COLUMN経営コラム

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法人税等の予測や経常利益まで解説!会計レポートを理解し正しい経営判断を

投稿日:2021.11.30

更新日:2024.05.30

税務クラウド

クラウド会計システムを導入することで、さまざまな視覚的に理解しやすいレポートを取得できます。しかし、基礎的な会計知識がなければ、これらの資料を誤解する可能性があります。そのため、「会計・税務のことは顧問税理士に任せている」という方でも、基本的な会計知識は身に付けるべきであり、これにより税理士のアドバイスをより深く理解することができます

本記事では、クラウド会計時代に必要な会計知識の一つ、残高試算表(損益計算書)の読み方に焦点を当てています。また、クラウド会計ソフトの多くが備える決算予測や法人税等の予測方法についても詳しく解説します。基本的な考え方を理解すれば、システムや税理士が提供する決算予測をより深く理解できます

また、税金の予測を行うことで、利益に対する税金の負担、納税資金の準備、節税対策の計画など、経営者が抱える様々な課題に対応することができます。法人の経営者の方や、個人事業主の方はぜひ参考にしてみてください。

クラウド会計ソフトが出力する資料の有効活用法

ここでは、クラウド会計ソフトが出力する資料の有効活用法について紹介します。クラウド会計ソフトの活用法には、特に残高試算表の活用、決算予測、そして法人税等の予測が挙げられます。以下で詳しく説明していきます。

①残高試算表(損益計算書)

クラウド会計ソフトを使用すると、さまざまな資料やレポートを取得することができます。その中でも、損益計算書は会社や事業の利益を見るための重要な書類です。しかし、基礎的な会計知識がないと資料を読み違えることがあるため、注意が必要です。

②決算予測の基本

クラウド会計ソフトの多くは決算の予測または予算管理機能を備えています。決算予測とは、決算期よりも前に決算の内容を予測することで、経営者が決算賞与の金額を決めたり、納税資金を準備したりするために行います。

③法人税等の予測

法人税等とは、法人の利益(課税所得といいます)に課せられる税金のことです。法人の課税所得に課せられる税金は法人税、法人住民税、法人事業税(及び特別法人事業税)の3つがあり、これらを合わせて法人税等と言われます。

残高試算表(損益計算書)

ここでは、クラウド会計ソフトが出力する資料の有効活用法のうち、残高試算表(損益計算書)について解説します。損益計算書は、企業や事業の収益を評価するための重要な帳票です。これはプロジェクトや事業、店舗ごとに作成することが可能で、それぞれの収益性を判断するための基準となります。

ただし、残高試算表に含まれる損益計算書には一定の表現上の「特性」が存在します。以下ではこれらの特性を含め、残高試算表の解釈方法や損益計算書を見る際の要点、ビジネス改善との関連性について、詳細に探求していきます。

残高試算表における損益計算書とは何か

損益計算書は、会社や事業の利益をみるための書類です。プロジェクト・事業や店舗別に作成することもでき、それぞれの収益性の判断材料となります。ただし、残高試算表内の損益計算書には少し表現上の「クセ」があります。そういった特徴も含めて、残高試算表の見方を検討していきましょう。多くのクラウド会計サービスでは、このような形式で残高試算表が出力できます。少し長くなりますが、実際に近い表を示します。

損益計算書をみるときの注意点

ここでは、損益計算書や残高試算表をみるときの注意点について解説します。まずは、残高試算表の例を下表に掲載します。表中の前期残高の値は、前期(前月)までの累計金額であり、期末残高の値は、当月末までの累計金額を表しています。従って、当月中の損益は期末残高から前期残高を差し引くことで算出できます。

 前期残高借方金額貸方金額期末残高構成比
売上高15,000,00005,800,00020,800,000100.0%
期首商品棚卸高800,000820,000800,000820,0003.9%
仕入高4,000,0002,300,00006,300,00030.3%
期末商品棚卸高820,000800,000845,000845,0004.1%
売上総利益11,020,00003,525,00014,545,00069.9%
販売費及び一般管理費     
営業利益     

ここで注意が必要なのは、「◯月分の試算表」として上記の表を提示された場合、最も知りたい当月の成績は一見では分からないという点です。前述の通り、当月の成績は期末残高から前期残高を差し引くことで算出されるため、当月の売上総利益であれば以下のようになります。

売上総利益の期末残高14,545,000 – 売上総利益の期首残高11,020,000 = 3,525,000

また、業種や規模に関わらず、全ての経営者がチェックすべきポイントに「売上高」「売上利益率」「営業利益・営業利益率」「キャッシュフロー」が挙げられます。これらについては、以下で詳しく説明していきます。

