COLUMN経営コラム

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税理士事務所・会計事務所・税理士法人・公認会計士事務所・監査法人などの区別について
投稿日:2021.10.03
更新日:2023.04.25
税務
あなたが今、税理士を探しているとします。
あなたは経営者かも知れません。
不動産収入や相続などの税金について相談相手となる専門家を求める方かも。
税理士志望者や、税理士事務所で働きたいというケースもあるでしょう。
そんなとき、多くの人はまずインターネットで「税理士」を検索することと思います。
これまでの記事(※)でも、税理士の探し方・選び方について紹介してきました。
(※)興味のある方は以下の記事をご参照ください。
本記事では、過去記事で触れなかった「分類名」の問題を扱います。
ネットでの検索結果を見て、どこにアクセスすればよいのか分からなくなってしまう原因の一つに、屋号・商号・称号の曖昧さがあります。
例えば、「◯◯税理士事務所」と「△△会計事務所」、「□□公認会計士税理士事務所」は、どう違っているのでしょうか?
本記事では、以下のような似た肩書(呼称)を区別する方法をお教えします。
- 会計事務所と公認会計士事務所
- 税理士事務所と税理士法人
- 会計事務所と会計法人
ただ分類するだけではなく、見分け方の法則も詳しく説明していますので、上に示したもの以外の表現からも、事務所の正体が判別できるようになります。
ぜひ、最後までお読みいただき、税理士や公認会計士への依頼で間違わないようにしましょう。
▼ この記事の内容
税務・会計に関わる事務所や法人の名称|どうしていろいろな呼称があるのか
なぜ、「◯◯税理士事務所」や「△△会計事務所」、「□□公認会計士税理士事務所」のように、いろんな呼称があるのでしょうか?
その理由としては、
- 法律などの規定がある
- できる(得意な)仕事の分野を明示する
- より馴染みやすい(キャッチーな)名称を採用する
など、様々なものが挙げられます。
名称の分類
まずは、税理士・公認会計士が運営する事務所や法人の種類を把握しましょう。
税務・会計に関わる事務所・法人は、大きく4つのタイプに分けられます。
運営者 | 個人/法人 | 事務所の種類 |
---|---|---|
税理士が運営 | 個人事務所 | 税理士事務所 |
法人 | 税理士法人 | |
公認会計士が運営 | 個人事務所 | 公認会計士事務所 |
法人 | 監査法人 |
まず、「税理士が運営」するものと「公認会計士が運営」するものがあり、それぞれが「個人事務所」と「法人」に分けられます。
税理士事務所
税理士が営む個人事務所は、「◯◯税理士事務所」または「税理士◯◯事務所」(◯◯は税理士の氏または氏名)という事務所名で登録しなければならないことが定められています。
税理士は、個人や法人に代わって税金(主に法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税など)の申告をしたり、税金の相談を受けたりすることが税理士の基本業務です。
これらの業務は税理士でなければ行うことができません。
それに付随して、会計業務などを請け負うこともあります。
顧問契約を締結した税理士は経営上のアドバイスを行うことが多く、経営コンサルタントのような役割も果たします。
税理士は国家資格であり、税理士になるには、合格率10~20%の試験を5科目クリアし、2年以上の実務経験を積む必要があります。
税理士法人
税理士業務を行うことができる法人です。2人以上の税理士によって設立されます。
名称は◯◯税理士法人か税理士法人◯◯(◯◯は氏名等でなくてもよい)となります。
公認会計士事務所
公認会計士の主な仕事は、会社などの財務報告の内容を検証し、適正であるかどうかを判断・報告することです。
財務報告とは、決算書を含む財務情報などに関する報告書で、主に投資家などに経営状況を伝えるために作成されるもの。
公認会計士が財務報告の信頼性にについて判断することを監査といいます。
大企業や上場企業、学校法人など、法律上財務報告が義務付けられている会社などの会計監査・監査報告書の作成は、国家資格を有する公認会計士しか行うことができません。
公認会計士になるには、合格率5%程の厳しい試験に合格することと、2年以上の実務経験が必要です。
公認会計士事務所の名称は、運営する公認会計士の氏または氏名と「公認会計士」、「会計士補」又は「外国公認会計士」の文字を用いることが定められています。
「氏名+公認会計士事務所」のパターンが代表的です。
監査法人
監査法人は、5名以上の公認会計士によって設立され、
公認会計士が行うべき業務を組織的に行いますができます。
4大監査法人と言われるEY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた有限責任監査法人が有名ですが、規模の小さなものを含め、日本にはおよそ100社の監査法人があります。
監査法人の名称は、◯◯監査法人または監査法人◯◯(◯◯は氏名等でなくてもよい)となります。
「有限責任監査法人〇〇」「有限責任〇〇監査法人」という表記の「有限責任監査法人」というものもあります。
本記事では、有限責任監査法人と監査法人を区別しません。
この記事の目的から逸れてしまうため、有限責任の内容についても解説はしておりません。ご了承のほど、お願い致します。
法的な登録名称と屋号が異なる場合がある
上記4タイプの事務所・法人については、それぞれ名称についてルールがありました。
以下、名称のルールを簡単にまとめています。
税理士事務所 | 「◯◯税理士事務所」または「税理士◯◯事務所」(◯◯は税理士の氏または氏名) |
---|---|
税理士法人 | 「◯◯税理士法人」または「税理士法人◯◯」(◯◯は氏名等でなくてもよい) |
公認会計士事務所 | 公認会計士の氏または氏名と「公認会計士」、「会計士補」又は「外国公認会計士」の文字を用いる |
監査法人 | 「◯◯監査法人」または「監査法人◯◯」(◯◯は氏名等でなくてもよい) |
このルールどおりなら、何も混乱は起きないように思われます。
ですが実際には「会計事務所」や「公認会計士税理士事務所」などが存在します。
これらの名称を用いている事務所は、ルールを守っていないのでしょうか?
