COLUMN経営コラム

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クラウド会計ソフトへの移行で気をつけるべきこと

投稿日:2021.11.16

更新日:2024.07.25

経理クラウド

経営者や経理担当者で、クラウド会計ソフトへの移行をご検討の方のお悩みとして

  • どのクラウド会計ソフトを選択するべきか
  • いつ、クラウド会計ソフトに移行すればよいのか
  • 会計ソフトを導入するための準備は何をすればいいか

といったことがあげられます。これまでの記事では、クラウド会計ソフト導入の利点や、各社のサービス・価格比較を行ってきました。本記事では、実際のクラウド会計ソフト導入についてより実践的な内容をお話します。注意すべき点や移行及び導入時の考え方をていねいに解説していますので、クラウド会計ソフトへ移行・導入する前に、ぜひ、お読みください。

クラウド会計サービス・プランの選択

現在、国内で提供しているクラウド会計システムは大小合わせると数え切れないほどあります。

その中でも代表的なのは、

  • マネーフォワード
  • freee
  • 弥生会計オンライン

の3社。また、各社のサービスには色々なプラン・コースがあります。「正直、どれを選んでよいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか?クラウド会計サービスやプランを選ぶ際に気をつけておきたい点は3つです。

① 税理士が対応しているサービス

② 事業規模や将来の計画に合ったプラン

③ 現在の会計システムとの互換性

以下、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

① 税理士が対応しているサービス

別段の事情がなければ、顧問税理士が推奨しているまたは対応可能なサービスを選びましょう。クラウド会計を導入する大きなメリットの一つは、税理士とデータを共有できることです。これによってよりタイムリーな情報提供やアドバイスを受けることができます。ほとんどの税理士は上記の3大サービスのいずれか(またはこれらのうち複数のサービス)に対応していると考えられます。

② 事業規模や将来の計画に合ったプラン

クラウド会計システムのサービスは、事業規模(従業員数など)に応じていくつかのプランに分かれています。各サービスのHPを見ると「従業員◯◯名までの事業者様向け」などの簡単な説明がありますが、プラン選択には顧問税理士の意見も聞いておきたいところです。

例えば、従業員数が少ない会社でも複数の店舗を経営しているなど、安い料金のプランではサービス内容が不十分な場合があるからです。また、会計システムを何度も変更するのは大変ですから、会社の将来も見据えたサービス・プランの選択が必要です。

③ 現在の会計システムとの互換性

クラウド会計システムを導入する際の「互換性」には2つの意味があります。ひとつは、従来の会計システムからデータをスムーズに移植できるか。上記3大サービスでは、他社の会計システムからのデータ取り込みに対応しています。

中でもマネーフォワードはデータ取り込みの精度が高く、取り込み方も簡単です。もう一つの互換性は、現在の会計システムとの操作性の違いです。特に、自社で会計処理を行っている場合には気になるところでしょう。実際には、ある程度操作が異なるのは仕方ないので、慣れるしかありません。

一般的な会計ソフトと最も操作性が異なるのはfreeeです。もともと会計の知識がない方用のサービスですので、簿記・会計の知識がある方にとっては違和感のある作りとなっています。この他、もちろんコストパフォーマンスの問題もあります。

クラウド会計システムの料金については、こちらの記事をご参照ください。

いつソフトを移行すればよいのか|タイミング

クラウド会計ソフトへの移行作業は、データの互換性があればそう難しいものではありません。しかし、会計ソフトを移行するというのは単にデータを乗せ換えるだけではありません。それなりに準備の期間や労力もかかります。したがって、いつ会計ソフトの移行を実行するかというのは結構大事な問題です。以下、ケース別にどのようなときに移行するべきか、移行する場合の注意点などを詳しく解説します。

サポート終了の場合

使用中の会計ソフトのサポート期間が終了した場合は、新しいクラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。特にパッケージ型の会計ソフトはサポート期間が決まっており、通常ソフトはバージョンアップが必要ですが、バージョンアップにもお金がかかるため、利用中の企業ではサポート終了を契機に会計ソフトの入れ替えを検討する先も多い傾向があります。