売上高|前月比や前年同月比を使い分ける

売上高は、その月の総売上を表す指標です。売上高の評価には、前月との比較による短期的な成長率の計測が一つの方法となります。また、季節性の影響を受ける業種では、前年同月比(前期比較表で確認可能)を見て、売上が前年の同じ月と比べてどの程度増加(または減少)したかを注視することが有効です。売上高は、企業の事業規模や営業活動の成果を反映するものです。企業のパフォーマンスを評価する際には、まず初めに売上高を確認することが重要です

売上利益率(粗利益率)| 利益率の業界標準も知っておこう

売上利益率は、売上総利益が売上全体に対してどれだけの割合を占めているかを示す指標です。上記の表では、売上総利益の構成比欄が売上利益率(すなわち粗利益率)を表しています。たとえ売上が順調に増加しているとしても、それが大幅な価格引き下げによるものであれば、企業にとってはマイナスとなる可能性がありますそのような状況を避けるためには、粗利益率の確認が不可欠です

また、自社の粗利益率が業界平均から大きく逸脱していないかも、一度確認しておくと良いでしょう。なぜなら、各企業には独自の状況があり、粗利益率もそれによって大きく影響を受けるため、業界平均だけに注目するのではなく、自社の状況も考慮する必要があるからです。業界平均の粗利益率は年々変動します。「◯◯業 粗利益率」で検索すると、最新の情報を得ることができます。

営業利益・営業利益率|会社の利益!上がらないのはどうしてか?考えましょう

営業利益は、企業がその月に得た利益の総額を表します。営業利益が少ない、またはマイナスである場合、その原因を探ることが重要です。さらに、販売費や一般管理費に無駄な経費が含まれていないか、人件費が過剰でないかといったコスト面の分析、そして売上の件数が少ないのか、粗利益率が低すぎるのかといった売上利益面の分析が必要となります。これらの分析を通じて、企業の経営状況をより深く理解することができます。

キャッシュフロー|利益があるのにお金がない!どうしてでしょうか?

キャッシュフローは、その月にどれだけの金額が増加(または減少)したかを示す指標であり、利益とは異なる概念です。「通帳を見れば分かる」と思うかもしれません。しかし、「なぜこんなにお金が減ったのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。キャッシュフロー計算書を作成することで、入金と出金の詳細を把握することができます。

ただし、全てのクラウド会計システムがキャッシュフロー計算書の出力に対応しているわけではありません。対応していても設定が複雑な場合や、結局のところ見方が理解できないという人もいるでしょう。大体のキャッシュフローは、損益計算書から推定することができます。この方法を学ぶことで、キャッシュフローの理解も深まるでしょう。一般的な企業では、以下の計算でキャッシュフローの代替となります。

・営業活動によるキャッシュの増加(減少)≒ 経常利益+ 減価償却費

・設備等の投資によるキャッシュの減少 ≒ 設備投資額

・財務活動によるキャッシュの増加(減少) ≒ 新規借入額- 借入返済額

・その月のキャッシュフロー ≒ 上記の合計

 「利益は出ているのに、お金がない(その月のキャッシュフローがマイナス)」という状況の場合、設備投資により資金が減少しているか、借入金の返済額が大きいために資金が減っているか、あるいはその両方が原因となる可能性があります。

決算予測の基本

ここでは、クラウド会計ソフトが出力する資料の有効活用法のうち、決算予測について解説します。決算予測とは、決算期が来る前に、その期間の決算内容を予見することを指します。中小企業における決算予測は通常、決算時にどれだけの利益(または損失)が出るかを予測します。この予測は、経営者が決算ボーナスの額を決定したり、納税に必要な資金を準備したりするために行います。

決算予測を始めるための出発点は、すでに確定している月次決算の損益計算書です。決算予測はいつでも行うことができますが、通常はその事業年度が半分(大体6ヶ月)以上経過した後に行います。それでは、具体的な決算予測の手順を見ていきましょう。

① 残りの月の売上高を予測する

② 売上原価と粗利益を予測する

③ 経費を予測する

④ 特別な状況を考慮して、集計する

これは非常にシンプルな予測方法です。この説明だけでは不十分なので、以下では具体例を挙げて詳しく解説していきます。解説では、12月決算の飲食業の会社を例にします。9月までは月次決算が完了しており、その数値は以下の通りです。

9月まで合計
金額構成比
売上高15,000,000円100%
売上原価5,250,000円35%
粗利益9,750,000円65%
一般管理費9,000,000円60%
営業利益750,000円5%