もちろんそんな事はありません。
上の表に示したルールは、登録名称のルールです。
この登録名称とは別の屋号(通称)が用いられる場合があるので、注意が必要です。
税理士法人・監査法人は、法人名を登記する必要がありますので、別な屋号などはありません。
ただし、株式会社などと一緒で、「税理士法人」「監査法人」といった法人格名は省略されることがありますし、長い法人名は短縮して呼ばれることもあります。
個人事務所の場合は、特別な届け出がなくとも、営業活動の上で、自由(※)に屋号を名乗ることができるので、登録名称と違う通称を用いている場合があります。
汎用性の高い「会計事務所」
税理士事務所や公認会計士事務所の屋号としてよく使われるものに「会計事務所」があります。
◯◯会計事務所、会計事務所◯◯というパターンです。
よくある間違いは、「会計事務所=公認会計士事務所」と思ってしまうことです。
実際には、会計事務所の正体は税理士事務所・税理士法人・公認会計士事務所・監査法人いずれの可能性もあります(※)。
個人事務所である税理士事務所や公認会計士事務所が会計事務所を呼称する理由としては、以下のようなことが考えられます。
「税理士」「公認会計士」といった肩書きが、寄り付きにくいイメージを与えるのを避けたい。
現在では、税理士事務所・公認会計士事務所とも、会計や経理の代行・補佐、経営コンサルティングなど業務内容が幅広くなっている。そうした広範囲の業務をカバーしていることを表現するために会計事務所の呼称を用いている。
法人の会計事務所もある
先述したように、税理士法人や監査法人は基本的に、別の屋号を名乗ったりしません。
それでも、「税理士法人◯◯会計事務所」や「監査法人◯◯会計事務所」といった法人名がよく見られますので、会計事務所=個人事務所と決めつけることはできません。
法人名に「会計事務所」が含まれる理由として、
- 個人の税理士事務所や公認会計士事務所と同様の事情。
- 個人事務所が上述のような理由から会計事務所を名乗り、事務所の規模が大きくなるなどして、その屋号のまま法人になった。
といったことが考えられます。
会計法人について|「◯◯会計㈱」などの会社名
個人・法人双方の税理士や公認会計士が、業務効率化などのために会計法人を設立することがあります。
会計法人というのは法律的な用語ではありません。
税理士事務所・税理士法人などが、経理・会計・コンサルティングなどに特化した株式会社を設立したときの一般的な呼び名です。
googleなどにおいて「税理士」というワードを用いてヒットした場合、こういった会社は税理士事務所や公認会計士事務所と繋がっていることがほとんどです。
詳しく確認する方法は後述しますので、ご確認ください。
「公認会計士税理士事務所」は、税理士・公認会計士のどちらなのか
公認会計士は一定の条件を満たして税理士登録することにより、税理士の業務を行うことができます。
このようにして税理士を兼任する公認会計士の事務所は、公認会計士税理士事務所という名称を用いることができます。
つまり、公認会計士税理士事務所を呼称している場合、公認会計士と税理士両方の業務を行うことができる事務所となります。
具体例な判別方法
これまでの知識を踏まえて、ネット検索でヒットしそうな事務所の代表的な名称と、実態の関係を見ていきましょう。
名称・屋号の例 | 種別 | 資格 | 個人事務所/法人 | 判別のポイント |
---|---|---|---|---|
◯◯税理士事務所 | 税理士事務所 | 税理士 | 個人 | 「税理士」「事務所」の両ワードあり。 ◯◯は代表者である税理士の氏(名)。 |
税理士◯◯事務所 | ||||
税理士法人◯◯ | 税理士法人 | 法人 | 「税理士法人」が最初か最後に付いている。 | |
◯◯税理士法人 | ||||
◯◯公認会計士事務所 | 公認会計士事務所 | 公認会計士 | 個人 | ◯◯は氏または氏名。 「公認会計士」、「会計士補」又は「外国公認会計士」のいずれかを含む |
公認会計士◯◯オフィス | ||||
◯◯監査法人 | 監査法人 | 法人 | 「税理士法人」が最初か最後に付いている。 | |