また会社の成長や業務内容の変化で、利用中の会計ソフトに対して、新しい機能(高度な取引データの管理や分析等)の追加やより細かいサポートが必要になることがあります。しかしソフト提供会社のサポート体制にも限界があり、利用企業が求めるような機能の追加やサポートが得られない場合は、業務に支障を来して徐々に不満が蓄積してきます。

そこでサポートの終了を契機に、新しい機能やサポートが期待できるクラウド会計ソフトを求めて、利用者は新しい会計ソフトへの移行を検討し始めるのです。

会社規模や業務内容の変化があった場合

会社の事業規模や業務内容に変化があった場合、クラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。会社の事業規模の拡大とか業務内容の変化があった場合、働く従業員の数も増えて取引先との取引量も増加するため、会計面でもより効率的な経理作業が求められるようになります。

その変化に対応するため、従業員の勤怠管理など他の業務ソフトとも確実に連携して、会計処理を軽減してくれるクラウド会計ソフトの導入が必要になってきます。また個人事業主が、法人化しなくても、事業拡大して課税事業者になったようなケースでは、取引件数が増えて会計処理も複雑になる可能性が高いです。

課税事業者になれば、新たに消費税処理が課せられ、税務申告書の作成や税金の計算が必要になってくるので、クラウド会計ソフトを導入すれば複雑な経理業務でも簡単に処理できるようになります。

迅速な経営状況の把握を求める場合

経営者が迅速な経営状況の把握を求めるようになってきた場合は、クラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。会社が大きくなってくると、経営者は迅速な意思決定のため、リアルタイムでの経営・財政状況の把握を望むようになります。

そのためには月次決算の早期報告が重要ですが、導入中の会計ソフトの機能によっては締め時間に差があり、それが最終的に月次報告の早さに違いとして表われてくることもあるでしょう。それでは経営者の経営判断に大きな違いが生じかねないので、現在利用中のソフトからより高機能なクラウド会計ソフトへ移行することで、月次決算の早期報告が可能になります。

異業種への進出やM&Aに伴い業種・業態が変化した場合

会社が異業種に進出したり、M&Aを行って他社と合併したりしたことに伴い、業種・業態が変化した場合なども、クラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。

業種や業態が変わることで会計ソフトに求められる機能も大きく変化することがあります。そのタイミングで、業種・業態に特化・最適化されたクラウド会計ソフトへ乗り換えることで、経理処理の効率を最大にすることができます。

経営方針が変更になった場合

事業が成長して会社の経営方針も変更された場合、会計ソフトに求められる機能も大きく変わってくるので、そのときもクラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。会計には、金融商品取引法、会社法、税法等できちんと処理ルールが定められた「制度会計」と自由なフォーマットや内容で行える「管理会計」があります。

制度会計のもとでは対外的に公表が必要な財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)が作られますが、経営指標を得るための管理会計では作成の義務もありません。そのため会社が最初に会計ソフトを導入した際には、制度会計だけに沿ったソフトを導入することが多いです。

しかし会社が成長して経営や会計処理も複雑になってくれば、制度会計だけでなく、迅速な経営判断のため管理会計に基づく経営指標も必要になってくるので、その機能を持つクラウド会計ソフトへの移行が求められるようになります。

法制度改正へ速やかに対応したい場合

法制度改正があって速やかに対応したい場合は、クラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。法制度改正への対応に係り、インストール型の会計ソフトでは、毎回追加料金を払って最新のソフトを購入して、会社で利用中のパソコン1台ずつに自社で設定していくというややこしい作業があります。

一方クラウド会計ソフトなら、サービスの提供先が法制度改正へのアップデートに常に対応してくれるので、つど自社で対応する必要もなく追加の費用も発生しません。そのため、法制度改正のタイミング(最近だと電子帳簿保存法)でインストール型からクラウド型に会計ソフトを乗り換える会社もかなり増えています。

