税務調査の対応方法
2021年12月7日 9:07 pm

税務調査の対応方法|コロナの影響による調査の傾向など詳しく分析!

12月5日、国内の新型コロナウイルス新規感染者数は104人でした。

もちろん収束というには程遠い状況ですが、ワクチン接種がすすんだこともあり、数字上はかなり落ち着いてきた感じです。

コロナが落ち着いたらあれもやりたい、これもやりたいと思っていた人も多いでしょう。

それは税務署も同じです。税務調査官はコロナによって活躍の機会を減らしていました。

だからこそ、今この時期に税務調査に直面している事業者の方も多いのではないでしょうか?
また、確定申告時期が過ぎた来年4月あたりから、税務調査が急増することも考えられます。

そこで今回は、税務調査の傾向と対策について説明したいと思います。

来春(2022年4~6月)、税務調査が増える?

税務署(国税庁)の年間スケジュールは、7月~6月を区切りとしています(これを事務年度と言います)。人事異動は7月10日に行われ、この時期から調査対象の選定に入ります。

実際の調査は8月中旬から本格化し、12月中旬までは税務調査が比較的多い時期。1~3月は確定申告のシーズンなので少し沈静化して、4~6月がいわゆる追い込みでもっとも調査が盛んになります。

ところが2019年以来、4~6月は毎年、新規感染者数を抑えるための緊急事態宣言の発令などが行われ、税務調査どころではありませんでした。

実際、例えば名古屋国税局のプレスリリースによると2018年事務年度の法人税調査件数は13,455件。2019年では9,761件と27.5%も減少しています。

個人の所得税についても状況はおおむね同じ。同統計では2018事務年度の調査件数98,537件に対して、2019年は76,664件であり、22.2%の減少となっています。

その分、もしも来春にコロナウイルスが猛威を振るうということがなければ(心からそうなることを願います)、税務調査は一気に多くなるかもしれません。

税務調査の流れ

税務調査はどのような手順で行われるのでしょうか?

正しい手続きを知っていれば、戸惑うこともありません。

  • ① 事前通知

    顧問税理士に税務代行を依頼していればその税理士に、そうでなければ直接本人(会社)に「税務調査に入りたい」旨の通知が来ます。通常は電話での通知になります。

    このときに、調査対象の事業年度や事前に準備しておいてもらいたい資料の説明もしてくれるので、しっかりメモを取るようにしましょう。

  • ② 日程調整

    税理士が調査立ち会いをしている場合でも、少なくとも調査初日と最終日には経営者自身の同席が必要です。

    できる限り調査官の日程に合わせましょう。どうせ調査は来るので、ここで心象を悪くしても仕方がありません。

  • ③ 税理士との事前打ち合わせ

    顧問税理士との事前の打ち合わせは必須です。

    「先生に任せているから安心」

    確かにそうなのです。しかし大抵の場合、何かしらツッコミどころがありそうだと思っているから調査が入るのだと考えましょう。

    税務上のリスクが予想される処理を行う際には、顧問税理士から説明を受けているはずですが、経営者は多忙で、こういった情報を忘れがちです。

  • ④ 調査官が来る・面談

    税務署の調査官が来訪します。

    お茶くらいは出してもいいでしょうが、それ以上はNG。税務調査官に過剰な接待をすることは逆効果です。

    面談では色々なことを聞かれます。世間話のようでいても、調査官の質問には何らかの狙いがあると考え、あまり無邪気に答えないようにしましょう。

    税理士がそこにいれば、話を上手に持っていってくれます。なぜなら税理士は、何がセンシティブな(微妙な)問題かを充分に理解しているからです。

  • ⑤ 実際の調査(実地調査)