監査法人◯◯ | ||||
◯◯公認会計士・税理士事務所 | 公認会計士・税理士事務所 | 税理士登録した公認会計士 | 個人 | 税理士事務所・公認会計士事務所双方の名称規定を満たしている。 |
公認会計士・税理士◯◯事務所 | ||||
◯◯会計事務所 | 不明 | 判別方法は後述します | ||
会計事務所◯◯ | ||||
㈱◯◯会計 | 判別方法は後述します | |||
㈱〇〇パートナーズ | ||||
㈱〇〇コンサルティング |
不明な場合はホームページなどで確認する
登録ルールとは違った屋号を使用している場合や、経理代行会社を設立している場合、検索結果を見ただけでは、その母体・代表者が税理士なのか、公認会計士なのか、そのいずれでもないのか判断しにくいことがあります。
そんなときは、当該事業所のHPを訪れ、以下の点をチェックしましょう。
事務所のトップページ・メインページ
良心的な事務所ならば、最初に訪れるメインページ(トップページ)にその組織の属性が書かれていることが多いと思います。
概要・沿革
仮にメインページ(トップページ)では属性が分からなくても、多くの事務所のHPには事務所(会社)概要や沿革を紹介するページがあるはずです。
例えば弊社()
ここまでチェックしても代表者の資格(税理士や公認会計士など)が確認できなければ、それ以上深入りするのはやめた方がいいかも知れません。
もちろん、ホームページやSNSの整備が滞っているけれども、優秀な税理士・公認会計士も存在しますので、一概には言い切れません。
どの専門家に依頼するべきか?|中小企業や個人事業主は税理士事務所・税理士法人に依頼を!
ネットなどで調べたときの職種の見分け方はおわかりいただけたと思います。
その上で、誰に依頼するのか?
選択のファクター(要因)としては、「(税理士・公認会計士といった専門家の)業務範囲」「料金」「知識・スキル」の3つがあげられます。
業務範囲:税理士と公認会計士は職掌(職務の範囲)が違う
ほとんどの個人事業主や中小企業経営者の方は、自社の株式を上場したり、株主に公認会計士が正式に信頼性を保証した財務報告書を提出する必要はありません。
通常の決算や税務上・経営上のアドバイス、申告書の作成・提出には、税理士と契約すれば十分です。
事業が成長し、株式の上場を視野に入れている会社や、学校法人など法律上、公認会計士の監査を必須とする組織は、税理士だけではなく、公認会計士・監査法人などに業務依頼をする必要があります。
料金:公認会計士の料金は高額となる場合も!
公認会計士や監査法人に正式な会計監査を依頼すれば、年間で、数百万~数千万円もの費用がかかります。
税理士が一般的な中小企業の顧問となる場合、費用は年額で、おおよそ50万~数百万円程度です。
公認会計士が税理士登録をして、税理士と同じ業務を行う際の料金も、税理士と同じような料金になります。
税理士登録した公認会計士は、「税金に詳しい専門家」ではない(かも知れない)
公認会計士は、先述したように、税理士登録をして税理士としての活動をすることができます。
実は、弁護士も同じように税理士登録をすることが可能です。
ですが、税理士は税の専門家であり、公認会計士や弁護士はそうではありません。
もちろん、税理士登録し、税理士としての業務をするからには、税法や関連する諸法・制度などについて一生懸命研究されることと思います。
それでも本職の税理士とは、知識・経験において隔絶していることが多いのです。
まとめ:特にネット検索では、事務所の属性をきちんと把握してからアクセスするようにしましょう
会計や税務を扱う業界では、税理士・公認会計士が激しく競合しています。
利用者は、この状況を上手に活用し、有用な会計・税務のサービスを受けるよう心がけましょう。
小~中規模の事業でしたら、本記事に従って「税理士」が運営する事務所や法人を選んでください。
その後、もしも上場などの可能性が出てきたら、公認会計士との契約を考えましょう。
その場合も、税理士が適当な公認会計士(事務所)や監査法人を紹介してくれることと思います。