COLUMN経営コラム

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会社設立の定款とは?記載内容や電子定款の違いを徹底解説

投稿日:2024.12.24

更新日:2024.12.24

経営

今回は、定款に関するお話をします。会社設立に必要な定款ですが、その中に記載すべき内容と構成、電子定款と紙定款の違い、定款作成に掛かる費用、定款作成のルールと注意点、定款作成で専門家に依頼する方法などを解説します。この記事を読めば、定款に関して分からないこともなくなるでしょう。

今回執筆する記事も各分野のプロフェッショナルが在籍する団体が担当しております、内容には信憑性がありますから、安心してお読みください。

定款とは?その意義と役割

まずは、定款について基本的な知識をまとめましょう。

定款の役割と法的な位置づけ

定款は会社の基本的な規則が記された書類です、会社の憲法と呼ぶ人もいますが、会社運営をしていく上で欠かせない書類になっています。

法人となった会社は必ず定款を作成しなければいけません、これは会社法上によるルールです。

なぜ会社設立に定款が必要なのか?

会社設立で定款が必要な理由は、まず法人格を得るためです。

会社が法人格を得るためには、会社のルールの詳細を記した定款を作成し、登記しなければいけないのです。何をする会社なのか、事業内容はどうなっているか、できることは何かなどを定款に定めることで、はじめて法人格を取得できます。

次は会社を統率するためです。会社法でも会社統率ルールは定められているのですが、各会社の事情までは考慮されていません。会社ごとに必要なルールや取り決めがあり、それを具体的に定款で定めることにより、会社の統率がしやすくなります。

個人事業主にはない法人化の際の定款の重要性

個人事業主は定款を定める必要はないのですが、法人化する会社に必要なことは上記の通りです。

法人化すると、法人口座を持てるようになり、社会的にも信用されやすくなって、融資の審査にも通りやすくなります。そのためにこそ、定款を作成し、法人化しておくことが重要なのです。

参考:会社設立の目的一覧!法人化で得られる戦略的メリットを解説

定款に記載すべき内容とその構成

定款には何を記載し、どのような構成にすればいいのかを説明しましょう。

絶対的記載事項とその具体例

定款には「絶対的記載事項」というものを記載しなければいけません。これは記載しなければ、定款が無効になってしまうと言う内容です。具体的には次のようなことを記載します。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 資本金額(出資財産額)
  • 発起人の氏名又は名称及び住所

目的については、2、3例を挙げてみると、「飲食店及び喫茶店の経営」「通信販売業務」などとなっています。

商号は会社名です。

本店の所在地は説明の必要がないでしょう。

資本金額(出資財産額)とは、会社を設立する際の出資額や資金の総額などです。

発起人については全員分を記載します。発起人とは、資本金の出資や定款の作成など、設立手続きを行った人です。

任意的記載事項を活用するメリット

定款には「任意的記載事項」を記載することもあります。これは記載するかどうか当事者が決められる内容です。

任意的記載事項は定款に記載しなくてもいいのですが、記載するメリットがあります。後で手間が軽減できるのです。

最初に事業年度や定時株主総会の招集時期、取締役などの人数、役員報酬の決定方法、 配当金に関する事項などを決めておくと、後であれこれ考えずに済みます。実際の場面が来たときも、慌てる必要がありません。

会社運営における定款の活用方法(株式、役員、事業年度の設定など)

会社運営においても定款は非常に役に立ちます。

発行可能株式総数を定款に定めておくと、資金調達が必要なときに株主総会無しで取締役会決議をもって、その上限まで株式を発行することができます。 これで会社が運営しやすくなるでしょう。