    実地調査の期間は、事業規模などによりますがだいたい1~数日です。

    調査官は通常10時にやってきて、12~13時までの昼食休憩を挟み、17時には帰ります。

    税理士に調査立ち会いを依頼していれば、この間経営者がずっとその場にいなければいけない訳ではありません。

    資料の提出を求められる場合があるので、誰か(経理担当者など)は常駐するようにしましょう。契約書や請求書などの各種書類を普段から整理しておき、求められればすぐに提示できるようにしておきます。

    調査官が帰ったあと、税理士と打ち合わせを行います。その日に指摘を受けた問題点や翌日以降の対処についてしっかりと情報を共有するようにしましょう。

  • ⑥ 実地調査完了・調査官からの指導・説明

    実地調査の最終日、普通は15時~17時くらいの間に調査官から指導や説明・修正の指摘があります。このときは経営者が同席するようにしましょう。

    調査官の指摘に対して反論などがあれば、普通は税理士が行います。

    実地調査が終わっても税務調査が全て完了したわけではなく、更に書類の提出を求められたりすることもあるので、なるべく迅速に対応しましょう。

    調査の最終結果がでるのは数週間後~1ヶ月後となります。

    その結果、必要があれば修正申告・納税を行います。

どんな会社・事業者に税務調査が入るのか

事業規模が小さいから、あまり利益が出ていないからうちには税務調査が来ないと決めつけるのは危険です。

どんな会社でも税務調査が入る可能性はあります。それでも、ある程度、傾向のようなものはあります。

特にコロナウイルスで調査件数が減少している現状では、申告において過誤が生じやすく調査によって追加の税金が出やすい事業者・会社が狙われやすいと言っていいでしょう。

2018年 2019年 前年比
①調査件数 13,455件 9,761件 △27.5%
②申告漏れ所得金額 854億円 716億円 △16.2%
1件あたりの申告漏れ(② ÷ ①) 635万円 734万円 +15.6%

上の表は名古屋国税局の法人税調査実績から作成したものです。調査件数は大幅な減少(27.5%)ですが、申告漏れ所得金額は16.2%の減少にとどまっています。いうなれば「打率」が上がっているのです(15.6%)。

これは税務調査がより効率的に行われていることを示しています。一件ごとの調査を綿密に行っていることはもちろん、調査対象も入念に絞り込まれていると見ていいでしょう。

では、どんな事業者・会社が狙われやすいのでしょうか?

これから、中小企業や個人事業主で税務調査の対象となりやすいと思われる特徴を見ていきます。

税理士に申告を依頼していない事業者・会社は狙われやすい

法人税や所得税・消費税の申告で過誤を見つけやすいのは、税理士に依頼せず自身で申告している事業者です。

特に、売上に対して利益が少ないと、何か間違いがあるのではないかと疑いを持たれがちです。

  • 粗利益率・営業利益率が業種平均に比べて大幅に低い
  • 人件費が高い
  • 他の経費でも何か突出して大きな金額となっているものがある(支払手数料・交際費など)

といった場合は、調査のターゲットとなる可能性が高まります。

税理士に申告を依頼していれば、こうしたリスクに関して事前に説明がありますし、決算書上・申告書上の表現でも工夫してリスク軽減を図れます。

名古屋国税局におけるターゲットになりやすい業種

税務調査のターゲット選定には地域性や職種も関わってきます。ここでは名古屋国税局の統計資料から、調査の可能性が高いと思われる業種について見ていきます。

不正発見の割合が高い業種・不正による脱漏所得が多い業種

ここでいう「不正」とは仮装・隠ぺいによって税金を逃れていると判断されたもの。重加算税が課されるような比較的悪質な計算・申告を指します。

不正による脱漏所得とは、不正な計算によって税金計算上の所得(≒利益)から漏れていた金額です(税金の額ではありません)。

不正を発見することは税務調査の目的の一つであり、また追加の徴税額も大きくなりますので、効率的に税務調査を行うには、過去に不正発見が多かった業種をターゲットとすることが考えられます。