その他の外部ツールとの連携をしたい場合

ワークフローや請求書発行、経費申請、支払管理など、業務上の他の主要な外部ツールと連携したい場合もクラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。会社の会計システムは上記の例のような様々な外部ツールに係る業務と密接につながっています。

もし業務ごとに全く異なるシステムやソフトを使っていると、同じ会社内なのに連携が取れず、各入力作業に手間がかかるとか、ときにはヒューマンエラーのリスクまであります。その点、他の外部ツールと簡単に連携が取れるクラウド会計ソフトへ移行できれば、これまで会社が抱えていた様々な問題点も解消でき、業務の効率化・省力化が一層進むことでしょう。

法人成りする場合

個人事業主から株式会社・合同会社等へ法人成りする場合は、クラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。個人用と法人用の会計ソフトでは企業形態や税制面で機能や内容が異なっているし、法人成りすれば提出すべき財務諸表の要件や作成する書類も変わってきます。

また法人成り後は、法人向けの税務処理が必要になるため、個人ソフトのままでは処理不可です。そこでクラウド会計ソフトに移行すれば、法人になって業務規模が拡大したり、複雑な会計処理を求められたりするようになっても、スムーズに会計処理や税務処理ができます。引いては会計データの適正な情報管理や活用につながっていくのです。

使用中のソフトが使いづらいと感じた場合

使用中の会計ソフトが使いづらいと経営者や経理担当者が感じたときはクラウド会計ソフトへの移行のタイミングです。使いづらいとは、具体的に言えば「ソフトの操作性が悪くて入力がしづらい」「データの管理が複雑で必要なデータの出力に時間がかかる」「顧問税理士とのデータ共有ができない」などの状況をさします。それらの問題点は適切な機能を持ったクラウド会計ソフトへの移行で解決可能です。使いやすい会計ソフトの導入は、経理業務の品質向上や顧問税理士との連携強化にもつながります。

繁忙期は避ける

会計システムのデータ移行は多くの場合、税理士などのサポートを受けながら行います。その場合、データ移行における会社の負担はほとんどありません。しかし、システム変更によって仕事の流れややり方が変わる可能性があります(何も変わらないのならばクラウド会計ソフト導入の意味がないとも言えます)。多少の混乱は避けられず、混乱を最小限に抑えるためにも準備期間が必要です。クラウド会計ソフト導入は繁忙時を避けて行うのが無難でしょう。

決算時に行うか、決算時期を外して移行するか

クラウド会計ソフト移行のタイミングを、決算を境として行うか、じつは微妙な問題です。それぞれ、メリット・デメリットがあります。

 メリットデメリット
決算時に移行キリがよく、分かりやすい。 年次決算後の数字はその後変更することがないため、会計上の齟齬が生じにくい。  決算の確定は通常決算日から1ヶ月以上後になるため、完全な移行はその後となる。 決算とシステム移行が重なり、経理の現場が忙しくなる可能性がある。
それ以外の時期に移行  決算日にこだわらなければ好きな日を選べる。 万一、システム移行で問題が生じても年次決算が遅れたりする危険を防ぐことができる。会計システム移行と決算がズレるため、キリが悪い。 しっかりスケジュール管理を行わないと、移行にだらだらと長期間をかけてしまいがち。

一長一短で、どちらがよいと決めつけることはできません。各社各様と言っていいでしょう。クラウド会計ソフト導入のタイミングについては、上記メリット・デメリットを理解した上で、顧問税理士とよく相談して決定してください。

クラウド会計ソフト導入の準備|心構え

上にも書いたように、会計データを移行するだけなら、クラウド会計ソフトの導入は多くの場合、ほとんど手間がかかりません。もしも導入するクラウド会計ソフトがマネーフォワードならば、データ移行に1日もかからないでしょう。

しかし、せっかくクラウド会計ソフトを導入するのですから、その効果を最大限発揮して業務効率化や経営改善につなげたいものです。そのためには、明確な目標・ビジョンを持って計画的にクラウド会計ソフト導入をすすめる必要があります。クラウド会計ソフト導入にあたっての実務的な準備については、個別の事情もありますのでここでは触れません。顧問税理士に相談するようにしましょう。