① 売上高の予測

売上高の予測は、経営者であるあなたが最も理解しているはずです。今回のケースでは、10月と11月はこれまでの流れを維持し、12月は忘年会などで売上が10%増加するという予測を設定しました。10月と11月の売上高は、15,000,000 ÷ 9ヶ月 =1,666,666円となります。そして、12月は1,666,666 × 1.1 = 1,833,333円となります。

上記の表を以下のように拡大し、数値を入力していきます。これは非常に直感的なアプローチです。売上高は、たとえば建設業の場合、受注金額がある程度予測できるため、その金額を記録するなど、業種や業態に応じて予測を立てることが重要です。

9月まで合計10月11月12月決算予測
金額構成比
売上高15,000,000100%1,666,6661,666,6661,833,33320,166,665
売上原価5,250,00035%
粗利益9,750,00065%
一般管理費9,000,00060%
営業利益750,0005%

② 売上原価・粗利益の予測

売上高に続いて、売上原価と粗利益の予測を行います。粗利益は売上高から売上原価を引いたものなので、どちらか一方を算出すれば、もう一方も自動的に予測できます。業種によりますが、粗利益率は大体一定していることが多いです。この例の飲食業でも、それが当てはまります。9月までの粗利益率を見ると65%となっているので、10月から12月も同じと考えて良いでしょう。

つまり、10月と11月は1,666,666 × 65% = 1,083,333円の粗利益、1,666,666 - 1,083,333 = 583,333円の売上原価となります。12月も同様に計算し、ここまでの結果は以下の通りです。粗利益が一定でない場合もあります。例えば、建設業では、工事予算を合計して原価とすることで、より正確な予測が可能です。

また、サービス業では、理美容業など、売上の増減に関わらず仕入れ高がほぼ一定である場合があります。この場合、9月までの売上原価の平均値を10月から12月の原価とし、売上からそれを引いて各月の粗利益を予測します。

9月まで合計10月11月12月決算予測
金額構成比
売上高15,000,000100%1,666,6661,666,6661,833,33320,166,665
売上原価5,250,00035%583,333583,333641,6667,058,332
粗利益9,750,00065%1,083,3331,083,3331,191,66713,108,333
一般管理費9,000,00060%
営業利益750,0005%

③ 経費の予測

経費(販売費および一般管理費)の予測は少々手間がかかりますが、幸いにもこの例の会社では毎月ほぼ一定の経費が発生しています。したがって、9月までの一般管理費の平均、すなわち9,000,000 ÷ 9 = 1,000,000円を各月の経費として予測します。営業利益は粗利益から一般管理費を引いたものなので、営業利益の計算も同時に完了し、これにより初歩的な決算予測が可能となります。

経費が一定でない場合は、その原因を特定して対策を立てます。例えば、給与が歩合制であるために人件費が売上高と連動している場合などです。このような場合、給与を固定給と歩合給に分け、歩合給 = 売上高 × ◯%という形で計算することで、非常に精度の高い計算が可能となります。

9月まで合計10月11月12月決算予測
金額構成比
売上高15,000,000100%1,666,6661,666,6661,833,33320,166,665
売上原価5,250,00035%583,333583,333641,6667,058,332
粗利益9,750,00065%1,083,3331,083,3331,191,66713,108,333
一般管理費9,000,00060%1,000,0001,000,0001,000,00012,000,000
営業利益750,0005%83,33383,333191,6671,108,333

④ 特別な事情を反映する

決算時の特別な状況とは何が当てはまるのでしょうか。今回取り上げた会社では、1,108,333円の利益見込みを基に、年末にパートタイムのスタッフにボーナスを支給することを決定しました。そのボーナスの総額は20万円です。これにより、12月の一般管理費が20万円増加し、最終的な決算予測は以下のようになります。これが、決算予測の大まかな概要です。

基本的な考え方は非常にシンプルですが、それを自社に適用するとなると、多くの悩みが生じることがあります。結論としては、まさにその悩みを解決するために税理士の役割が重要となるのです。

9月まで合計10月11月12月決算予測
金額構成比
売上高15,000,000100%1,666,6661,666,6661,833,33320,166,665
売上原価5,250,00035%583,333583,333641,6667,058,332
粗利益9,750,00065%1,083,3331,083,3331,191,66713,108,333
一般管理費9,000,00060%1,000,0001,000,0001,200,00012,200,000
営業利益750,0005%83,33383,333191,667908,333