法人口座を開設するときにも利用できます。「助成金・補助金の申請や行政機関への申請」を行うときも定款が必要です。

定款には役員に関する事項も記載できるので、定めておけば役員管理もしやすくなります。定款で事業年度も決められます。

参考:会社設立の登記手続き完全ガイド!必要書類や費用、流れを解説

電子定款と紙定款の違いとメリット・デメリット

定款には電子定款と紙定款という2つの種類があります。ここでは、電子定款のメリット・デメリットを紹介しましょう。

電子定款とは?紙定款との違い

電子定款は電子文書形式(PDF形式)で作成された定款です。

電子定款は紙定款のような印刷の必要もなく、オンラインで認証を受けられます。

電子定款の作成、登録手続きは紙定款の場合と異なるので、事前に確認しておいてください。

電子定款のメリット(印紙税免除など)とその節約効果

電子定款のメリットをいくつか挙げてみましょう。

電子定款を作成するときは、紙定款作成時のように印紙税を支払う必要がありません。印紙税代4万円を節約できるのです。

4万円くらい何だという人もいるかもしれませんが、会社設立時には何かと費用がかかるものです。それだけに少しでも節約できるものは節約したいでしょう。

すでに説明したことではありますが、オンライン申請ができるのも電子定款のメリットです。申請手続きもカンタンです。忙しい現代人、オンライン上でパソコンなどから申請ができれば、助かります。

電子定款の場合、発起人が複数人いても、全員分の印鑑証明書を準備しなくても大丈夫です。これで手間が省けるでしょう。

電子定款作成に必要な機材や準備事項

電子定款作成におけるデメリットとして、必要な機材を揃えて、準備をしておかなければいけません。その内容を見てみましょう。

まず、必要な機材は次のようなものです。

  • 電子証明書付きマイナンバーカード
  • 電子署名ソフト
  • ICカードリーダー

電子定款に必要なのは通知カードではなく、プラスチック製の電子証明書付きマイナンバーカードです。まだ作成していない方は少し時間が掛かるので、早めに申請しておきましょう。

電子定款の作成はWordやGoogleドキュメントでできます。これをPDFファイルに変換するのですが、申請の際にPDFファイルに電子署名する必要があります。そこで必要になるのが電子署名ソフトです。

電子署名は押印やサインの代わりの役割を果たします。「この定款が正式なものであり、かつ改ざんされていない」ことを証明する印になります。

ICカードリーダーはマイナンバーカードの読み取り用ですが、マイナンバーカードに対応していないものでは意味がありません。必ずマイナンバーカードを読み取れる機器を準備してください。

これらの機器を全部揃えるとなると、コストが掛かります。紙の定款作成よりもコストが高くなる場合も多いので、この辺が電子定款作成のデメリットでしょう。

参考:会社設立にかかる費用は?必須費用から節約方法まで徹底解説

定款作成に掛かる費用と節約方法

定款作成には一定の費用がかかるので、その内容を確認しておく必要があります。以下で費用の詳細を説明しましょう。

定款認証手数料と印紙税の内訳

作成した定款は公証役場で認証してもらわなければいけませんが、その際に認証手数料が掛かります。認証手数料は紙定款と電子定款で同じですが、電子定款には例外規定があります。その説明もしましょう。

☆紙定款認証手数料

紙定款の認証手数料は資本金の額によって変わります。以下の通りです。

資本金額定款の認証手数料
100万円未満3万円
1,000万円~300万円未満4万円
そのほか5万円

☆電子定款の認証手数料

資本金額定款の認証手数料
100万円未満3万円
1,000万円~300万円未満4万円
そのほか5万円

電子定款に関しては、起業支援という方針から、特定の条件に該当すると、認証手数料が1万5千円に引き下がることになっています。特定の条件とは以下のようなものです。

  • 資本金の額が100万円未満
  • 発起人は個人で、しかも3人以内
  • 発起人が受け継ぐ
  • 取締役会は設置無し

次は印紙税の内訳です。すでに説明しましたが、電子定款には印紙税は不要ですから、その分の節約ができます。では、紙定款の場合はというと、以下のようになっています。

  • 紙定款は印紙税法上の取り決めにより課税文書として扱われる
  • 紙定款の印紙税代は4万円

紙定款は印刷・製本する必要がありますが、そこに4万円分の収入印紙を貼ることになります。

電子定款を活用した節約方法

電子定款では、収入印紙を貼る必要はありませんから、印紙税代4万円を節約できます。

また、前項で説明した特定の条件に当てはまれば、認証手数料も安くなります。

費用を抑えて自分で作成するコツ

定款の作成方法は自分で行うか専門家に依頼するかです。

自分で作成できれば、依頼費用がかからない分、節約ができます。

ただ、自分で作成するのは難しいのではと思う方もいるでしょう。それなら、マネーフォワードクラウド会社設立などのソフトの利用がおすすめです。定款を安心・カンタン・無料で作成できるソフトですから、使ってみてください。

