COLUMN経営コラム

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中小企業にクラウド会計ソフトが必要な理由と選定の仕方
投稿日:2024.07.19
更新日:2024.07.25
税務経理クラウド
中小企業のオーナーの中には、会計業務をどのように行えばいいだろうかとお悩みの方もいるでしょう。様々な方法があり、選ぶのに迷うこともあるでしょうが、今回紹介するのはクラウド会計ソフトです。
クラウド会計ソフトはインターネット環境が整っていれば、いつでもどこでも会計業務ができるのがメリット。インストールの必要もなく、共有もしやすいです。
それだけに、中小企業にとっても使いやすいので、ぜひとも導入していただきたいのですが、その理由を説明しましょう。
併せて、中小企業がクラウド会計ソフトを選定する場合の選定基準も解説するので、自社に合ったソフトを選んでみてください。
この記事はクラウド会計ソフトのプロフェッショナルが在籍する団体が執筆を担当しています。内容は確かなものですから、しっかり確認し、活用していただければ幸いです。
▼ この記事の内容
中小企業にクラウド会計ソフトが必要である理由
なぜ中小企業にクラウド会計ソフトが必要なのでしょうか。主な理由としては次のようなものがあります。
- 中小企業では、限られたリソースのなかで効率的な会計管理が求められる
- 日常の帳簿付けから決算書の作成までの業務が大幅に効率化される
- IT人材不足をカバーできる
- 中小企業庁が発表した「小規模事業者のIT利活用による労働生産性の向上」に、会計ソフト、あるいはクラウド会計ソフトの必要性が記されている
- 会計業務の効率化アップ!
- データ分析が正しく行え、企業経営の現状を把握でき、今後の意思決定をしやすくなる
それぞれの理由を1つ1つチェックしてみましょう。
中小企業では、限られたリソースのなかで効率的な会計管理が求められる
中小企業はリソースが限られています。その限られたリソースの中で効率的に会計管理をしていかなければいけませんが、スタッフのスキルだけに頼るのは難しいことでもあります。
スタッフの負担も増えることになり、会計業務を行うのも大変です。
そこで活用したいのがクラウド会計ソフト。中小企業は専門人材が不足している場合が多 く、クラウド会計ソフトはそのギャップを埋め る重要な役割を果たします。クラウド会計ソフトがあれば、リソースが限られていても会計管理・業務を行いやすくなります。
日常の帳簿付けから決算書の作成までの業務が大幅に効率化される
中小企業の会計業務で大変なのは日常の帳簿付けや決算書の作成です。中小企業の人材不足が叫ばれる中にあって、このような業務を日々こなしてくれるスタッフを見つけるのもかんたんではありません。
そこで利用したいのがやはりクラウド会計ソフトで、帳簿付けも決算書の作成も効率化できます。会計ソフトにはクレジットカードの明細や銀行の入出金データを直接取り込める機能が備わっていることが多いです。
これにより手仕事による転記作業が必要なくなり、人間の手が犯しやすいエラーも防ぎやすくなります。
さらに自動仕訳機能付きのクラウド会計ソフトなら、取り込んだ内容からそのまま勘定科目の振り分けや税区分もでき、仕分け作業も簡略化。やることといえば、貸方・借方の内容確認のみでよく、処理スピードも大幅にアップするでしょう。
IT人材不足をカバーできる
現在、IT人材は不足していて、これは中小企業でも変わりません。むしろ中小企業では、IT人材を別に採用する余裕がない場合もあります。
IT人材が確保できないと、高度なシステムやソフトを導入しても活用しきれないこともあるでしょう。活用できなければ、導入する意味がありません。
その点、クラウド会計ソフトなら、専門のIT人材がいなくても操作できます。それほど難しい知識や技術がなくても、会計業務を行えるので、中小企業のIT人材不足をカバーしてくれるでしょう。
中小企業庁が発表した「小規模事業者のIT利活用による労働生産性の向上」に、会計ソフト、あるいはクラウド会計ソフトの必要性が記されている
中小企業庁が発表した「小規模事業者のIT利活用による労働生産性の向上」という文章に、会計ソフト、あるいはクラウド会計ソフトの必要性が説かれています。
第3節の1項・2項には<財務・会計業務におけるITの導入状況と効果><クラウド会計ソフトの活用>というコーナーがあり、ここで詳しい状況が説明されています。
3年間の経常利益額が増加した企業の場合