税理士による決算予測

税理士が実施する決算予測も、基本的には先ほど紹介した手法を用います。税理士の役割は、専門家として決算予測の精度を向上させるための様々な工夫を行うことです。例えば、売上原価の計算において、粗利益率を用いるべきか、これまでの平均を採用するべきかだけでなく、税理士はさらに多くの選択肢を持っています。人件費や各種経費についても同様です。税理士が活用するテクニックの一部を以下に紹介します。

全体ではなく一部の(直近3ヶ月などの)平均を取る

必要に応じて前年同月の比率や金額を用いる

売上高などに対する相関関数を導出して費用などを予測する

etc…

これらの中からどれを選ぶべきか、業種・業態だけで決まってくるのではなく、個別の会社の状況で変わります。税理士は知識や経験から、最適な計算方法を選び出し、精度の高い決算予測を行うことができます。

法人税等の予測

ここでは、クラウド会計ソフトが出力する資料の有効活用法のうち、法人税等の予測について解説します。法人税等とは、法人の収益(課税所得と称されます)に課される税金のことを指します。法人の課税所得(≒利益)に課される税金には、法人税、法人住民税、法人事業税(及び特別法人事業税)の3つがあります。これらの合計が法人税等と呼ばれるもので、これらをまとめて法人三税とも言います。

実際の決算では、営業利益に営業外収入と営業外支出を加減した「経常利益」、更に特別利益と即別損失を加減して「税引前当期純利益」も計算します。経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外支出を差し引いた金額を指します。営業外収益の主な要素は受取利息で、中小企業の場合、その額は少ないとされているため、決算予測時には無視しても問題ありません。

また、家賃収入など、営業とは無関係な収入は雑収入とされ、これも営業外収益に含まれます。営業外支出の代表的なものは支払利息で、これは借入金に対する利息です。銀行からの借入れでは、返済予定表に利息の金額が記載されているため、予測は容易です。

税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加算し、特別損失を差し引いて算出します。法人税の金額を算出する上では、この税引前当期純利益を基礎として計算を行います、特別利益や特別損失が発生するのは、設備などの固定資産を売却した際など特別な取引が行われたときです。これらは特別な取引に関連するもので、今回は取り扱いません。

前提となる決算予測

法人税等の試算を始める前に、基準となる税引前当期純利益を設定しましょう。上記表で示した営業利益から始めます。追加情報は以下の通りです。営業外収入はなし(預金利息は少額なので無視します) 借入金の利息は、今年度合計で300,000円が予定されています これらを考慮に入れると、法人税等の試算を行う前の決算予測は以下のようになります。

決算予測
売上高20,166,665
売上原価7,058,332
粗利益13,108,333
一般管理費12,200,000
営業利益908,333→ 上記表の営業利益
営業外支出300,000→ 支払利息
経常利益608,333
税引前当期純利益608,333

法人税等の予測

納税資金の準備が決算予測の目的の一つであることを考えると、税金がどれくらいになるかの試算は極めて重要です。 現在、多数のクラウド会計システムでは税金の試算機能が備わっていないか、あっても基本的なものです。 では、法人税等の正確な予測は現行のクラウド会計ソフトでも難しいほど複雑なのでしょうか?

答えはイエスです。法人税等の計算は非常に複雑で、税理士などの専門家に依頼するのが現実的です。 しかし、実際には、中小企業の場合、一定程度の予測は専門家でなくても可能です。 それでは、具体的に法人税等を試算してみましょう。 ここでは、以下の税率で計算します。中規模都市の資本金1千万程度の中小企業(営業成績は決算予測通り)を想定しています。

税の種類税率課税の対象
法人税法人税15.0%課税所得
地方法人税10.3%法人税額
法人住民税法人県民税1.0%法人税額
法人市民税6.0%法人税額
法人事業税等法人事業税3.5%課税所得
特別法人事業税37.0%法人事業税額

表面税率による試算

表面税率とは、上記の表に示された税率の総和を指します。 各税率の課税対象が異なるため、まず全ての税率を課税所得に基づいて計算します。 その合計が表面税率となります。計算方法は以下の通りです。

ここで使用している税率は一例で、事業の規模や利益(≒所得)の額により異なります。 実際の計算では、企業の所在地の税率やその時点の法人税率などを用いるべきです。 各種税率は、自治体や国税庁のウェブサイトなどで確認できます。 税引前当期純利益に表面税率を乗じることで、法人税等の試算が可能となります。 表面税率による試算結果は、 (税引前当期純利益)608,333 × (表面税率)22.39% = 136,205円 となります。

