COLUMN経営コラム

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譲渡所得とは|確定申告は必要か|税理士報酬の相場は?

2021.09.12

税務

普段、給料収入で生活しているサラリーマンの方にとっては、確定申告は縁の薄いものでしょう。
そんな方でも、ときには確定申告が必要になる場合があります。

譲渡は、そういう事例の一つです。
あなたが所有するものを他人に売って利益を得たら、確定申告・税金の支払いが必要になる場合があります。

本記事で、譲渡にかかる税金について学んでいきましょう。
特に、大きな金額が動く譲渡には注意が必要です。

  • 家を売ったが、税金はかかるのか?
  • 株の売買をしているが、申告しなければならないのか?
  • 家にあった骨董品を他人に売却したら税金を払わなければいけないのか?

といった疑問に簡潔・丁寧にお答えします。

譲渡のケースごとに、下記の点についても説明します。

  • 自分で申告できるのか?
  • 税理士に頼むべきか?
  • 税理士に依頼するときの報酬は?

具体例も挙げて説明しており、譲渡にかかる税金についての実践的な内容となっております。


譲渡の税金で間違いをおかすことはがないよう、ぜひ最後までお読みください。

譲渡所得とは

譲渡所得の厄介なところは、譲渡所得というあまり馴染みのない用語が2つ繋がって出来ていることです。

まずは譲渡の意味をおおまかに捉えてそれから譲渡所得の全体のイメージを見ていくことにします。

譲渡とは

国税庁のHPによると、譲渡は、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為とあります。
つまり、あなたの(有形・無形の)持ち物を他人に渡したら、対価を受け取ろうと受け取るまいと、譲渡となります。

これは<譲渡の定義>であり、こういった行為全てを譲渡所得として課税するという意味ではありません。

例えば、個人から個人への無償譲渡は通常贈与税の対象となりますし、法人から個人への無償譲渡は譲渡所得になったり、相手の個人がその法人の役員や従業員であれば給与とみなされる場合もあり、様々です。

譲渡の対価や形態によって税金の種類や金額が異なりますので、わからないときには、税務署や税理士に相談するようにしましょう。

以下、譲渡にかかる税金について説明します。
税理士や税務署に相談するにしても、こうした知識を覚えておけば、話がスムーズにできたり、余計な損をしないで済むので、この記事を最後まで読んでから行動するようにしてください。

譲渡所得とは

譲渡に関する限り、基本的には所有しているものを売却したことによる利益が所得となります。
税金の計算対象となるのは、所得から控除額などを差し引いた課税所得です。

譲渡所得の計算方法・そこからの税金算出を、以下で説明します。

譲渡所得と税金計算

譲渡所得は譲渡の利益ですから、基本的な考え方としては、譲渡した資産の売却金額からその資産を取得した購入代金(および売却にかかった諸費用)を差し引いたものが計算の基礎となります。

更に、譲渡の内容によって特別に控除できる金額が定められています。

したがって、一般的な譲渡所得の基礎となる金額を算出する式は以下のとおりです。

譲渡所得の計算基礎(※) = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
(※)ここでは計算基礎と表現していますが、これは本記事独自の用語です。

実際の譲渡所得は、計算基礎に譲渡の種類によって決まっている係数を掛けて求めます。具体的には、この後で説明する総合課税でかつ長期譲渡所得である場合には係数が1/2となり、その他の場合は1です。

譲渡所得には、総合課税分離課税の2種類があり、それぞれが、長期譲渡所得短期譲渡所得に分かれます。

総合課税と分離課税

総合課税は、給与所得などと合計して合計所得金額を算出し、それをもとに累進税率によって税額を計算する課税方法です。分離課税の場合には、譲渡所得に固定税率を乗じて税金を計算します。

一般のサラリーマンの方で言えば、マイホームなどの不動産売却・投資信託などの株式売買利益などが分離課税の対象です。

その他、例えば骨董品などを知人に売却したときなどは総合課税の対象となります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得

長期譲渡所得は譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの。短期譲渡所得は所有期間が5年以下のものです。

譲渡所得・税金の計算方法

分類別に所得・税金の計算方法をみていきましょう。

譲渡所得の計算は、先程紹介した譲渡所得の計算基礎をもとに計算します。
ここで計算基礎をもう一度見てみましょう。

譲渡所得の計算基礎 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

上の取得費、特別控除額は、譲渡の内容によって変わります。

また、譲渡所得の計算や、そこからの税額計算も譲渡の内容や所有期間によって異なります。

それぞれの違いについてまとめました(※1)

総合・分離所有期間取得費特別控除所得税額事例
総合課税長期購入費用-減価償却費(※2)50万円基礎金額×1/2給与所得などと合算し、累進税率による書画・骨董などを知人に売った
短期基礎金額
分離課税長期特例措置(※3)15%土地・建物などを売却
短期30%
株式等購入費用15%信託などの株式取引

(※1)この表では譲渡所得の計算を簡略化して表示していますので、詳細については国税庁HPをご参照ください。

(※2)多くの資産は購入してから売却するまでに価値が減少します。その減少分を減価償却費として取得価額から差し引く必要があります。

(※3)住宅や付随する土地の売却については100万円~5,000万円の控除が適用できる場合があります。詳細はこちらでご確認ください。

先祖代々の土地など、購入費用がわからない場合もあります。その場合、売却価額の5%を購入価額とすることが出来ます。
また、実際の購入価額が売却価額の5%を下回る場合にも、購入価額を売却価額の5%を購入価額として所得計算することが認められています。

