COLUMN経営コラム

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とある税理士事務所の一日【前半】|税理士事務所のリアルな仕事内容を紹介!

2021.12.31

税務

前回までの2記事で、税理士や税理士事務所で働く職員の仕事について紹介してきました。

本記事では架空の税理士事務所「Z税理士事務所」の一日を追い、所長や税理士事務所、事務員さんの具体的な仕事についてリアルに描写していきます。

税理士事務所の仕事内容、一日についてより具体的なイメージを持っていただけると思います。

税理士事務所での仕事に興味のある方はもちろん、税理士事務所と顧問契約を結んでいる経営者の方も、普段税理士や担当者がどのような働き方をしているのかを知ることによって、税理士事務所をより身近に感じることができるようになるでしょう。

Z税理士事務所について

今回ご紹介するのは架空の事務所「Z税理士事務所」です。

所長税理士が1名、税理士補助5名、事務員3名を抱える中堅事務所。クライアントは大小160件で、売上はもう少しで1億円に届こうかというところ。今後は税理士法人の設立などさらなる飛躍を狙う個人事務所です。

登場人物

本記事で登場するZ事務所のメンバーは4人です。それぞれのプロフィールを見ておきましょう。

Z津先生(所長)そろそろアラフィフ、開業10年目の税理士です。苦労しながら少しずつ事務所を育ててきました。仕事一筋の情熱家。
M池氏(税理士補助)勤続8年目のベテラン補助。前年税理士試験に合格しました。堅実な仕事と経験値でクライアントの評判も上々。所長の右腕的存在です。
S藤さん(税理士補助)2年目のフレッシュな税理士補助です。担当も数件持たせてもらえるようになり、仕事が面白くなってきた頃。税理士試験の勉強もはじめました。
O田さん(事務員)開業間もない頃からのベテラン事務員。事務所の経理も担当しており、所長からは全幅の信頼を得ているだけでなく、所員全員から頼りにされています。

Z税理士事務所の1日

某月20日。税理士事務所は毎月中旬から下旬にかけて、その月に提出する申告書の作成に追われます。Z税理士事務所は160件のクライアントを抱えていますので、平均すると毎月13~14件の申告がある計算となります。

税理士事務所の仕事はシーズンによっても違いますし、日々全く異なるスケジュールで動くことになります。

この日は比較的忙しい一日となりました。

[ Z税理士補助:本日のスケジュール表 ]
Z津先生M池氏S藤さんO田さん
所長ベテラン税理士補助税理士補助ベテラン事務員
08:00~09:00出社
09:00~10:00朝礼・業務開始
10:00~11:00顧問先A社顧問先B社顧問先B社事務所
11:00~12:00
12:00~13:00昼食・移動昼食
13:00~14:00昼食・移動顧問先D社顧問先E社事務所
14:00~15:00顧問先E社
15:00~16:00顧問先F社事務所
16:00~17:00
17:00~18:00事務所事務所
18:00~19:00事務所事務所
19:00~20:00会食事務所
20:00~21:00
上の表で、この色の項目はこのページ内の該当部分にジャンプします。こちらの色のリンクは、新しいタブを開き、次の記事の該当部分にジャンプします。

全体

朝はできる限り全員が出社します。やむを得ない場合はクライアントのところに直行することもあります。

また、記事には登場しませんが、事務員2名は時短勤務であるため10時からの出社となります。

出社 (08:00~09:00)

9時までに出社します。所長のZ先生やベテラン補助のM池氏は前日直帰だったため、8時ごろに出てきてデスク上に溜まった報告書類などを片付けます。

補助S藤さん、ベテラン事務員のO田さんもそれぞれ8時30分ごろまでには出社してきました。

今朝は週に2回の事務所の清掃日なので、8時45分から全員で拭き掃除などを行います。

朝礼・業務開始 (09:00~10:00)

