COLUMN経営コラム

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クラウド会計ソフトで農業の青色申告をしよう!おすすめソフトは?
投稿日:2024.07.19
更新日:2024.07.19
税務経理クラウド
農業を営み、所得が生じた場合は、確定申告を行わなければいけませんが、その際におすすめなのが青色申告です。
今回は、農業で青色申告がおすすめな理由と、青色申告をするに当たって使いたい会計ソフトの紹介をします。ぜひ農業従事者の方は記事で紹介する会計ソフトでスムーズに確定申告作業を進めてください。
記事は各分野のプロフェッショナルが在籍する団体が執筆を担当しているので、確かな内容になっています。どうぞ安心して読み進めてください。
▼ この記事の内容
農業の確定申告を行う場合、さまざまな税制上の特典がある青色申告がおすすめ
農業従事者が確定申告を行う際は、白色申告か青色申告を選べるようになっています。ただ、おすすめなのは様々な税制上の特典がある青色申告です。理由を説明しましょう。
「青色申告特別控除」に加え、農林水産省が用意している農業を営む方限定の青色申告のメリットもある
青色申告のメリットとしてよく知られるのが「青色申告特別控除」です。
控除額は複式簿記で記帳する場合55万円、電子申告または電子帳簿保存を行うと10万円上乗せされ、最大65万円、現金の出入りで帳簿をつける現金主義の場合や簡易簿記などの場合は10万円までです。
白色申告にはこのような特別控除の制度がありませんから、青色申告の方が控除額が大きくなります。控除額が大きくなれば、所得の額が減るので、納税額も減ります。
これは農業所得にも適用される制度ですから、青色申告をした方がお得です。
農業従事者にはこの「青色申告特別控除」に加えて、別のメリットも用意されています。それが、青色申告の実績が1年分あれば、販売収入が基準収入の9割を下回った場合、下回った額の9割が補填(ほてん)される「収入保険」に加入できることです。
農業はそのときそのときの天候の影響を受けやすく、収入が大きく上下することがあります。そのようなときに収入保険に加入しておけば安心ですから、青色申告を利用するメリットも大きいです。
農業に専従の家族への報酬を必要経費に算入できる。損失の繰越ができるなどのメリットもある
農業従事者が青色申告を利用するメリットはまだあります。
まず農業に専従の家族への報酬を必要経費に算入できます。農業を営んでいる一家の場合、家族も農業に専従しているというケースが多いですから、この制度の恩恵を受けることができるでしょう。
ただし、専従というのが条件です。家族が普段どこかに勤めに出て、休日だけ農業に携わるというのでは、報酬を必要経費に算入できません。
次は、損失の繰越ができるメリット。青色申告では、農業の経営で損失(赤字)が出たとき、その損失分は以降最大3年間、所得額から差し引けます。
農業は収入が不安定な仕事なので、損失の繰越は大きな意味を持つでしょう。
農業を営む方が確定申告を行うには農業専用の会計ソフトが必要なのか
農業を営む方が確定申告を行う際に会計ソフトを利用したくなることもあるでしょうが、ここで疑問が生じるでしょう。農業の確定申告には、農業専用の会計ソフトが必要かどうかという疑問です。
その疑問に答えます。
農業専用の会計ソフトを使わずとも、次の条件を満たせば農業を営む方が確定申告をすることは可能
前述の疑問に対する答えは、「農業専用の会計ソフトを使わなくても大丈夫です」となります。ただし、いくつか条件があるので、解説しましょう。
「農業簿記」に対応している
農業従事者が農業専用の会計ソフト以外を使う場合は、「農業簿記」に対応しているか確かめてください。対応していない会計ソフトを使うも、農業の確定申告ができません。
農業簿記には一般の簿記と異なる特殊な勘定科目を数多く用いる
どうして農業簿記に対応した会計ソフトを使わないと、農業の確定申告ができないのかを説明しましょう。
農業簿記では、一般の簿記とは異なる特殊な勘定科目を数多く用いるからです。そのような勘定科目を用意していない会計ソフトは農業従事者の確定申告時に役立ちません。
そこでいくつか、「農業簿記」の勘定科目の具体例を挙げてみましょう。
