COLUMN経営コラム

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とある税理士事務所の一日【後編】|税理士事務所のリアルな仕事内容を紹介!

2022.01.05

税務

前回から、架空の税理士事務所「Z税理士事務所」の一日を代表的な人物にスポットを当てて詳説しています。

本記事はその第二弾。架空の税理士事務所「Z税理士事務所」で働く税理士補助S藤さん(2年目)とベテラン事務員O田さんの一日を追います。

Z税理士事務所について

前記事と同じく、架空の事務所「Z税理士事務所」を例にとります。

前回と同じ紹介になりますが、「Z税理士事務所」は所長税理士が1名、税理士補助5名、事務員3名を抱える中堅事務所。クライアントは大小160件で、売上はもう少しで1億円に届こうかというところ。今後は税理士法人の設立などさらなる飛躍を狙う個人事務所です。

登場人物

本記事で登場するZ事務所のメンバーは4人です。前記事と同様のプロフィールを再掲します。

Z津先生(所長)そろそろアラフィフ、開業10年目の税理士です。苦労しながら少しずつ事務所を育ててきました。仕事一筋の情熱家。
M池氏(税理士補助)勤続8年目のベテラン補助。前年税理士試験に合格しました。堅実な仕事と経験値でクライアントの評判も上々。所長の右腕的存在です。
S藤さん(税理士補助)2年目のフレッシュな税理士補助です。担当も数件持たせてもらえるようになり、仕事が面白くなってきた頃。税理士試験の勉強もはじめました。
O田さん(事務員)開業間もない頃からのベテラン事務員。事務所の経理も担当しており、所長からは全幅の信頼を得ているだけでなく、所員全員から頼りにされています。

このうち、Z津先生とM池氏の一日については前の記事で詳しく説明しました。

今回は、2年目の税理士補助S藤さんとベテラン事務員O田さんの一日を紹介したいと思います。

[ Z税理士補助:本日のスケジュール表 ]
Z津先生M池氏S藤さんO田さん
所長ベテラン税理士補助税理士補助ベテラン事務員
08:00~09:00出社
09:00~10:00朝礼・業務開始
10:00~11:00顧問先A社顧問先B社顧問先B社事務所
11:00~12:00
12:00~13:00昼食・移動昼食
13:00~14:00昼食・移動顧問先D社顧問先E社事務所
14:00~15:00顧問先E社
15:00~16:00顧問先F社事務所
16:00~17:00
17:00~18:00事務所事務所
18:00~19:00事務所事務所
19:00~20:00会食事務所
20:00~21:00

上の表で、この色の項目はこのページ内の該当部分にジャンプします。こちらの色のリンクは、新しいタブを開き、前の記事の該当部分にジャンプします。

S藤さん(税理士補助)

2年目のS藤さんとしては、今日はかなり忙しい日です。

「自分にとっては新規のB社引継」「E社訪問」に加えて、「G社の決算・申告書作成」も行わなければなりません。

顧問先B社訪問 (10:00~12:00)

大先輩であるM池先輩から引き継ぐB社への訪問です。

会計・税務の内容等については既にレクチャーを受けていますが、B社社長と対面するのは初めて。

かなり緊張しましたが、M池先輩がうまくリードしてくれたので、社長に受け入れてもらうことができました。

B社の経理責任者などとも親しく話すことができ、今後の監査がやりやすい状況になったと実感します。

顧問先E社訪問 (13:00~15:00)

お昼を挟んで、昨年から担当しているE社を訪問。

こちらは社長とも気心が通じていて、会計もクラウド導入が進んでおり、移動も含めて短時間の訪問時間で済みます。

しかし今回は、社長個人の投資に関わる税制についての質問があり、即答することができませんでした。

このとき、所長も同席していたのですが、やはり即答しません。所長Z津先生は、この問題について確実な解答を持っていないのか?それとも急を要しないためにS藤さんに任せようとしているのか。S藤さんには分かりませんでした。