Z税理士事務所では毎朝9時ちょうどから朝礼を行います。各自、前日の業務内容や当日の予定など伝達事項を口頭で確認していきます。

朝礼は15分~30分ほどで終わり、各自業務に取り掛かります。10時からのアポイントがあるZ先生やM池氏、S藤さんはいそいそとでかけていきました。

O田さんは、10時前にやってくる他の事務員2名に朝礼の内容を短く伝えて、それぞれに今日の業務を割り振ります。

Z津先生(所長)

所長といっても、中堅事務所では、先頭に立って働く主戦力の一人です。誰よりも忙しく立ち回ります。直接の担当先は10件程ですが、毎日何人もの経営者や弁護士・司法書士など他の士業の先生などと会う予定があります。

顧問先A社訪問 (10:00~13:00)

クライアントのA社社長から設備投資について受けていた相談について話すために、担当者(登場人物以外の税理士補助)とともに訪問しました。

A社の規模からするとかなり大きな金額の投資です。事前に担当者から報告を受けた時点で、リスクが高すぎると直感しましたが、社長の熱意も相当のものです。ここは直接所長から説明すべきということで、今回の訪問となったわけです。

前日までに作成した資料を提示して、設備投資の効果から投資金額を回収するには設備メーカーの作成した計画書よりもはるかに期間がかかることを説明します。丁寧に説明すると、社長も理解し、計画は一旦設備メーカーに差し戻しとなりました。

顧問先E社訪問 (14:00~15:00)

S藤さんが訪問しているE社を訪ね、S藤さんと社長の面談に合流します。

特段の用があるわけではありませんが、若く経験の浅い担当者に任せているクライアントのところには、なるべく顔を出して経営者に安心してもらうというのがZ先生のスタイルです。

顧問先F社訪問 (15:00~18:00)

所長自らが開業当初から担当しているF社は今月末が申告締切日となります。

決算・税務申告は既に完了しており、今日はその報告と決算書・申告書控えなどの書類を社長に届けるために訪問しました。

社長と1時間程面談したあと、通常の月次処理を行います。F社では、Z税理士事務所のすすめもあって今季から「マネーフォワードクラウド会計」を導入しています。入念な準備のもと、導入に踏み切ったのですが、今月(導入後2ヶ月)までは現場でのフォローが必要です。以後は毎月の訪問時間を1時間ほど(社長との面談時間のみ)に短縮できるでしょう。

事務所:新規相続案件で来所のお客様に対応 (18:00~19:00)

事務所に戻り、ホームページの相談フォームを通じて相続税相談にみえたお客様に対応します。

相談といっても、今回は相続発生(相続人死亡)後のご相談ですので節税対策などはあまりありません。

定年前のご主人が先月お亡くなりになったばかりということで、お力落としの奥様が依頼者。ご自身でも服飾店を経営しておられるのでこの時間のご来所となりました。

ご闘病のお話などを伺っているうちに時間は過ぎ、今回は、お持ちいただいた資料のコピーだけを頂き、預金の扱いなど最低限のアドバイスをして面談終了とさせていただきました。

次回のご来所は1ヶ月後にお願いすることにしました。相続税の申告期限は相続発生後10ヶ月ですので、まだ充分のゆとりがあります。

会食 (19:00~?)

クライアントに誘われていた食事会にでかけます。

少人数の会ではありますが、初めて会う経営者も参加しており、営業上も重要な会食です。

楽しい一夜になりそうですが、ただ楽しむだけでは済まされないのが所長の性。ごくさりげなく、自身の事務所の有用性をアピールします。

M池氏(ベテラン税理士補助)

ベテランの税理士補助の一日は、時に所長並みに忙しいものになります。後輩や事務所全体に気配りする必要もあります。

顧問先B社訪問 (10:00~12:00)