まず、稲作用の苗や果物を育てるための種を購入した際に用いる「種苗費」という勘定科目があります。購入した値の種類、種の数などを正しく記入することになります。
「素畜費」という勘定科目では、子牛や子豚、ひななどの家畜を育てるための経費を記入。飼料や薬品などの購入費、種付料などです。「農薬衛生費」は散布に利用する農薬の購入費などの勘定科目です。、
ほかにも項目はありますが、農業の勘定科目は一般的な簿記よりも細かく分類されているのが特徴です。
まさに農業ならではの勘定科目があり、そのような勘定科目を記入できるようになっていない会計ソフトを農業従事者が使うわけにはいきません。
「棚卸」の際にも農業に特有の勘定科目を利用する
棚卸とは、年度末に手元に残っている商品や資材の在庫の金額を計算し、帳簿に付けることですが、ここにも農業特有の勘定科目があります。
農業簿記の棚卸で利用する勘定科目
農業簿記の棚卸で利用する勘定科目は次のようなものです。
- 農産物
- 仕掛品
- 原材料
- 貯蔵品
特に注意が必要なのは「仕掛品」という項目の計算
仕掛品とは、通常、原材料を少し加工しているものの未完成な製品のことです。農業でいうところの仕掛品はまだ収穫に至っていない栽培中の農産物や、販売目的で肥育中の動物のことを指します。
仕掛品に該当する農産物や動物を原材料として計上してはいけません。会計ミスになります。
「農業所得」の確定申告ができる
農業で所得が得られて確定申告をする場合は、専用の様式に則って書類作成をしなければいけません。この専用の様式が用意されている会計ソフトを利用する必要があります。
青色申告の場合を例に挙げてみましょう。
農業所得の確定申告の際に作成する書類
農業所得の確定申告の際に作成する書類は以下の通りです
- 確定申告書Bの第一表と第二表
- 4枚1組の青色申告決算書(農業所得用)
確定申告書Bの第一表と第二表
確定申告書B第一表には農業収入と農業所得を記載。農業所得は「事業所得」の一種で、「事業所得」の区分方法は営業等と農業となっています。このうち、農業の部分に「農業所得」を記入します。
4枚1組の青色申告決算書(農業所得用)
青色申告決算書には貸借対照表や損益計算書が含まれていますが、この点は他の業種と同じです。違うのは表示科目。農業所得用に特化した表示科目になっています。
農業従事者はこれらの点を踏まえた会計ソフトを利用しなければいけません。
農業の確定申告に適した会計ソフトの選定基準
農業専用の会計ソフトでなくても農業従事者が使えるものはありますが、選定の基準があります。どのような基準か確認してみましょう。
クラウド型である
会計ソフトには大きく分けて二つのタイプがあります。インストール型とクラウド型です。
インストール型というのはパソコンにインストールして使うタイプです。クラウド型はサービスが用意しているクラウド上にデータが保存されるタイプ。インストールは不要です。
このうち農業従事者におすすめなのがクラウド型です。そこで、クラウド型のメリットを見てみましょう。
ネット環境さえあれば、スマホ・タブレット・パソコンなど異なる端末から同じデータにアクセすることができる
クラウド型の会計ソフトはネット上のクラウドという場所にデータを保存します。ネット上の場所ですから、ネットに繋がる端末なら何でもアクセスできます。スマホでもタブレットでもパソコンでもOK。
こんな使い方もできます。家のパソコンでデータを入力し、出先のタブレットでデータを確認するとか、帳簿付けに必要な品物を購入した際に、手元のスマホから入力するなどです。
農業従事者にとってもとても使いやすいのがクラウド型です。
毎年の税制改正の際に自動でアップデートしてくれる
会計や税に関する法律はよく改正されますが、そのたびごとに自分で対応するのは容易ではありません。
その点、クラウド会計ソフトを導入しておけば、毎年の税制改正の際に自動でアップデートしてくれるので、大変楽です。自分で様々な変更手続きをする必要はありません。
農業従事者は毎年税制改正の動きを追うというわけにもいかないでしょうから、クラウド会計ソフトのアップデート機能を利用したいところです。アップデートに関する費用が発生しないのもメリットです。
自動取り込み、自動仕訳ができる
自動取り込み、自動仕訳は便利な機能ですが、農業の確定申告でも使いたいところ。その特徴を見てみましょう。
銀行口座やクレジットカードと情報を連携させることで出入金や取引の明細を会計ソフトに自動で取り込み、仕訳を自動化する機能