おそらくは、S藤さんの成長を考え、Z先生は即答を控えたのでしょう。S藤さんが解決できそうな問題で、かつクライアントにとって急を要しない質問だったからです。

内容を詳細に確認し、近日中の回答を約束します。宿題が一つ増えましたが、これも勉強。今日明日中に調べるために、内容を含めてメモを取っておきます。

事務所 (15:00~17:00)

今月、S藤さんが担当するG社は申告月です。月末までに申告書を税務署に提出しなければなりません。

S藤さんのレベルでは、最初から完璧な申告書を作ることができません。また、税理士ではないため、申告書の最終確認を多忙な所長にお願いすることになります。

そのため、まずは自身で完璧だと思う申告書・決算書を作成し、上司であるM池先輩のチェックに廻します。

事務所 (17:00~21:00)

M池先輩の添削を受けては修正して再提出」のループを繰り返してようやくG社の申告が(一応)完成しました!

この間、M池先輩から受けた指摘には大きな税額変更などのG社にとって多大な影響を及ぼすものはなかったのですが、やはり少しの訂正があったため、明日には、電話で変更点をあらためて説明する必要があります。前後して、所長の最終確認も受けます。

この日の業務レポートを作成して、帰宅の途につきます。決算・申告書作成のためいつもより帰宅が遅くなりましたが、自らノルマと課している2時間の税理士試験勉強はしっかり遂行してから、深い眠りに落ちました。

O田さん(ベテラン事務員)

事務所内でも、クラウド化など先進的な業務効率化が進んでいますが、O田さんの存在価値は以前と変わりません。

何よりもO田さんの向上心(新しいシステムなどへの貪欲な対応姿勢)が重要なのですが、それに加えて事務所の備品や設備、所員の健康状態・人間関係をしっかりと把握しており、しかもそれらを「Z税理士事務所」の経営問題として捉えてくれるところが所長に重用される所以です。

事務所 (10:00~12:00)

10時から出社してくる他の事務員に朝礼の内容を伝え、彼らの業務を統括するのはO田さんの仕事です。

一とおり業務の割り振りを終えると、所長から「急遽F社に行くことになったから、申告書の控えを用意して下さい」と言われました。

さすがベテラン。こういうこともあろうかと、今月申告のクライアント分の決算書については製本直前まですべて準備完了しています。

表紙など決算によって変更がない書類の用意が既にできているので、あっという間に申告書控えを含めた決算書類一式の製本を終わらせました。

印刷待ちの時間も無駄にせず、書類整理やクライアントの会計データ入力を進めます。

事務所 (13:00~17:00)

午後は午前中の急な業務に押し出された分も含めて、クライアントの入力業務を急ぎます。

その間にも、電話の対応や事務機器のトラブル対処・事務所職員の経費精算など、所長や税理士補助に勝るとも劣らない多忙な時間が続きます。

18:00からお客様が来所される予定があるので、帰る前に、若い税理士補助のS藤さんに、お客様対応(お茶出しなど)について指示しておくのも忘れません。

17時きっかりには退社。家でも家庭の仕事が待っていますので残業はできません。

まとめ:税理士事務所は人間を成長させる職場!

前記事と合わせて、税理士事務所のリアルな1日を描写してみました。

税理士事務所の仕事について、具体的なイメージを持っていただけたことと思います。

念の為、付言しておきますが、税理士事務所職員が毎日残業を強いられているという訳ではありません。

今回紹介したのは、「比較的忙しい事務所」の「比較的忙しい一日」です。

また、毎日が勉強と成長の日々でもあります。所長であってもそれは同じ。同僚やクライアント、その他の人々から刺激を受けながら成長していくのが税理士であり、税理士事務所の職員です。

税理士事務所以上に、多種多様な人間や人間関係と密接に関わる職業は少ないでしょう。

一人の人間として成長するため。それだけのためにでも、税理士事務所で働く価値があります。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人末松会計事務所代表社員。税理士。 (株)FLAGSコンサルティング 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している