S藤さんを伴ってB社を訪問。今回は自身の担当先であるB社をS藤さんに引き継ぐ目的です。

M池氏の担当先は40社を超えており、後進育成のためにも担当を後輩に割り振っていかなければなりません。B社は売上規模が大きく仕訳数も多いのですが、社長の納税意識が高い・人柄も優しいなど、中級者向けの会社です。クラウド会計を導入しているので、入力などの作業負担も少なめ。所長と相談の上、S藤さんに引き継ぐことにしました。

既にB社社長の了解を得て、引継書やマニュアルを通じてS藤さんに説明が済んでいます。今日はS藤さんの顔合わせプラス現場紹介といったところ。

社長も、S藤さんの実直な人柄に信頼を置いてくれたようで、ホッとしました。

顧問先D社訪問 (13:00~17:00)

D社の申告期限は来月ですが、上場企業の子会社であるため、今月末には税金を確定させなければなりません。

既に先日、公認会計士の監査が入っており、税金以外の会計データはほとんど確定している状態です。

こういった会社の税務申告では、会計上の利益や費用と税務上の益金・損金に相違が生じる場合が多々あるため、その点に注意しながら現場で税金計算・申告書作成をします。

現場に来ている公認会計士事務所の担当者と打ち合わせながら、決算確定直前まで漕ぎつけます。

最終的には、Z事務所内での再チェックや所長の認証、公認会計士事務所での確認、D社での株主総会を経てはじめて決算が確定するのですが、M池氏にとっては「間違っていました」は許されない計算です。

毎月の監査でチェックポイントを把握しているなど、周到に準備しているので、スムーズな税金計算ができました。

事務所:事務作業 (17:00~18:00)

先程のD社の決算・申告の内容などについて急ぎ報告書をまとめます。

申告書や決算書、添付書類も揃えて所長のチェックを受ける準備をしましたが、来客の時間がきたため、提出は明日以降、自分で再度確認をしてからとします。

事務所:新規相続案件で来所のお客様に対応 (18:00~19:00)

所長に同席して相続のお客様に対応。相続税申告の作成は何度か経験しており、知識にも自身がありますが、今回は所長Z津先生も同席となりました。

「Z津先生がいてくれてよかった」というのが正直な感想です。大学生・高校生の2人の子どもを残してご主人に先立たれた奥様。こういった場合に事務的に対応するのがいいのか、ゆっくり話を聴くべきか、お客様の心情に寄り添えなければ判断がつきません。今回、Z津先生は奥様のお顔をまっすぐ見て、お話に聴き入っていました。

ほんの少し、奥様の笑顔を拝見することができました。会議室には小さな笑い声も響いて、Z津先生の人間力を知ったM池氏です。

事務所:事務作業 (19:00~21:00)

デスクに戻ると、G社の決算書・申告書があります。G社はS藤さんが担当しており、今月末までに申告しなければなりません。

丁寧に決算・申告書や添付の資料を検討して、間違いや疑問点を添削レポートに記していきます。明日以降のスケジュールを鑑みるに、今日、G社の決算・申告は完成させる必要があります。

添削した書類をS藤さんに渡し、再提出を待つ間に自分の事務作業を片付けます。このあたりの効率性がM池氏の強みであり、スマートなところ

何度かの添削を繰り返してようやくG社の申告書が出来上がりました。

今日一日の業務とG社の決算報告を所長に送信して、帰宅します。「お疲れさまでした」と軽めにS藤さんを労うことも忘れません。

まとめ:to be continued

さて、本記事では、登場人物のうち2人(所長とベテラン税理士)しか紹介できませんでした。

それでも、税理士事務所の仕事についてかなり具体的なイメージを持っていただけたのではないでしょうか?

S藤さん、O田さんの活躍については次の記事で詳しく紹介します。この記事もご覧いただいた上で、税理士事務所で働く人間を見ていただけたらと思います。

若き税理士補助とベテラン事務員がどのような一日を迎えるのか、どうぞお楽しみに!

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。