COLUMN経営コラム

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電帳法の電子データのファイル名のルールは?国税庁の指定はある?
投稿日:2023.12.27
更新日:2023.12.27
経理クラウド
電帳法に対応した電子データを保存する場合にファイル名を決めなければいけませんが、そのルールについて解説しましょう。国税庁が指定しているのか指定していないのかなどもチェックしてみます。
電子データのファイル名は書類に速やかにアクセスする際にとても大事になりますから、ルールをしっかり確認しておきましょう。
この記事は各分野のプロフェッショナルが在籍する団体が執筆しています。ぜひ信用してください。
▼ この記事の内容
2024年1月1日から電子データの保存が義務に
2024年1月1日から電子データの保存が義務になります。電子的に授受した取引データは電子データとして保存しなければいけなくなります。紙での保存は認められません。
元来は2022年1月1日から義務化されるはずだったのですが、対応できない事業者が多いということもあって、2年間の宥恕措置が設けられていました。今後は電子取引をする全ての事業者は電子データ保存をしなければいけないことになります。
電子データ保存におけるファイル名
電子帳簿保存法(電帳法)により電子取引データは全て電子データ保存しなければいけなくなったのですが、その際に疑問になるのがどんなファイル名をつけたらいいかです。自分で勝手にファイル名を決めていいのでしょうか。
詳しい状況を説明しましょう。
電子データには規則的なファイル名を付けなければいけない
電子データの保存では、規則的なファイル名を付けなければいけないことになっています。理由は、検索機能を確保するためです。
検索機能の確保とは、電帳法の規則に則って検索できるようにしておくと言うことです。規則は次の3つの部分で構成されます。
検索条件の設定 | 取引年月日・取引金額・取引先名を検索条件として設定 |
検索範囲指定 | 日付または金額の範囲指定により検索できること |
2つ以上の検索指定 | 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること |

画像引用元:NTTファイナンス|【記載例】電子帳簿保存法に沿ったファイル名は3つの項目を入れるだけ
検索機能の要件に対応するように電子データのファイル名を付ける方法は以下の通りです。
- 規則的にファイル名を付ける
- Excelなどで索引簿を作成して検索できるようにしておく
- 検索機能の要件に対応したシステムを利用する
まず、規則的なファイル名を付けないと、後で検索する際や確認が困難になります。規則的なファイル名を付けておけば、社員はもちろん、電子データを受け取る取引先側も一目で分かるようになります。
Excelなどで作品簿を作成しておくのも1つの方法です。Excelには「フィルタ機能」という機能があり、条件付きで項目を検索できるようになります。この機能を利用すると、検索するための索引簿を作成できるので、取引年月日、取引金額、取引先名などの情報を元に作ってみましょう。
ただし、Excelの利用には注意点があって、書類が増えると、管理運用が大変になるのと入力ミスなどの人為的なエラーが起きやすいです。
3つ目の方法は1番便利です。検索機能の要件に対応したシステムを利用すれば、自分でファイル名をつけなくていいし、Excelの索引簿作成の必要もありません。
導入費用はかかるものの、電子データ保存に関する面倒な作業が簡略化されるのが最大のメリット。ファイル名の付け方に関する悩みもなくなります。
ファイル形式は?
電子データにファイル名を付ける際のファイル形式を確認しておきましょう。
ファイル形式というと、HTMLメールやPDFなど様々なものがありますが、電帳法における電子データ保存に関しては、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」と言うデータに記載されています。問32という部分です。載せてみましょう。

字が小さくて分かりにくいかもしれないので、必要に応じて引用元を確認してください。
簡単に内容をまとめてみましょう。
▼電子メールの場合
電子メールによる電子取引データは日付や取引金額などの取引情報が直接記載されていれば、そのまま自社サーバーに電子メールとして保存できます。あるいは、PDFなどに変換して保存します。変換時に取引情報が損なわれないようにしてください。
▼発行者のWebサイトから請求書等をダウンロードする場合
発行者のWebサイトから請求書等をダウンロードする場合で、PDF形式でダウンロードできる場合は、そのままサーバー保存かサイト上で請求書などを保存します。
HTML形式の場合は、PDF変換できるものはサーバー保存、あるいはサイト上で請求書等を保存します。
変換できないデータに関しては、スクリーンショットで撮影して保存しても構いません。
▼第三者が管理するクラウドサービスを利用し領収書などを授受する場合
第三者が管理するクラウドサービスを利用し領収書などを授受する場合は、クラウドサービスにそのまま保存するか、クラウドサービスから領収書のPDFなどをダウンロードして、サーバー保存してください。
▼従業員がスマートフォンのアプリ等を利用して経費を立て替えた場合
従業員がスマートフォンのアプリ等を利用して経費を立て替えた場合は、スマートフォン等に表示される領収書データを電子メールで送信させて、自社システムに保存。あるいは、スクリーンショットで撮影して保存するかのいずれかです。
電子データに付けるファイル名のルール
電子データの保存ファイル形式が分かったところで、今度はどのようなファイル名をつければいいのかを考えてみましょう。
電子データに付けるファイル名については絶対的なルールはありませんが、望ましいのは3つの検索条件を満たすことです。3つの検索条件とは次のようなものです。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先名
例を挙げてみましょう。
取引年月日 | 取引先名 | 取引金額 | 書類 | |
1 | 2024年1月1日 | ○○株式会社 | 150,000円 | 見積書 |
2 | 2024年2月1日 | ○○商事 | 320,000円 | 請求書 |
3 | 2024年3月1日 | ○○工務店 | 120,000円 | 領収書 |
このような書類があったとします。すると、ファイル名の例は次のようになります。
1.20240101_○○株式会社_150000_見積書.pdf
2.20240201_○○商事_320000.pdf
3.20240301_○○工務店_120000_領収書.pdf
ポイントはアンダーバーでつなぐことです。注意点としては、㈱や㈲などの省略文字は使わない方がいいです。機種依存文字として認識され、文字化けする恐れがあります。
株式会社や有限会社を記載する場合は、省略文字ではなく、正式名称を書くようにしましょう。
ファイルを分類するフォルダ分けのポイント
ファイル名を付けた電子データをフォルダ分けして保存したくなる場合もあるでしょうが、この点についても国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」に示されています。問28と言う項目です。

