COLUMN経営コラム

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クラウド会計の導入で気をつけるべきこと
2021.11.16
経理クラウド
経営者や経理担当者で、クラウド会計システムの導入をご検討の方のお悩みとして
- どのクラウド会計サービスを選択するべきか
- いつ、クラウド会計システムに移行すればよいのか
- 会計システムを移行するための準備は何をすればいいか
といったことがあげられます。
これまでの記事では、クラウド会計システム導入の利点や、各社のサービス・価格比較を行ってきました。
本記事では、実際のクラウド会計システム導入についてより実践的な内容をお話します。
注意すべき点や導入時の考え方を丁寧に説明していますので、クラウド会計システムを導入する前にぜひ、お読みください。
▼ この記事の内容
クラウド会計サービス・プランの選択
現在、国内で提供しているクラウド会計システムは大小合わせると数え切れないほどあります。
その中でも代表的なのは、
の3社。
また、各社のサービスには色んなプラン・コースがあります。
「正直、どれを選んでよいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか?
クラウド会計サービスやプランを選ぶ際に気をつけておきたい点は3つです。
① 税理士が対応しているサービス
② 事業規模や将来の計画に合ったプラン
③ 現在の会計システムとの互換性
以下、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
① 税理士が対応しているサービス
別段の事情がなければ、顧問税理士が推奨しているまたは対応可能なサービスを選びましょう。
クラウド会計を導入する大きなメリットの一つは、税理士とデータを共有できることです。これによってよりタイムリーな情報提供やアドバイスを受けることができます。
ほとんどの税理士は上記の3大サービスのいずれか(またはこれらのうち複数のサービス)に対応していると考えられます。
② 事業規模や将来の計画に合ったプラン
クラウド会計システムのサービスは、事業規模(従業員数など)に応じていくつかのプランに分かれています。
各サービスのHPを見ると「従業員◯◯名までの事業者様向け」などの簡単な説明がありますが、プラン選択には顧問税理士の意見も聞いておきたいところです。
例えば、従業員数が少ない会社でも複数の店舗を経営しているなど、安い料金のプランではサービス内容が不十分な場合があるからです。
また、会計システムを何度も変更するのは大変ですから、会社の将来も見据えたサービス・プランの選択が必要です。
③ 現在の会計システムとの互換性
クラウド会計システムを導入する際の「互換性」には2つの意味があります。
ひとつは、従来の会計システムからデータをスムーズに移植できるか。
上記3大サービスでは、他社の会計システムからのデータ取り込みに対応しています。中でもマネーフォワードはデータ取り込みの精度が高く、取り込み方も簡単です。
もう一つの互換性は、現在の会計システムとの操作性の違いです。
特に、自社で会計処理を行っている場合には気になるところでしょう。
実際には、ある程度操作が異なるのは仕方ないので、慣れるしかありません。
一般的な会計ソフトと最も操作性が異なるのはfreeeです。もともと会計の知識がない方用のサービスですので、簿記・会計の知識がある方にとっては違和感のある作りとなっています。
この他、もちろんコストパフォーマンスの問題もあります。
クラウド会計システムの料金については、こちらの記事をご参照ください。
いつシステム移行すればよいのか|タイミング
クラウド会計サービスへの移行作業は、データの互換性があればそう難しいものではありません。
しかし、システムを移行するというのは単にデータを乗せ換えるだけではありません。それなりに準備の期間や労力もかかります。
したがって、いつシステム移行を実行するかというのは結構大事な問題です。
繁忙期は避ける
会計システムのデータ移行は多くの場合、税理士などのサポートを受けながら行います。その場合、データ移行における会社の負担はほとんどありません。
しかし、システム変更によって仕事の流れややり方が変わる可能性があります(何も変わらないのならばクラウド会計システム導入の意味がないとも言えます)。
多少の混乱は避けられず、混乱を最小限に抑えるためにも準備期間が必要です。
クラウド会計システム導入は繁忙時を避けて行うのが無難でしょう。
決算時に行うか、決算時期を外して移行するか
クラウド会計システム導入のタイミングを決算を境として行うか、実は微妙な問題です。
それぞれ、メリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
決算時に移行 |
|
|
それ以外の時期に移行 |
|
|
一長一短で、どちらがよいと決めつけることはできません。各社各様と言っていいでしょう。
クラウド会計システム導入のタイミングについては、上記メリット・デメリットを理解した上で、顧問税理士とよく相談して決定してください。
クラウド会計システム導入の準備|心構え
上にも書いたように、会計データを移植するだけなら、クラウド会計システムの導入は多くの場合、ほとんど手間がかかりません。
もしも導入するクラウド会計システムがマネーフォワードならば、データ移行に1日もかからないでしょう。
ですが、せっかくクラウド会計を導入するのですから、その効果を最大限発揮して業務効率化や経営改善につなげたいものです。
そのためには、明確な目標・ビジョンを持って計画的にクラウド会計システム導入をすすめる必要があります。
明確なビジョンを持って取り組もう
クラウド会計の効果を最大限発揮するには、導入後の改善点(クラウド会計システムに何を期待しているのか)をはっきりと意識し、導入の目的を明らかにする必要があります。
例えば以下のようなビジョンが考えられるでしょう。
ビジョン①:決算・月次決算・定期決算を早くしたい