自動取り込みでは、お金の出入金データを会計ソフトに自動で取り込んでくれます。銀行口座やクレジットカードの出入金情報や明細などです。
取り込んだデータは自動仕訳で仕訳がされます。
農業を営みながら、これらのデータを手作業で取り込んだり仕訳をしたりするのは大変ですが、会計ソフトが対応してくれれば助かります。
経理に割いていた時間・人材をカットし、より本業に集中できる環境を整えることが可能になる
入出金や取引明細の取り込みを手作業で行うとなれば、手間も時間も人材も必要です。農業従事者にはそんな余裕がないこともあるでしょう。
その作業を会計ソフトがやってくれれば、時間も人材もカットできて、これまで以上に本業に集中できるようになります。そのような会計ソフトを選んでみましょう。
農業簿記に対応し農業所得の確定申告ができるクラウド会計ソフト
農業専用でなくても、農業簿記に対応し農業所得の確定申告ができるクラウド会計ソフトがあります。その中から次の三つを紹介しましょう。
- freee
- マネーフォワードクラウド会計
- 弥生会計オンライン
それぞれのソフトの特徴を解説します。
freee
画像引用元:freee公式サイト
freeeは農業の確定申告に対応したクラウド会計ソフトです。農業所得向けの決算書の書式にも対応し、農業用の勘定科目も初期設定でまとめて登録して利用を始められます。
freeeの利用に当たって難しい会計知識は不要です。会計初心者の方でも、質問に答えていくだけでカンタンに確定申告の書類を作成できます。
請求書作成と帳簿付けは一緒にすることが可能。、販売管理も効率化されます。Agrionという株式会社TrexEdgeが提供しているクラウドサービスとfreeeを連携すると、細かい設定ができるようになり、freeeの利便性がさらに増します。
ネットバンクやクレジットカードを連携すると、入出金情報を自動で取得し、AIを使って勘定科目などを推測。手入力によるエラーを減らし、経理作業にかかる時間を大幅に短縮化します。
会計データはレポートで確認でき、経営に役立てられます。
これらの機能は農業でも大いに力を発揮しますが、実際にfreeeを利用した農家の体験談も公式サイトに掲載されているので、ぜひ参考にしてください。
マネーフォワードクラウド会計
画像引用元:マネーフォワードクラウド会計公式サイト
マネーフォワードクラウド会計は個人事業主、中小企業、中堅・上場企業、グループ企業まで利用できるクラウド会計ソフトで、農業従事者の利用例もあります。農業経営の会計業務に役立つ機能もいろいろ揃っています。
- リアルタイムでのレポート作成:月や週、日単位の集計レポートを作成し、費用と売上の内訳を迅速に確認できる
- 銀行・クレジットカードと連係:銀行やクレジットカード、電子マネー・プリペイドなど計2,400社以上の金融機関と連携し、取引明細を自動取得して帳簿に反映できる
- 顧問税理士とスムーズに情報共有ができる:オンラインの打合せで勘定科目に誤りはないか、経費に含めても問題ないかなども相談できる
弥生会計オンライン
画像引用元:弥生会計オンライン公式サイト
弥生会計オンラインは法人用のクラウド会計ソフトです。法人化した農家が利用できます。特徴を挙げてみましょう。
- 初めての経理でも操作はカンタン⇒日付や金額を入力するだけで、簿記の知識がなくても、カンタンに使える
- 1年間無料で、すべての機能を使える⇒経理の自動化機能で作業時間を90%削減可能
- 専門スタッフが丁寧にサポート⇒製品の操作方法から、決算時期の仕訳・経理業務のやり方まで、担当スタッフがわかりやすくてほどきします
- 表計算ソフトなどからの引継ぎがしやすい⇒表計算ソフトなどで作成したデータの弥生会計オンラインへの引継ぎはカンタンです。csvやテキストファイルとして引き継げます。
まとめ
今回は、農業における確定申告でおすすめの青色申告と利用できる会計ソフトのご紹介をしました。
農業従事者が確定申告をする場合、農業専用の会計ソフトを使わなくても、一般的なソフトで対応できる場合があります。ただ、条件がいくつかあるので、その条件を確認の上、利用しましょう。
農業に合った会計ソフトが利用できれば、会計業務は大幅に効率化し、本来の仕事にも集中しやすくなります。ぜひ利用して、農業に励んでください、