まず、財務・会計業務におけるITの導入状況別に3年間の経常利益額が増加した企業の例を見てみましょう。第2-2-13図で説明されています。
- 会計ソフトを導入している場合(クラウド型、又はインストール型、パッケージソフト)⇒29.1~33.0%
- アウトソーシングしている場合⇒25.5%
- 表計算ソフトを利用している場合⇒26.0%
- 何もして稲葉愛⇒18.1%
経常利益が減少傾向
次は経常利益が減少傾向の企業です。
- 特に何も使用しない企業⇒35.3%
- 会計ソフトを導入している場合⇒21.2~26.1%
次は、第2-2-12図で小規模事業者における会計ソフトなどの利用状況が示されているので、数値を参照してみましょう。資料は<三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2017年12月)>によるものです。
- クラウド型会計ソフトを利用している小規模事業者⇒9.8%
- インストール型、パッケージソフトを利用している小規模事業者⇒29.5%
- 税理士への記帳代行を依頼するなど、全ての会計業務を社外にアウトソーシングしている小規模事業者⇒27.6%
- 表計算ソフトのようなオフィスソフトを利用している小規模事業者⇒12.2%
- 紙で計算するなど、特段何も対策していない小規模事業者⇒18.9%
- その他⇒2.0%
紙で会計計算を行い、特に何も対策をしていない小規模事業者は18.9%。これからITを新たに導入する余地があるとしています。
ただ、ITを導入するに当たって課題になるのがコストの負担。44.9%もの小規模事業者が<コストが負担できない>と回答しています。
そこで同文章では、クラウド会計ソフトの活用が有効な選択肢の1つであると提案。クラウド会計ソフトについて詳しい説明を加えています。その内容も見てみましょう。
第2-2-14図では、クラウド会計ソフトを導入した小規模事業者に対して、その効果を聞いています。回答内容を紹介しましょう。
- 経理・会計業務にかかる業務時間の削減⇒78.8%
- 更新作業の効率化(税制改正の対応等)⇒31.4%
- ソフトウェアにかかる費用の削減⇒24.1%
- クラウド上での情報管理の集約化⇒24.1%
- セキュリティの向上⇒19.6%
- 社外からのアクセス向上(場所・時間を選ばずに作業可能)⇒14.3%
- 銀行口座等の外部データの自動取得による効率化⇒9.8%
- 請求書など書類のペーパーレス化⇒8.7%
- 勤怠管理や受発注等、会計以外の機能との連携⇒5.8%
- その他⇒2.7%
続いて、第2-2-15図では<IT導入済み、もしくはアウトソーシングしている事業者>と<IT未導入で紙で会計計算している事業者>それぞれに対して、クラウド会計ソフトを導入する場合、どのような課題が生じるのかについて質問しました。回答を引用してみましょう。
IT導入済み、もしくはアウトソーシングしている事業 | IT未導入、かつ紙で計算している事業者 | |
現状のシステムに不満がない | 56.9% | 31.9% |
導入の効果が分からない、評価できない | 35.0% | 46.4% |
従業員がクラウド会計ソフトを使いこなせるか自信が無い | 16.5% | 23.3% |
業務の流れが変わることに抵抗がある | 15.3% | 15.0% |
クラウド会計ソフト導入後のサポート体制に不安がある | 8.6% | 3.8% |
クラウド会計ソフトの導入を支援してくれる人材がいない | 8.2% | 5.6% |
現状のシステムの更改のタイミングが訪れていない | 7.8% | 5.1% |
付随的なメリットがあまりない(融資につながるなど) | 7.7% | 13.8% |
インターネットバンキングなどを活用していない と 、クラウド会計ソフトのメリットを享受しにくい | 2.9% | 1.0% |
顧問や経営に関する日頃の相談相手(税理士や会 計 士 等 )から反対された | 1.6% | 0.0% |
その他 | 4.4% | 4.5% |
この数値の中で特に注目したいのが<IT未導入、かつ紙で計算している事業者>において<導入の効果が分からない、評価できない>とするのが46.4%もいることです。クラウド会計ソフトの利用価値についてあまり評価していないところが多いということであり、今後のメリット周知が必要になってくることを意味するでしょう。
同文章では、実際にクラウド会計ソフトを導入した小規模事業者の事例も紹介し、利用の利点を説いています。イトウスポーツという小規模事業者の事例です。
会計業務の効率化アップ!