参考:会社設立にかかる費用は?必須費用から節約方法まで徹底解説

定款作成時のルールと記載方法の注意点

定款を作成するときにはルールと注意点があります。以下で解説しましょう。

誤記や曖昧な表現を防ぐ記載方法

定款には誤記や曖昧な表現を記載せず、明確かつ具体的な表記にしたいところです。誤記は問題外ですが、曖昧な表現も誤解の元です。名詞、接続詞、動詞などを誰にでも分かりやすく表示し、理解されるようにしておく必要があります。

また、定款には省略表現は使えません。株式会社を(株)とも表現できないです。あるいは、住所を記載するときに、番地をハイフンで囲むこともNG。「東京都〇〇区〇〇丁目〇番地〇号」というように正式表記をしなければいけません。

公証役場での定款認証における注意事項

公証役場で定款認証を受ける場合は、注意点があるので、確認しておいてください。

まず、定款認証を受ける際は、公証役場への予約が必要です。ぶっつけ本番で行っても受け付けてもらえませんから、注意しましょう。

定款認証を受けられるのは管轄の公証役場でのみになります。管轄外では受け付けてもらえません。

作成した定款の内容に不備があると、認証がされないことがあります。公証役場での認証手続きに行く前に、今一度内容を確認しておきましょう。

電子定款はいったん申請すると、内容の修正・変更は不可です。後から思い直して変えようと思ってもできませんから、この点もご注意ください。

定款変更が必要な場合の手続き

定款変更ともなると、費用も手間も掛かるので、なるべく最初に完成型を用意し、変更の必要がないようにしておきたいところです。

それでも、変更せざるを得なくなったら、次のような手続きを踏みます。

  1. 株主総会で特別決議を経る(議決権の過半数の株主が参加すること、参加した株主の2/3以上の賛成を確保できること)
  2. 変更登記申請を行う

定款変更のたびに株主総会を開かなければいけないので、何度も変更するようなことがないようにしましょう。

変更登記申請が必要な項目は決まっています。絶対的記載事項だけでなく、相対的記載事項や任意的記載事項が含まれることもあるので、よく確認してください。

参考:会社設立の登記手続き完全ガイド!必要書類や費用、流れを解説

定款作成をサポートする専門家と相談方法

定款を自分で作成することはできますが、慣れないことで大変なこともあるでしょう。それなら、専門家に依頼するのも1つの方法です。そこで、そのような専門家に相談する方法を解説しましょう。

定款作成をサポートする専門家(司法書士・行政書士)の役割

定款作成をサポートする専門家とは、司法書士や行政書士などです。

ともに定款の作成と認証を行えます。

専門家に依頼するメリットと相談時のチェックポイント

定款作成を専門家に依頼するメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 正確かつ法律に則った定款を作成できる
  • 時間と手間が大幅に節約できる
  • 電子定款に対応しているところが多く、印紙税代を節約できる
  • 専門家のアドバイスを受けながら定款作成ができる
  • アフタフォローを受けやすい

次に、定款作成を専門家に依頼する際のチェックポイントを見ておきましょう。

  • コストパフォーマンス
  • 電子定款作成に対応しているか
  • アフターサポートがどうなっているか
  • 専門家の人柄
  • 相性

無料相談窓口やサポート期間の活用

定款作成の無料相談窓口もあるので、必要に応じて利用してみましょう。

例えば、次のような窓口です。

  • 公証役場
  • 商工会議所
  • 自治体の創業支援センター
  • 司法書士事務所
  • 行政書士事務所

司法書士事務所や行政書士事務所の場合、相談料が有料な場合があります。

定款作成では定款の作成支援ツールも利用できますが、これなら48時間以内の手続きも可能。サポート期間が48時間ということであり、定款作成支援ツールで作成した定款だけが対象です。

参考:会社設立の流れを解説!必要な手続きと準備すべきポイント

まとめ

今回は、会社設立の際に必要になる定款作成について説明しました。

十分にご理解頂けたでしょうか。定款作成のポイントを詳しく取り上げたので、これでしっかりできるのではないでしょうか。もし定款の作成が自分の手に余るようなら、専門家に依頼することもできます。

いずれにしろ正確で適法な定款を作成して、会社の運営を軌道に乗せてください。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。