COLUMN経営コラム

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会社設立の種類を徹底解説|4つの形態と特徴を比較

投稿日:2024.12.26

更新日:2024.12.26

経営

会社設立は、新たに事業を始める際の重要な第一歩です。どのような会社形態を選択するかは、事業の運営方法や成長戦略に大きく影響を与えるため、慎重な検討が必要です。

しかし、会社設立に関する知識が不十分だと、選択肢の違いがわかりにくく、最適な判断を下すことが難しくなることも少なくありません。

本記事では、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類の会社形態を中心に、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。

また、会社設立と個人事業主との違いや、各会社形態が持つ税務上の違い、設立後に必要な手続きなど、事業開始に必要な知識を網羅的に取り上げています。

会社設立に関する疑問を解消し、自分に最適な形態を選ぶための参考にしていただければ幸いです。これから事業を始める方や、法人化を検討している方はぜひ最後までご覧ください。

会社設立の種類とは?

会社設立は、事業を法人化するための重要なステップであり、選択する形態によって法的責任や運営方法が大きく異なります。日本では、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4つの会社形態が認められています。

それぞれが異なるメリット・デメリットを持ち、事業内容や規模、資金調達の方法に応じて適切な形態を選ぶことが求められます。

また、会社設立によって社会的信用力が向上し、取引や資金調達が容易になる一方で、運営に伴う手続きや責任も発生します。 以下で詳しく説明していきます。

株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類

株式会社は、株式を発行して資金を調達できるため、大規模な事業に適しており、日本で最も一般的な形態です。

一方、合同会社は設立コストが低く、柔軟な運営が可能な形態として、特に中小規模の事業者やスタートアップに利用されています。

合名会社は、全ての出資者が無限責任を負う形態で、信頼関係が重視される事業に適しています。

合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方を持ち、リスクと責任のバランスをとる形態として活用されています。

これらの違いを理解し、事業の特性に合った形態を選ぶことが重要です。

個人事業主との違い

個人事業主と会社設立の大きな違いは、法的地位と責任範囲です。会社設立によって法人格を取得すると、事業者個人の財産と会社の財産が分離され、責任の範囲が明確化されます。一方、個人事業主では事業の責任をすべて個人が負うため、経済的リスクが高くなります。

また、税務面では、法人の場合には法人税が適用されるため、一定以上の収益がある場合に税負担が軽減されるケースがあります。詳細については、以下の記事をご覧ください。

参考:会社設立を考える個人事業主へ!法人化のメリットと注意点

各会社形態の特徴とメリット・デメリット

ここでは、各会社形態の特徴とメリット・デメリットについて解説します。それぞれの特徴を把握し、自身にとってどの会社形態が適しているのか判断しましょう。以下で詳しく説明していきます。

株式会社

株式会社は、株式を発行することで資金調達が可能な形態であり、社会的信用力が高いのが特徴です。この形態では、株主は出資額以上の責任を負わない有限責任となります。

しかし、設立時の手続きが複雑で費用が高いこと、また、運営においても株主総会や取締役会などの法的要件を満たす必要があるため、事務管理コストが増加します。大規模な事業や多額の資金調達が必要な場合には最適な選択肢です。

合同会社

合同会社は、設立費用が安く、運営が柔軟な形態として注目されています。この形態では、出資者が経営に直接参加でき、迅速な意思決定が可能です。

一方で、社会的信用力が株式会社ほど高くないため、大規模な取引先や金融機関との関係構築において制約が生じる場合があります。初期投資を抑えたい事業者や、少人数での運営を計画している場合に適した選択肢です。

合名会社

合名会社は、出資者全員が無限責任を負う形態であり、少人数経営や家族経営に適しています。無限責任とは、会社の債務が発生した場合に、出資者全員が自分の財産を使って債務を履行する責任を負うことを意味します。

そのため、信頼関係が重視される事業や、リスクを共有できる間柄での経営に向いています。設立費用が低く抑えられるのも特徴です。

合資会社

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員の両方を持つ形態で、リスクと責任をバランスよく配分することができます。無限責任社員は、経営に直接関与し、会社の全債務に責任を負います。