中小企業がクラウド会計ソフトを導入する最大のメリットは会計業務の効率化アップです。
会計業務には様々な複雑な作業を伴うことがあり、人手だけの対応では時間も手間もかかる上、ヒューマンエラーも起きやすくなっています。
その点、クラウド会計ソフトなら、ほとんどの業務は自動化され、人間が手仕事で行うことも少なくなります。そうなれば、会計業務にかかっていた時間も人件費も節約でき、作業効率も上がりますから、中小企業の運営もしやすくなるでしょう。
データ分析を正確に行い、企業経営の現状把握や意思決定を行うのに役立つ
人間の手仕事による会計業務で難しいのがデータ分析ですが、クラウド会計ソフトを使えばかんたんにできます。
月別の推移や昨年対比、キャッシュフローなどのデータ分析、会計の数値分析などもでき、そのデータを元にレポートの作成もできます。レポート結果は企業経営の現状把握や意思決定を行うのに役立つでしょう。
中小企業向けのクラウド会計ソフトの選定基準
中小企業にクラウド会計ソフトが必要な理由がお分かりになったでしょうが、そうなると課題になるのがどのようなソフトを選定すべきかです。様々なクラウド会計ソフトがあり、選定に迷うこともあるでしょう。
そこでここからは、中小企業向けクラウド会計ソフトの選定基準を解説することにします。
自社の人手不足を補い業務を効率化する機能が 備わっているかを確認
中小企業がクラウド会計ソフトを導入する目的の1つは人手不足を補い、会計業務を効率化することです。そのため、その目的にかなうソフトを選ばなければいけません。
十分な人手がいなくても、専門のIT人材がいなくても、操作しやすいソフトである必要があります。多くの中小企業では人材不足で悩んでいて、人材確保がしにくい状況ですから、足りない人手でも対応できるようなクラウド会計ソフトを利用する必要があります。
次は機能の問題。一口にクラウド会計ソフトといっても、製品によって備わっている機能は異なります。
そこで自社に必要な機能があるかどうかも選定基準になります。
まず基本機能についてはどのソフトでも次のようなものは備わっているでしょう。
- 伝票入力(仕訳入力)
- 帳簿作成
- 入出金管理
- 資金管理
- 経営分析
- 決算書作成
- 財務情報の一元管理
- 税申告など
これらは中小企業の会計業務でも最低限必要なものです。この他に各社で効率化したい作業や必要な機能を洗い出してみましょう。
銀行口座やクレジットカードの取引明細の自動取得、他サービスとの連携、仕訳ルールの学習機能、勤怠管理、レポート共有機能など便利な機能があるソフトもあるので、適宜選んでみましょう。
自社の予算に見合った料金プランかを確認
クラウド会計ソフトの場合、インストール型などとは違って初期費用が掛からないのが普通です。その代わり、月額利用料金が掛かります、
月額利用料金の相場は2,000~5,000円程度。プランによっては2~3万円というものもあります。機能が豊富で、利用可能人数が多くなれば、月額料金は高くなりやすいです。
資金面で課題がある中小企業の場合、機能とコストのバランスを図ることが大事です。機能は少しでも充実させたいでしょうが、自社の予算に見合った料金プランか確認してみましょう。
クラウド会計ソフトの利用料金が大きくなれば、中小企業の運営にも悪影響が及びます。予算の範囲内で自社に合った機能のソフトを選ぶ、難しいことではありますが、よく考えて実行してみてください。
まとめ
今回は、中小企業にクラウド会計ソフトが必要な理由やソフトの選定基準について解説しました。
中小企業はリソースも限られ、IT人材を別に確保するのが難しい場合もあります。そんな中にあって、いかに会計業務をスムーズかつ効率的に行うかが課題です。
その課題を解決してくれるのがクラウド会計ソフト。会計業務の多くの部分が自動化され、管理もしやすくなります。そのため、これまで別の会計方法を採用していた中小企業でもぜひ採用していただきたいです。
そこでポイントになるのが、どのようなクラウド会計ソフトを選定するか。記事ではこの点についても解説したので、ぜひ参考にしてください。
皆さん方の企業でも自社に合ったクラウド会計ソフトを導入し、会計業務に関する課題を解決していただければと思います。