譲渡所得の確定申告は税理士に依頼するべきか?|具体例で検証する

譲渡所得の形態は様々です。税理士に依頼した方が良い場合が多いのですが、自分で申告しても大丈夫な場合、申告そのものが不要な場合もあります。

譲渡所得の申告を税理士に依頼するべきか、判断の参考のために具体例を検証してみます。

不動産を譲渡する場合|必ず税理士に相談しましょう

土地や建物など、不動産を売却するときには大きな金額が動きます。

売却の相手(子ども・親族・他人・自分が役員を務める法人など)によって、または売却の理由(国や地方自治体による収用・破産などに伴う財産処分・離婚による分与ほか)によっても適用される控除額(多ければ数千万円)が違います。

そもそも課税対象でなかったり、譲渡でなく贈与税や相続税の対象であるなど専門知識がなければ判断できない事が多く、売買の契約内容によって税金の種類が変わってしまうこともありえます。

したがって、不動産売買のような大きな譲渡の際には、実際の譲渡をする前に税理士事務所などの専門家に相談することが必須です。

不動産会社等は、顧客に紹介できる税理士と提携していることがありますので、不動産会社を通じて土地や建物の売却をされる場合は、担当者に聞いてみるといいかもしれません

ツテがない場合は、こちら(弊事務所の別記事「24時間体制で相談を受けてくれる税理士事務所は? | 税理士に相談する方法や、相談する際の心得について解説します」)を参考に税理士を探しましょう。

株式の売買(投資信託など)|単純なものなら自分で申告も可能!

投資信託などで分配金を受けても、大抵の場合は確定申告する必要はありません。

しかし、売却による利益があれば確定申告が必要になる可能性が出てきます。

このとき、通常は譲渡所得の分離課税(株式等)に該当します。

投資信託などで確定申告が必要かどうか、わからないときには信託会社に尋ねてみるのが一番です。
必要があれば、税理士を紹介してもらうことも(おそらく)可能でしょう。

収入の種類が給与と投資信託などの株式売買だけならば、自分で申告することも十分可能です。
売却益があまり大きくなく、税理士に報酬を支払うとマイナスになってしまう場合などは自分で申告・納税する方が理にかなっていると言えます。

信託会社の公式サイトや国税庁の電子申告案内は、近年、素晴らしく充実していますので、単純な確定申告はこれらを参考にご自身で実行可能です。

ただし、インターネットには真偽不明の怪しげな情報もかなり載っていますので、基礎的な知識なしに不正確な情報に触れて誤った判断をしないようにすることが大切となります。

もし、不安なことがあれば、まずは税理士に相談するのがベストです。

その他|50万を超える売買には注意が必要

宝石や、書画・骨董などを他人に売却しても(利益が出れば)、これは譲渡所得です。

宝石や書画・骨董の売買を商売にしているのでなければ通常、総合課税の対象。
ただし、フリーマーケットサイトでの販売など、雑所得または事業所得となることもあり、そうなれば所得や税金の計算が違ってきます。

宝石や書画・骨董などの売却で利益を得る計画の段階で税理士に相談するのが最適です。

確定申告や納税が不要な譲渡|生活用動産の売却は譲渡所得の課税対象にならない

生活用動産の譲渡は課税の対象外です。

では、生活用動産とはどんなものを指すのでしょうか?

国税庁のHPによると、生活用動産とは家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産とあります。

家具や電化製品でもいわゆる「転売」は非課税ではなく、通常「雑所得」または「事業所得」として課税されます。

また、自動車に通勤用と明示していることからも分かるとおり、家庭で使用していたものでも生活に通常必要とみなされない趣味の領域に属する家具や車両、もちろん宝石や骨董品などの譲渡も課税対象となります。

譲渡所得の確定申告を税理士に頼むと、どのくらいの費用がかかるか

普段は確定申告の必要がないサラリーマンの方が、突発的な譲渡で税理士に申告を依頼した場合、どのくらいの費用がかかるでしょうか?

譲渡所得にかかる税理士の報酬は、譲渡した資産や金額規模はもちろん、地域などによっても異なるので、一概には言えません。だいたいの目安と思って御覧ください。

譲渡する資産税理士報酬(目安)備考
不動産(1件あたり)3万~10万程度規模や取得価額の把握の容易さによって異なる。
株式など(証券会社経由)2万~5万程度証券会社が発行する「取引報告書」の転記だけなら費用は少ない。ただし件数によって増加する。
その他3万~20万程度譲渡資産、譲渡金額などにより、様々に異なる。

まとめ|譲渡の前に税理士への相談を検討しましょう

サラリーマンの方は、普段給与天引きと年末調整で半自動的に納税しているため、何かの際に確定申告をしなければならないという発想になりにくい面があると思います。

本記事で紹介したように、家や土地、それ以外のものであっても、自分のものを誰かに売れば、収益(=所得)を得た事になり、それに税金がかかります。

税金を正しく支払うことは国民の大切な義務です。

正しい納税を行うために、また、無駄に多くの税金を支払う事態に陥らないために、できれば譲渡を行う前に、さもなくば譲渡のあとできるだけ速やかに税理士に相談しましょう。

多くの税理士事務所のHPにはお問い合わせフォームなどが設けられています。その利用方法についてはこちらをご参照ください。


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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。