一方、有限責任社員は出資額の範囲内で責任を負うため、リスクを限定的に抑えたい場合に有効です。特定のプロジェクトや専門性の高い事業に適していることが多いです。

自分に適した会社形態の選び方

会社設立を検討する際、事業内容や規模、経営目標に応じて適切な会社形態を選ぶことが重要です。選択肢には、資金調達がしやすい株式会社、コストを抑えやすい合同会社、少人数経営に適した合名会社、リスク配分に優れた合資会社があります。それぞれの特徴を理解し、自分の事業に最も適した形態を見極めることで、スムーズな運営と長期的な成功が期待できます。

資金調達が必要な場合

資金調達を最優先に考える場合、株式会社が最適です。株式会社は株式を発行することで、多くの投資家から資金を集めることが可能です。

また、金融機関からの信用も高く、融資を受けやすい点が特徴です。特に、大規模な設備投資や広告宣伝費が必要な事業では、資金力が事業の成功に直結するため、株式会社の利点を最大限活用できます。ただし、設立費用や運営コストが高くなる点を考慮する必要があります。

コストを抑えたい場合

設立や運営にかかるコストを抑えたい場合は、合同会社が選ばれることが多いです。合同会社は登録免許税が安く、定款の認証が不要なため、設立にかかる初期費用を抑えられます。

また、株主総会や取締役会の設置義務がないため、運営にかかる手間やコストも削減できます。特に少人数で事業を始める場合や、初期の利益を再投資したい場合に適しています。

家族経営や小規模事業

家族経営や小規模事業の場合、合名会社や合資会社が適している場合があります。合名会社は、出資者全員が無限責任を負うため、強い信頼関係がある場合に有効です。

一方、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の双方を組み合わせることで、リスク分散と信頼関係を両立できます。これらの形態は、特に専門性の高い分野や、少人数で事業を運営する場合に適しています。

会社形態ごとの設立費用と運営コストの比較

会社形態によって、設立費用や運営コストに大きな違いが生じます。特に株式会社と合同会社は、その差が顕著です。株式会社では、定款の認証費用や登録免許税が高額となる一方で、合同会社はこれらの費用を抑えることができます。

また、運営コストも株式会社は株主総会や取締役会の運営に伴う経費が必要となるのに対し、合同会社はシンプルな運営が可能です。詳細については、以下の記事でご確認ください。

参考:会社設立にかかる費用は?必須費用から節約方法まで徹底解説

会社形態ごとの税務上の違い

ここでは、会社形態ごとの税務上の違いについて解説します。法人と個人事業主では税の種類や税率が異なります。また、損益通算の可否など適用される制度にも違いがあります。以下で詳しく説明していきます。

法人税率や所得税の違い

法人税率は、会社形態や利益額によって異なりますが、一般的に株式会社や合同会社には同じ税率が適用されます。

一方、個人事業主では累進課税が適用されるため、所得が増えるほど税率が高くなります。また、会社形態によっては役員報酬や給与を経費として計上できるため、税負担をコントロールする手段も異なります。

損益通算の可否

損益通算は、会社形態ごとに異なる適用範囲があります。株式会社や合同会社では、一定条件下で赤字を翌期以降に繰り越すことが可能です。

一方、合名会社や合資会社では、出資者が個別に損益通算を行う場合があります。この違いは、事業が赤字に陥った際の財務戦略に大きな影響を与えます。

株主配当と役員報酬の扱い

株式会社では、株主への配当と役員報酬が明確に区分されています。配当は法人税後の利益から支払われるため、二重課税が発生する可能性があります。

一方、役員報酬は法人税計算上の損金として認められるため、税負担を軽減する効果があります。これらの違いを考慮し、最適な形態を選択することが重要です。

会社設立時に専門家に相談するメリット

会社設立は、事業を始める上で重要なステップです。しかし、法律、税務、手続きの知識が不十分な場合、予期せぬトラブルやコスト増加につながる可能性があります。このようなリスクを避けるために、専門家に相談することが推奨されます。