明確なビジョンを持って取り組もう

クラウド会計の効果を最大限発揮するには、導入後の改善点(クラウド会計ソフトに何を期待しているのか)をはっきりと意識し、導入の目的を明らかにする必要があります。例えば以下のようなビジョンが考えられるでしょう。

ビジョン①:決算・月次決算・定期決算を早くしたい

  • 毎年、申告期限ギリギリに資料を税理士に提出して困らせている。税金の計算ができると思っていたより多額でびっくりすることもある。
  • 月次の資料をまとめて税理士に渡すのに時間がかかり、税理士や担当者と話すときはいつも、数ヶ月前の数字について報告を受けている。

こういう経営者の方、結構おられると思います。クラウド会計システムを上手に使えば、劇的な改善が可能です。預金やクレジットカードの情報はほとんど自動的に会計システムに反映されますし、現金精算の経費についても、スキャンする(またはスマホで読み取る)だけです。なるべく早い段階で税理士と会計データを共有できれば、節税面でも経営面でもより有効なアドバイスを受けられるようになります。そうなれば、顧問税理士や担当者と会って話をするのが楽しみになってくるでしょう。

ビジョン②:抜本的な業務・経営の改善を図りたい

  • 労働者名簿はこっちのエクセル、請求書はこのフォルダに「◯◯社:◯年◯月分」とファイル名のルールを決めて入れている。いざ探すとなると大変。ファイルの場所を熟知しているベテラン社員がいなくなったら、どうなってしまうのか。
  • 営業社員の経費精算が遅くて精算書の書き方もなかなか統一できない。経理社員は締日にいつも残業を強いられている。

このような、危険かつ生産性を下げる状況はなるべく早期に改善すべきです。クラウド会計システムの導入によって、様々な情報を一元化できます。経費精算機能は、複数の営業社員を抱えている場合、極めて重要です。また、労務関係の機能では、労働者名簿や各人のマイナンバー・勤怠情報の管理と給与計算を会計データと連動できます。

これらによって、特に管理者・経営者の生産性は飛躍的に向上します。「◯◯ってどこにあるんだっけ?」この質問をしなくてもよいというだけで効果が実感できるでしょう。なお、経営改善の中のコスト削減という面で言えば、クラウド会計ソフトの導入は経理職員のリストラにも繋がります。クラウド会計ソフト導入に際し、経理担当のリストラを予定するのであれば、当人に対するケアも必要です。

注意していただきたいのは、これらクラウド会計ソフトの効用を充分に発揮するためには「ただ導入する」だけでは足りないということです。「口座とクレジットカードのデータを連動させたから、税理士もあまり資料の催促をしなくなるだろう」でもいいでしょう。いいでしょうが、あまりに寂しい。それでは税理士の負担を減らすだけになってしまいます。

ただ楽をするためだけではなく、業務効率化や経営の改善をイメージしてクラウド会計ソフト導入をすすめることが大切です。

クラウド会計ソフトの導入は、計画的に!

上記のように明確なビジョンを持てたら、次に計画が重要となります。クラウド会計ソフトの導入は、おおむね次のように進めます。

クラウド会計の導入チームを作る

経理担当者を中心に各部署から有能なメンバーを集めてチームを作ります。チームリーダー(経営者自身でも良い)を決めて、意見を集約できるようにします。チームのアドバイザーとして税理士事務所の担当者を招聘(しょうへい)できればなお良いでしょう。このとき、経営者からメンバーに向け、「クラウド会計ソフト導入で会社の何を変えたいのか」といったビジョンをしっかりと提示し、メンバー間で共有する必要があります。

導入するクラウド会計ソフト・プランの選定

結成されたチームで導入するクラウド会計ソフト及びプランを選定します。選定に際しては、新しく導入する会計ソフトの目的を明確にした上、自社にあった製品を探します。たくさんあるクラウド会計ソフトの中で、機能や費用、サポート内容などを比較しつつ、導入後も継続的に利用できるソフトを選ぶことが望ましいです。