名古屋国税局の2019事務年度の統計において、不正発見割合が高かった業種は以下のとおり。

順位 業種 不正発見割合 平均不正脱漏所得金額
1 その他の飲食 40.6% 727万円
2 自動車・自転車小売 38.7% 1,001万円
3 廃棄物処理 32.8% 1,145万円
4 その他の設備工事 31.6% 1,254万円
5 貨物自動車運送 30.7% 1,049万円
6 土木工事 29.6% 1,867万円
7 電気・通信工事 29.3% 1,201万円
8 職別土木建築工事 29.2% 1,129万円
9 一般土木建築工事 26.4% 1,362万円
10 その他の対事業所サービス 26.0% 1,165万円

同統計で、平均不正脱漏所得金額が大きかった業種は以下になります。

順位 業種 不正発見割合 平均不正脱漏所得金額
1 その他の卸売 20.9% 3,846万円
2 建売、土地売買 22.4% 3,022万円
3 自動車・同付属品製造 20.2% 2,605万円
4 その他の金属製品 19.8% 2,239万円
5 その他の不動産 16.7% 2,191万円
6 土木工事 29.6% 1,867万円
7 一般機械器具 22.1% 1,816万円
8 その他のサービス 23.7% 1,534万円
9 その他の対個人サービス 22.9% 1,510万円
10 その他の機械製造 20.0% 1,407万円

これらの業種は要注意と言ってしまえばそれまでですが、別の視点からも分析してみましょう。

「期待値」による計算

「その他の飲食」業では不正発見割合が40.6%と、非常に高い値となっています。千件の調査を行えば、406件の不正を発見できるというわけです。

しかし、不正一件あたりの脱漏所得金額が727万円と比較的少額です。

一回の税務調査を考えると、40.6%の確率で727万円の不正な所得申告漏れを見つけることができるので、「その他の飲食」業に対する税務調査では727万円 × 40.6% = 295万円の不正脱漏所得発見が期待できます。

これを一般的に「期待値」と呼びます。効率的な税務調査のためには、1回の調査でいくら分の不正を発見できるかという視点も重要になります。

それでは、上表の値から期待値を計算してトップ10を並べてみましょう。

順位 業種 期待値 不正発見割合 平均不正脱漏所得金額
1 その他の卸売 803万円 20.9% 3,846万円
2 建売、土地売買 676万円 22.4% 3,022万円
3 土木工事 552万円 29.6% 1,867万円
4 自動車・同付属品製造 526万円 20.2% 2,605万円
5 その他の金属製品 443万円 19.8% 2,239万円
6 一般機械器具 401万円 22.1% 1,816万円
7 その他の設備工事 396万円 31.6% 1,254万円
8 自動車・自転車小売 387万円 38.7% 1,001万円
9 廃棄物処理 375万円 32.8% 1,145万円
10 その他の不動産 365万円 16.7% 2,191万円

いかがでしょうか?必ずしもこの順で税務調査対象が選定されるわけではありませんが、少なくとも2019事務年度の実績では、ここにあげた10業種に対する調査が効率的であったということができます。

まとめ:税務調査には税理士との連携して対処しよう

税務調査は経営者と税理士にとってある意味分かりやすい「共通の課題」です。これに協力して取り組むことによって、税理士と経営者がお互いをより理解し、信頼を深めることにつながります。

無論、脱税行為などはもってのほか。絶対に行ってはいけません。

それでも税務調査では会社の経理体制などに何かしらの問題提起がなされる場合があり、それをクリアすることで会社や事業が改善されることも少なくありません。

税務調査はやっかいな出来事ではありますが、普段から税理士の指導をきちんと受けていれば、特別に心配することでもありません。

コロナが落ち着きつつある今こそ、自己申告で済ませている方は税理士と顧問契約する機会です。

末松会計事務所は、税務調査に強い税理士事務所です。顧問契約については、以下のお問い合わせフォームまたはお電話にてお尋ね下さい。

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