税理士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することで、煩雑な手続きをスムーズに進めることができるだけでなく、法的トラブルを未然に防ぐことができます。

具体的には、会社設立時に必要な定款の作成や認証手続き、税務署への届け出、登記申請書類の準備など、専門知識を要する業務を一括して任せることができます。また、どの会社形態が事業に最適であるかをアドバイスしてもらえるため、将来的な経営戦略を考慮した上での最適な選択が可能になります。

さらに、専門家に依頼することで、税務面でのメリットを最大限に引き出せる場合もあります。例えば、法人税の軽減措置や経費計上のルールを正確に理解し活用することで、節税効果を得ることができます。また、事業開始後の税務相談や決算処理も含め、長期的なパートナーシップを築くことが可能です。

詳細な内容については、以下の記事も参考にしてください。

参考:会社設立にかかる費用は?必須費用から節約方法まで徹底解説

会社設立後に必要な手続きと注意点

会社設立が完了した後も、事業運営を始めるためにはさまざまな手続きが必要です。また、これらの手続きを適切に行わないと、行政指導やペナルティの対象になる場合があるため注意が必要です。以下に、設立後に必要な主な手続きと注意点を解説します。

銀行口座の開設、税務署への届出

まず、会社名義の銀行口座を開設することが重要です。この口座は、事業取引や給与振込、税金の支払いなどに使用されます。銀行口座開設時には、会社設立時に取得した登記事項証明書や印鑑証明書が必要になります。

また、取引先からの信頼を得るためにも、事業に関連した明確な事業計画書を提出する場合があります。

次に、税務署への届け出が必要です。具体的には、「法人設立届出書」を提出し、法人番号を取得する必要があります。この届出書には、定款のコピーや登記事項証明書、設立趣意書などが添付書類として必要です。

また、法人税、消費税、源泉所得税に関する届出も同時に行う必要があります。これらの手続きは、税務署からの問い合わせや税務調査を防ぐためにも、早めに対応することが望まれます。

社会保険や労働保険の手続き

従業員を雇用する際には、社会保険や労働保険への加入手続きが欠かせません。社会保険においては、健康保険と厚生年金保険の加入が法律で義務付けられており、会社を設立した後、5日以内に管轄の年金事務所へ「新規適用届」を提出する必要があります。

また、従業員がいる場合には、雇用保険や労災保険への加入手続きも行わなければなりません。これらの手続きは、労働基準監督署やハローワークでの届け出によって完了します。

さらに、給与の支払いに関しても、源泉所得税の計算と納付が必要です。給与支払い時に源泉徴収を行い、納付期限までに税務署へ納めることで法令を遵守します。この手続きを怠ると、追徴課税や罰金の対象となる可能性があるため注意が必要です。

社会保険や労働保険の手続きは複雑であるため、社労士などの専門家に依頼することで、手間を省きつつ正確な処理を行うことができます。専門家に依頼することで、従業員にとっても安心感のある職場環境を提供することができます。

まとめ

本記事では、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類の会社形態を中心に、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説しました。会社設立には多くの手続きが伴いますが、事業の成功には最適な会社形態の選択と、法令を遵守した正確な手続きが不可欠です。

FLAGSグループは、名古屋市で50年以上にわたり中小企業の成長を支援してきた実績を持ち、会社設立に関するあらゆるサポートを提供しています。税理士、司法書士、社会保険労務士などの若手専門家が集結し、税務署や各自治体への開業届出、労務関係の手続きなど、法人設立に必要な業務をワンストップでサポートします。

また、設立後の税務対策や相続税対策についても、丁寧にサポートいたします。法人化を検討中の方や、事業の拡大を目指している方は、ぜひFLAGSグループにご相談ください。将来の成長を見据えた適切なアドバイスと、手厚いサポートをご提供します。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。