チームアドバイザーとなっている税理士事務所の担当者にも意見を聞くことも忘れてはなりません。選定にあたっては、無料トライアルやフリープランもあるので、チームで試して使用感をチェックしてみることも大事です。

過去データの保存方法を検討する

会社が使っていた既存の会計ソフトの中にある過去データの保存方法を検討しましょう。過去の会計処理で発生したデータを保存しておくと後で色々な目的に利用できます。ただしデータ移行には時には労力を伴うこともあるので、適宜適切な判断が必要となります。過去データを移行により新しいソフトに保存する場合、過去のデータと比較できるので、様々な分析に使えます。

また新しいクラウド会計ソフトに過去データを移行することで、これまで使用してきた会計ソフトを解約して維持費を節約できたり、パソコンの容量も節約できたりとメリットが多いです。。一方、過去データを移行しない(引継がない)で入れ替えすることもできます。その場合、切りの良い新年度の期首から新しいクラウド会計ソフトを使い始めるのが良いでしょう。

なお、過去データを移行しないなら、データをCSVで残す、これまで使用中のPCの会計ソフトに残しておくなどの方法を取っておくと、必要に併せて後で活用することもできます。

スケジュールの策定

会計ソフトの移行は、「◯月までに」といったあいまいな日程の設定に向いていません。末日締めの会社なら「◯月1日より移行する」とはっきりゴールを定めましょう。ゴールの日付を決めたら、そこから逆算して必要な準備の日程を整えます。

計画の発表

クラウド会計ソフト導入計画を全社員に知らせます。クラウド会計導入による利便性の向上、効率性アップをていねいに説明し、そのための一時的な負担(新しい業務のやり方への習熟の必要)などに対して理解を求めましょう。

計画推進

クラウド会計ソフト導入(そのための準備)を始めます。メンバー全員が最初に共有していた「何のためにクラウド会計ソフトを導入するのか」という視点を忘れずに行動するようにしましょう。

研修・教育

導入予定のクラウド会計ソフトは経理担当者が毎日のように頻繁に利用するシステムであるため、すぐに慣れる必要があります。会計ソフトの導入前に、サービス提供会社からも支援を得て、インターフェイスの使用感、機能の確認などを実際に経理作業に携わる従業員が試して操作に慣れておきましょう。

またクラウド会計システム導入によって、経費精算や勤怠管理等、他の外部ソフトの操作方法に変更がある場合もあります。こうした変更・新しい業務のやり方についても、事前に十分時間を確保して関係する従業員に周知徹底します。経理担当者はもちろん、他の業務に携わる社員にも必要があれば研修や教育を行い、システム移行後にトラブルが起きないよう十分対策する必要があります。

テストを経て、本格導入

有名ないくつかのクラウド会計ソフトは、すでに多くの会社で導入され一般的に使用されている完成度の高いシステムですが、それでも自社に本格的に導入する前にはテストをすることは必要です。いくら信頼性の高い会計ソフトと言っても、テストもせず導入した場合、万が一失敗したら、事業や業務に甚大な被害を与える恐れがあります。

ここは余裕のある計画を立てて、テストを実施して慎重に導入準備を進めていくことが肝心です。その際も、旧システムから新システムへいきなり移行するのはリスクが大きいので、テストを行いつつ、同時に数ヶ月程度の並行運用を行うことをおすすめします。そして導入後も特段のトラブルが発生しないことを見極めたのち、本格的に新しい会計システムへと切り替えていきましょう。

会計ソフトを入れ替える際の注意点

クラウド会計ソフトへ入れ替える際の注意点は以下の4つです。

移行時のメリット・デメリットを明確にする

旧の会計ソフトをクラウド会計ソフトへ入れ替えるときには、メリット・デメリットを明らかにした上で納得のもと、移行しましょう。

【主なメリット】

  • インストール不要でネット環境とパソコン・スマホ等あれば導入後にすぐに始動できる
  • 法律や税制等の改正に対するバージョンアップの自社対応が不要
  • データの共有が容易なため、営業職や管理職などがオフィス内外で自由に仕事ができる
  • データの連携がスムーズなため、会社内の他部門の従業員、顧問の会計事務所等とも連携が簡単でコミュニケーションの手間が大幅に省ける
  • 自社にあった適正なソフト・プランが選べて、業務量の増加に合わせて柔軟に機能を拡張できたり、運用コストを節約できたりする
  • 常に最新のセキュリティを利用できるため安全にデータを管理できる

