要だと思われるかも知れません。

また、経理業務などに携わった経験が有利に働く場合ももちろんあります。

結論から言うと、資格・経験のどちらもない場合でも税理士事務所や税理士法人への就職は可能ですが、資格・経験の双方またはどちらかを持っていたほうが有利であることは言うまでもありません。

税理士法人や税理士事務所が求めている人材は以下のように分類できます。

① 即戦力型

会計事務所・税理士事務所での勤務経験があり、簿記・会計・税務などについてある程度の知識がある人材を求めている事務所は常にあります。

税理士の資格は合計5科目の試験に合格する必要がありますが、部分的に合格している(例えば2科目取得済など)の場合で、更に実地の勤務経験があれば即戦力と捉えられるでしょう。

試験に合格していなくても(受けていなくても)、他事務所での勤務年数や担当件数などが評価されて即戦力として採用されることもあります。

反面、他の事務所での勤務経験が新事務所の仕事のやり方への対応に障害となる恐れを抱いたり、税理士試験受験を志望する労働者を忌避する(残業や休日出勤をお願いしにくいため)場合も考えられます。

② 育成型

経験や知識がなくても、将来性を買って税理士事務所や税理士法人に採用される可能性はあります。

それでも、税理士事務所等への勤務を希望するからには商業簿記三級~二級程度(※)を取得しておいた方がよいでしょう。

(※)日商簿記など。
参考までに、日商簿記の過去5回(2021.6.13まで)の合格率平均は

  • 1級:1.0%
  • 2級:21.8%
  • 3級:47.6%

となっています(日本商工会議所公式HPより算出)。

6つの資質を満たしていれば、簿記三級程度の資格でも採用は夢ではありません。

むしろ、他事務所の色に染まっていない「まっさらな」人材を求めている事務所も多くあります。

③ 事務員型

最初から事務員に特化した人材は会計事務所・税理士事務所でも受け入れられやすいタイプです。

ただし、通常の会社の事務員より高いレベルの簿記・会計・税務知識が求められます。

先輩事務員がいれば、最初からそういった知識を持っている必要は必ずしもありませんが、いずれは獲得する必要があるので、そのための素養は求められるでしょう。

PCなどの操作には、ある程度まで習熟していることが必要です。弥生会計やマネーフォワードなどの代表的な会計システムの操作経験・資格があればなおよいです。

商業簿記の資格や経理業務の経験も採用に有利な武器となり得ます。

税理士資格取得に有利な働き方は?

これから税理士の資格取得を目指す人にとって、税理士事務所での勤務経験を積んでおくことは必ずプラスになります。

ですが、仕事が忙しくて勉強の暇がなく、毎年受験に失敗するというのでは本末転倒でしょう。

上記で、「①即戦力型」「②育成型」「③事務員型」の3つの働き方を紹介しました。税理士資格の受験にはどれが適しているでしょうか?

合格を最優先するなら、勉強に専念するのが一番

身も蓋もない言い方ですが、税理士試験に合格することを最優先するなら、「働かない」のが最適です。
24時間365日を受験勉強に費やすことができるため、最も合格に近いやり方となります。

ただし、この方法(働かない)にはリスクもあります。

「働かない」ことのリスク

万が一、何年挑戦しても合格できなかったとき、あなたに残るものは外見的には「無職で過ごした数年間」だけ。一生懸命勉強したので税法の知識はある程度備えていますが、それを証明するものがなく、社会人としては丸腰に近い状態です。

そこから他業種に転身して就職などをするには、困難が伴うことが考えられます。

家族などの同意・理解が必要

成人してからの数年間を勉強に費やすことには、家族などの同意・理解が欠かせません。

場合によっては経済的な援助も必要です。

理解を得たとしても、「我儘をきいてもらっているのだから絶対に合格しなければならない」というプレッシャーに絶えず圧迫されることになるでしょう。

これらのリスクを背負ってなお、勉強に専念できるならばそれが最もよいでしょう。

ただし、際限なく続けるのではなく、◯歳までとか、◯年までというように年限を区切って集中して勉強に専念することをおすすめします。

働きながらの税理士資格取得

全く働かずに税理士試験に合格できる人はそんなに多くないと思います(2018年の統計では、税理士合格者に対し、31歳以上が占める割合はおよそ78%)。

税理士試験は非常に難易度が高く(令和2年度の受験者数26,673人に対し5科目到達者数は648人(※))、働きながら合格を目指すのは並大抵の努力では済みません。

(※)国税庁公式HPより。税理士試験では、11科目の試験から複数の受験科目を選び、合計5科目以上に合格する必要があります。

時間的ゆとりは「事務員 > 税理士補助」

税理士補助は事務員にくらべて就業時間が長くなりがちで、基本的にフルタイム・週5日の労働となります。

確定申告時期など多忙なシーズンは残業することもあるでしょう。特に「即戦力型」は担当するクライアントの件数もある程度多くなるため、忙しい毎日となります。

「育成型」は即戦力型よりは忙しくならないはず。しかし依然として基本的にフルタイム・週5日勤務は避けられないのが通常です。

「事務員型」では、雇用時の条件次第で時短労働的な働き方も可能で、一日の勤務時間や出勤日数など、ある程度交渉できます。

自身の努力に加え、職場の理解が必須

勉強の時間を確保し、仕事と両立するために最も大切なのは本人の努力です。

寝る時間、休日など寸暇を惜しんで勉強に充てる覚悟がなければ働きながらの資格取得など不可能です。

それだけでなく、職場の理解も必要です。

税理士試験の取得を目指していることを就職する前にはっきりと事務所に伝えるようにしましょう。こうすることによって、勤務時間や残業の有無、出勤日数などの相談に応じてくれる可能性が高まります。

何より、税理士試験は平日に数日掛けて行われますので、最低でも試験の日は休みをもらわなければなりません。

まとめ:税理士志望者もそうでない人も、税理士事務所での仕事は魅力満載!

国民や国内で事業を営む会社などの納税義務を支える税理士事務所の仕事は社会的意義が大きく、責任重大ながら、多くの経営者や事業主などの納税者からの尊敬を集めるたいへんにやりがいのある仕事です。

次回は、税理士事務所の仕事、その魅力についてより具体的なイメージを持っていただける内容の記事を予定しています。

どうぞお楽しみに!

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。