COLUMN経営コラム

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見せ金で日本政策金融公庫の審査に通るか|自己資金と判断される方法

2023.05.09

融資

今あなたが事業を立ち上げるにあたって、創業融資を受けられるかどうかは死活問題です。親や友人から一時的にお金を借りてでも資金を増やし、融資審査に通りたいお気持ちはとてもよくわかります。

結論として、一時的に借りた資金である「見せ金」は日本政策金融公庫にバレますし、審査に落ちます。見せ金は絶対にやめましょう。

それでは今から、なぜ見せ金はいけないのかや、できるだけ自己資金として認めてもらう考え方をお伝えしていきます。

自己資金が少ない場合の審査通過方法もお伝えしますので、融資を受けて事業開始できるようお役立てください。

見せ金をすると審査に落ち、融資は受けられない

見せ金とは、自己資金(自分でコツコツ貯めたお金)を多く見せるために金融機関や知人から一時的に借入れたお金で、融資決定後に返済してしまうものを指します。

自己資金が少ないと創業融資を受けられないため、自己資金はできるだけ多く準備しておく必要があります。しかし実際は自己資金が足りないことが多々あり、金融機関に対して自己資金を多く見せたい気持ちから、見せ金が行われるのです。

見せ金と判断された時点で審査に落ちる

日本政策金融公庫から創業融資を受ける場合、「見せ金である」と判断された時点で審査に落ちます

実際、安直に見せ金をしてしまう方はいらっしゃいますが、軒並み審査に落ちています。日本政策金融公庫の担当者の話を聞いても、見せ金と判断した時点で審査に落とすとのことです。

見せ金で審査に落とされる理由

見せ金は、以下の理由で審査担当者の心証を悪くします。

見せ金が意味すること与える悪印象
日本政策金融公庫を欺いて融資を受けようとしている信用できない人間である
起業に向けて自己資金を準備できていない起業への心構えが足りず事業が上手くいかない
コツコツと資金を貯められない計画性がなく融資しても返済されない
創業計画書よりも実際の自己資金額が小さくなる創業計画通りに事業が運ばない

見せ金は担当者を欺こうとする行為であり、日本政策金融公庫からの信用を失ってしまうため、今後の融資にも悪影響を及ぼします。見せ金は絶対にやめましょう(自己資金をいくら用意すればよいのかは「創業融資の自己資金割合」で詳しく解説しました)。

見せ金と判断されやすい資金は?

審査では必ず、預金口座の通帳原本を最低半年〜1年は確認されることになります。自分でコツコツ貯めてきたお金は自己資金として評価が高い一方、出どころ不明のお金があれば見せ金を疑われるでしょう。

ここでは見せ金と判断されやすい資金をご紹介していきます(対策は次の大見出しで解説します)。

【1】現金

預金口座に入れていない現金、いわゆるタンス預金は、見せ金と判断される可能性があります。理由は、資金の出どころが全く不明であるためです。

【2】突然の高額な入金

預金口座に突然高額な入金がある場合は、見せ金と判断される可能性があります。理由は、突然の高額な入金は不自然に見えるからです。

以下のような入金は特に怪しく、見せ金を疑われますのでご注意ください。

  • 貯金がない口座への高額入金
  • しばらく入金がない口座への高額入金
  • 融資審査直前での高額入金

【3】不自然な第三者からの入金

よくわからない団体や個人名義での入金についても、見せ金と判断される可能性があります。

見せ金かどうか判断しづらい資金

ある程度の自己資金を貯めていた口座に、タンス預金など突然高額な資金を自分で入金した場合、自己資金か見せ金か判断しづらくなります。

理由といたしまして、元々コツコツ資金を貯めてきた信用があり、入金も第三者ではなく自分自身である一方で、突然の高額入金は不自然でもあるからです。

このような場合、普段の収入状況や生活状況などから総合判断されることになります。

自己資金であると証明する方法

見せ金ではなく自己資金であると判断してもらうために、以下のような対策をお勧めいたします。

  • 入金については、事前に資金の出どころを証明できる書類を準備しておく
  • 現金は早いうちから、少しずつ預金口座に移していく

資金の出どころの証明は重要です。融資審査で通帳を確認された際、「振込元は誰で、どのような関係性の人か」「入金されたのはどのような性質のお金か」を聞かれるからです。

例えばですが、「親から援助してもらいました」と回答すれば、「確かに親からの援助であり、返還不要である」ことを証明する必要があります。

以下、資金の種類別の証明方法をご確認ください。

資金の種類証明
親族からの贈与、資金援助
※ただし返還可能性のないもの
贈与契約書など、返済不要を証明する書類
※本人の口座から直接振り込んでもらうようにしてください。
※贈与してくれた親族の預金通帳も審査対象です。
知人からの贈与、資金援助
※ただし返還可能性のないもの
贈与契約書など、返済不要を証明する書類
※ただし、知人が役員や株主でなければ返還可能性ありとされがちです。
配偶者名義の通帳の預金配偶者の預金通帳で資金の出どころを証明
退職金退職金の源泉徴収票
売却資金【株式・有価証券】証券会社HPなど、株式等を保有している証明
【不動産・車】売買契約書、譲渡証明書
現物出資
(自分のパソコンや車、土地など)
事業用資産として使用されていることを証明
みなし自己資金
(創業にあたって既に支払った資金)
事業のために使用したことを証明
※領収書だけでは証明になりません。
株主による出資【株主が家族】資金援助に近く自己資金と認められやすい
【株主が他人】株主としての実態があることを証明
売上請求書・見積書・契約書など

自己資金と資本金の違いを理解しておきたい場合は「自己資金と資本金の違い」も参考になさってください。

自己資金が少なくても創業融資を受ける方法

最後に、自己資金が少ないながらも審査通過し融資を受けられるよう、解説してまいります。

方法1:創業計画をしっかり作る

最低ラインである創業資金の1割の自己資金は必須ですが、創業計画書をしっかり作成すれば融資を受けられる可能性が上がります

なぜなら、審査通過の要素として自己資金は重要であるものの全てではなく、創業計画がしっかりしているかが非常に重要であるためです。

自力での創業計画の作成に懸念がある場合は、いくらか費用をかけてでも資金調達を成功させ、事業開始にこぎつけることをお勧めいたします。末松会計グループが強力にバックアップいたしますので、お気軽にご相談ください(お問い合わせはこちら)。

方法2:日本政策金融公庫が定める要件を満たす

創業融資でよく併用される「新創業融資制度」を利用する場合、自己資金がなくても、日本政策金融公庫が定める要件に該当していれば自己資金要件を満たしたことになります。

要件は全部で7つあり、中でも以下の2つが現実的に使いやすい要件ですのでよくご確認ください。

  • 5年以上勤めていた企業と同業種の事業を始める
  • 民間金融機関と日本政策金融公庫の連携で融資を受ける(協調融資)

詳細や残り5つの要件については、日本政策金融公庫が定める要件をご確認ください。

方法3:創業計画の縮小

店舗や設備の変更など、創業計画を縮小することで、必要な自己資金額を小さくするのも一つの方法です。

この記事のまとめ

融資を受けられるかどうかは死活問題ですから、見せ金を考えてしまうのも人情ではあります。
しかし、見せ金は日本政策金融公庫からの信用を失い、事業に悪影響を及ぼす悪手です。ぜひご紹介してまいりましたその他の手段で、資金調達を成功させていただけますと幸いです。

融資の審査通過にご不安がある場合は、創業50年以上の実績と信頼の末松会計グループが強力にバックアップいたします。お気軽にご相談ください(お問わせはこちら)。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。