【主なデメリット】

  • クラウド型ソフトは導入に際してネット環境が必要で、プラン代、通信料等のラニングコストがかかる
  • 会計ソフトによっては自社の既存システムと連携できない場合がある
  • 通信環境によってはネットがつながりにくくなり入力状況が影響を受ける場合がある
  • 顧問税理士や会計事務所がクラウド会計に対応していないと導入しにくい

既存システムからのデータ移行

既存の会計システムからクラウド会計ソフトへの移行では、過去データをどのように乗り換えるかという問題が発生します。具体的なデータ移行手順についてはこの章では解説を省略しますが、会計ソフトは、製品によってデータの形式やインポート手順が異なることがあります。そのため事前に、乗り換えの手順、移行するデータ範囲等をしっかり把握しておくことで、移行作業がスムーズに進みます。

事前に移行手順を確認して、必要なデータを整理し各種設定を済ませておくことで、過去データの損失などを防ぎつつ、スムーズにデータ移行を完了できるのです。

移行サポート体制の確認

クラウド会計ソフト等、新しいソフトウェアに移行する際には、操作や設定に不慣れな面、次々と疑問点が生じたり慣れない作業で思わぬトラブルが発生したりすることもあります。その際、十分な移行サポート体制があれば、問題が発生しても迅速かつ適切な対応が得られ、乗り換え時の不安を減らすことも可能です。

一方サポート体制が不十分だと、問題解決に時間がかかり、業務に支障が出てくることもあります。問題の発生や疑問があった場合、すぐに電話・メール・チャット等で確認や質問ができる体制が構築されているか、事前に確認しておくことが大事です。サポート体制が十分整ったクラウド会計ソフトを選んでおけば、移行時のトラブルを最小限にしてスムーズな導入が可能になります。

移行前のソフトとの互換性や対応デバイスの確認

クラウド会計ソフトへの移行に際しては、移行前のソフトとの互換性、対応デバイス等の確認も必ず行っておきましょう。移行前、自社の会計ソフトをWindowsのパソコンで利用していれば、移行後の会計処理でも同じWindowsのパソコンで処理できるので特に問題はありません。

しかし、移行前の会計業務をMacで行っていた場合は特に注意が必要です。会計ソフトによってはMacに対応していないものもあります。ただし大手会社が提供しているクラウド会計ソフトを選べば、Mac対応のものもあるので心配は不要です。とにかく移行前には、移行前のソフトとの互換性には十分注意を払って会計ソフトを選ぶようにしましょう。

同じく移行に際しては対応デバイスの確認も要注意です。近年は利用できるクラウド会計ソフトの数が増えており、各々パソコン、タブレット、スマホ等、様々なデバイス(ガジェット)からアクセスできるようになっています。各デバイスに対応した会計ソフトを選べば、オフィス外からでも簡単にアクセスできて仕事が可能なので社員の業務の利便性や効率化に大きく貢献します。効率的な会計処理及び経理作業のためにも汎用性の高い会計ソフトを選ぶ必要があります。

まとめ

クラウド会計ソフト導入のコストはゼロではありません。また必ずしもクラウド会計ソフトの導入で税理士報酬を下げれるということもないでしょう。それでもクラウド会計ソフト導入をおすすめするのは、

  • 税理士の知識や経験を、あなたの会社のためにより有効活用できる
  • 上手に使えば、業務改善や経営の助けになる

からです。クラウド会計ソフト導入にあたっては、本記事の知識を基本に、顧問税理士の意見を充分に聞き入れて行うようにしましょう。FLAGSグループでは、クラウド会計をご検討の方のご相談をお待ちしています。平日9:00~17:30の間受け付けております。経験豊富なスタッフがサポートいたします。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。