- 毎年、申告期限ギリギリに資料を税理士に提出して困らせている。税金の計算ができると、思っていたより多額でびっくりすることもある。
- 月次の資料をまとめて税理士に渡すのに時間がかかり、税理士や担当者と話すときはいつも、数ヶ月前の数字について報告を受けている。
こういう経営者の方、結構おられると思います。
クラウド会計システムを上手に使えば、劇的な改善が可能です。
預金やクレジットカードの情報はほとんど自動的に会計システムに反映されますし、現金精算の経費についても、スキャンする(またはスマホで読み取る)だけです。
なるべく早い段階で税理士と会計データを共有できれば、節税面でも経営面でもより有効なアドバイスを受けられるようになります。
そうなれば、顧問税理士や担当者と会って話をするのが楽しみになってくるでしょう。
ビジョン②:抜本的な業務・経営の改善を図りたい
- 労働者名簿はこっちのエクセル、請求書はこのフォルダに「◯◯社:◯年◯月分」とファイル名のルールを決めて入れている。いざ探すとなると大変。ファイルの場所を熟知しているベテラン社員がいなくなったら、どうなってしまうのか。
- 営業社員の経費精算が遅くて精算書の書き方もなかなか統一できない。経理社員は締日にいつも残業を強いられている。
このような、危険かつ生産性を下げる状況はなるべく早期に改善すべきです。
クラウド会計システムの導入によって、様々な情報を一元化できます。
経費精算機能は、複数の営業社員を抱えている場合、極めて重要です。
また、労務関係の機能では、労働者名簿や各人のマイナンバー・勤怠情報の管理と給与計算を会計データと連動できます。
これらによって、特に管理者・経営者の生産性は飛躍的に向上します。
「◯◯ってどこにあるんだっけ?」この質問をしなくてもよいというだけで効果が実感できるでしょう。
クラウド会計システム導入に際し、経理担当のリストラを予定するのであれば、当人に対するケアも必要です。
注意していただきたいのは、これらクラウド会計システムの効用を充分に発揮するためには「ただ導入する」だけでは足りないということです。
「口座とクレジットカードのデータを連動させたから、税理士もあまり資料の催促をしなくなるだろう」でもいいでしょう。いいでしょうが、あまりに寂しい。
それでは税理士の負担を減らすだけになってしまいます。
ただ楽をするためだけではなく、業務効率化や経営の改善をイメージしてクラウド会計システム導入をすすめることが大切です。
クラウド会計システム導入は、計画的に!
上記のように明確なビジョンを持てたら、次に計画が重要となります。
クラウド会計システム導入は、だいたい次のように進めます。
① クラウド会計の導入チームを作る
経理担当者・営業社員など各部署からメンバーを集めてチームを作ります。チームリーダー(経営者自身でもよい)を決めて、意見を集約できるようにします。
チームのアドバイザーとして税理士事務所担当者などを招聘できればなおいいでしょう。
このとき、経営者からメンバーに向け、「クラウド会計システム導入で会社の何を変えたいのか」といったビジョンをしっかりと提示し、メンバー間で共有する必要があります。
② 導入するクラウド会計サービス・プランの選定
多くの中小企業では、クラウド会計システムのサービス・プラン選定で迷うことはないでしょう。
税理士のアドバイスによって、導入するシステムが決まっている場合がほとんどだからです。
③ スケジュールの策定
会計システムの移行は、「◯月までに」といった曖昧な日程の設定に向いていません。末日締めの会社なら「◯月1日より移行する」とはっきりゴールを定めましょう。
ゴールの日付を決めたら、そこから逆算して必要な準備の日程を整えます。
④ 計画の発表
クラウド会計システム導入計画を全社員に知らせます。
クラウド会計導入による利便性の向上、効率性アップを丁寧に説明し、そのための一時的な負担(新しい業務のやり方への習熟の必要)などに対して理解を求めましょう。
⑤ 計画推進
クラウド会計システム導入(そのための準備)を始めます。
メンバー全員が最初に共有していた「何のためにクラウド会計を導入するのか」という視点を忘れずに行動するようにしましょう。
⑥ 研修・教育
クラウド会計システム導入によって、経費精算の手順や勤怠管理の方法に変更がある場合があります。
こうした変更・新しい業務のやり方について従業員全員に周知します。
経理職員は当然のこと、他にも必要があれば研修を行い、システム移行後にトラブルが起きないように準備しましょう。
⑦ テストを経て、本格導入
クラウド会計システムは一般的に使用されている完成度の高いシステムですが、本格導入の前にテストは必要です。
全てのシステムが上手く連動し、イメージ通りに機能することを確認して、本格的に起動します。
以上、丁寧に説明しましたので、「自分の会社は、プロジェクトチームを組むような規模じゃない」という経営者もおられるでしょう。
何もこのとおりにしなくてもいいのです。むしろそういった規模の経営者様にこそ、クラウド会計システムが向いていると言っていいかも知れません。
そういった小規模の会社の経営者様は、ここで紹介した計画の進め方を頭に入れて、ご自身の中でこうしたステップを踏むようにしてください。
考え方としては社内改革のどんなプロジェクトでも同じですので、他の場面でもきっと役立つことでしょう。
まとめ:事業発展のきっかけに、クラウド会計システム導入を検討するのも「アリ」です
クラウド会計システム導入のコストはゼロではありません。
また必ずしもクラウド会計の導入で税理士報酬を下げれるということもないでしょう。
それでもクラウド会計システム導入をおすすめするのは、
- 税理士の知識や経験を、あなたの会社のためにより有効活用できる。
- 上手に使えば、業務改善や経営の助けになる
からです。
クラウド会計システム導入にあたっては、本記事の知識を基本に、顧問税理士の意見を充分に聞き入れて行うようにしましょう。
末松会計事務所では、クラウド会計をご検討の方のご相談をお待ちしています。
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