内容を簡単にまとめると、電子データを分けて保存しても構わないが、検索を求められたときに速やかに出力できるようにしておくと言うことです。
つまり、フォルダ分けができても、整理できていないといけないとも言えます。ファイルが請求書なのか見積書なのか領収書なのか分からないようでは困ります。検索を求められても、速やかに回答できないでしょう。
例えば、「注文書」「領収書」「請求書」「見積書」などのようにフォルダ分けしておけば、検索も確認もしやすくなります。そのほか、自社で利用しやすいフォルダ分けを行ってみてください。
ただ、ファイルを細かくフォルダ分けすると、管理が大変になるという声もあります。この点に関しては、社内ルールも定めて、効率よく保存するようにしてください。
もう一点、フォルダ分けについては保存期間との関係も考慮する必要があります。電子データのファイルの保存期間は以下のようになっています。
法人の場合 | 基本的に7年、最長では10年 |
個人の場合 | 基本的に5年、最長では7年 |
かなり長期間にわたってファイルをフォルダに保存することになるので、キレイに整理しておかないと、後で不便です。検索を求められたときに対応しにくいだけでなく、自分でも検索・確認がしにくくなるでしょう。
送付された電子データのファイル名が電帳法に対応していない場合
取引先などからメールで送付された請求書のファイル名などが電帳法に対応していないことがあります。その際は、自分たちでファイル名の変更をすることになるのですが、書類が溜まってから行うのは大変です。かといって、書類が送付されるごとにいちいちファイル名の変更では、骨も折れます。
ではどうすればいいか、まとめてファイル名を変更する方法をご紹介しましょう。
ファイル名を連続編集
Windowsパソコンの場合になりますが、エクスプローラーでファイル名の変更ができます。しかし、これでは毎回右クリックで【名前の変更】を選択しなければならず、大変です。
そこで、ちょっと工夫してみましょう。次のような手順を踏んでください。
- まずファイル名を変換したしたいファイルを選んで、右クリックし、【名前の変更】を選ぶ
- ファイル名を変更したら、Tabキーを押す(Enterキーではありません)
- そのまま新しいファイルの変更ができるようになる
- 全て変更し終わってから、Enterキーを押す
ファイル名を一括変換
Windowsのエクスプローラーでは、すべてのファイル名を同じ名前にすることができます。一括変換と呼ばれる機能で、次のように行います。
- 名前を変更したいファイルを全て選択(Ctrlキーを押しながらクリックしていく)
- 右クリックし、【名前の変更】からファイル名を変更する
- Enterキーを押す
この機能は全てのファイル名を同じにするためのものですから、1つ1つ別にしたい場合は、先ほどのTabキーを使った方法にしてください。
PowerRenameで一括変換
PowerRenameはMicrosoftが無料公開しているユーティリティ「PowerToys」の機能の1つです。次のようなことができます。
- 多数のファイルのファイル名を変更します (“すべてのファイルを同じ名前にすることはできません”)。
- ファイル名の対象となるセクションで検索と置換を実行します。
- 複数のファイルに対して正規表現の名前変更を実行します。
- 一括名前変更を終了する前に、予想される名前変更の結果をプレビュー ウィンドウで確認します。
- 完了後に名前変更操作を元に戻します。
引用元:Microsoft|PowerRename ユーティリティ
使い方は以下の通りです。
- PowerToysをインストールする
- WindowsFile Explorerで ファイルを選択した後、右クリックしてPowerRename を選択する
- 選択した項目が、検索と置換の値、オプションの一覧、入力された検索と置換の値の結果を表示するプレビュー ウィンドウと共に表示される
- 正規表現を入力し、選択したファイルの中で、入力した条件と一致するものを検索する
- 前に入力した 検索 値を置き換えるテキストを入力する
PowerRenameの使い方については以下のサイトを参照してください。
→Microsoft|PowerRename ユーティリティ
まとめ
今回は、電子帳簿保存法により義務となる電子データの保存におけるファイル名の付け方などについて解説しました。
電子データのファイル名については絶対的なルールがあるわけではありませんが、「取引年月日」「取引先名」「取引金額」の項目を記載するのが望ましいとされています。具体的なファイル名については記事でも例を示したので参考にしてください。
ただ、ファイル名を付けるのが面倒なら、電帳法に対応したシステムの利用がおすすめです。例えば、freee会計。freee会計のファイルボックスを利用すれば、「取引年月日」「取引金額」「取引先」を入力するだけで、ファイル名ができあがります。
freee会計はインボイス制度、電帳法に対応し、他にも利用しやすい機能が揃っています。今からでも遅くはないので、ぜひ利用を検討してみてください。
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