税の種類税率計算
法人税法人税15.000%課税所得に対する法人税率
地方法人税1.545%法人税率 × 地方法人税率
法人住民税法人県民税0.150%法人税率 × 法人県民税率
法人市民税0.900%法人税率 × 法人市民税率
法人事業税等法人事業税3.500%課税所得に対する法人事業税率
特別法人事業税1.295%法人事業税率 × 特別法人事業税率
表面税率22.39%上記の合計

実効税率による試算

実際の法人税等の算出では、先述の法人事業税および特別法人事業税を課税所得から控除することが可能です。 これを考慮に入れたものが実効税率となります。実効税率を用いて税金を計算すると、下記の表のようになります。また、実効税率による法人税等の試算額は、 (税引前当期純利益)608,333 × (表面税率)21.366% = 129,976円 となります。

税の種類税率計算
法人税法人税14.314%法人税率 ÷(1 + 法人事業税率 + (法人事業税率 + 特別法人事業税率))…①
地方法人税1.474%① × 地方法人税率
法人住民税法人県民税0.143%① × 法人県民税率
法人市民税0.859%① × 法人市民税率
法人事業税等法人事業税3.340%法人事業税率 ÷(1 + 法人事業税率 + (法人事業税率 + 特別法人事業税率))…②
特別法人事業税1.236%② × 特別法人事業税率
実効税率21.366%上記の合計

実際の税額

上記の2つの計算結果は、ほぼ同じでした。一般的には、利益が大きければ大きいほど、両者の差は広がります。実効税率による計算では、「実際の法人税等の計算では」と説明しましたので、こちらがより精確な税金予測になると思われるでしょう。しかし、実際の納税額はおおよそ次のようになります。

税の種類実際の税額実効税率による計算
税額税率税額税率
法人税法人税88,00014.466%87,07614.314%
地方法人税9,0001.479%8,9671.474%
法人住民税法人県民税21,8003.583%8700.143%
法人市民税55,2009.074%5,2260.859%
法人事業税等法人事業税21,2003.485%20,3183.340%
特別法人事業税7,8001.282%7,5191.236%
合計203,00033.370%129,97721.366%

13万円と予想していた税金が、実際には20万円を超えていた場合、「税金がかなり多かった」という印象を持つでしょう。では、何が違うのでしょうか。黄色でマークされた部分が大きく異なっています

均等割とは

上述の説明によれば、実際の納税額と実効税率による試算との間には73,023円(203,000円 – 129,977円)の差がありました。当初の予定額129,977円から見ると、これはなんと56%もの増加で、無視できない金額です。では、なぜこんなにも予測が外れてしまったのでしょうか。それは均等割を計算に含めていなかったからです。

均等割とは、法人住民税の一部を構成する税金で、所得(≒利益)に関係なく、会社の資本金の額や従業員数に基づいて一定額を納付することが求められる税金です。均等割の金額は、各市区町村や都道府県でそれぞれ定められています。例えば名古屋市では、71,000円(市:50,000 + 県:21,000円)~3,840,000円(市:3,000,000円 + 県:840,000円)の範囲で設定されています。

また、名古屋市のような政令指定都市では、区ごとに納付が必要で、2つ以上の区に店舗や事業所を持っている場合は、それぞれの区に対して市民税の均等割を納付しなければなりません。上記の例では、均等割の71,000円を計算に含めていなかったため、大きな予測のズレが生じてしまったのです。

その他の税金予測のズレの要因

税金予測におけるズレを引き起こす他の要素として、「税制上の課税所得と経理上の利益の違い」があります。これは、例えば交際費の一部が税金計算上の費用として認められないなどの事例が該当します。しかし、小規模企業の場合、これらの問題はあまり発生しないことが多いと考えられます。小規模企業における税金の予測では、むしろ均等割の税額が全体に占める割合が大きいことが、予測の混乱を引き起こす主な原因となることがほとんどです。

まとめ

本記事では、残高試算表(損益計算書)の読み方や、決算予測や法人税等の予測方法について解説しました。残高試算表(損益計算書)を正しく読めるようになることで、税理士とのハイレベルな対話が可能になり、クラウド会計システムを導入する効果を最大限に引き出すことができます。そして、自分で計算した決算予測と税理士に作成してもらった予測を比較してみましょう。

これにより、現在利用している税理士の決算予測がどの程度工夫されているかが理解できます。一方、法人税の計算は非常に複雑であり、正確な予測は容易ではありません。本記事で紹介した予測方法はあくまで概算と考えてください。納税資金の準備など、より正確な税額予測が必要な場合は、顧問税理士に依頼するのが最良の選択です。

FLAGSグループは、名古屋市で50年以上にわたり、中小企業の継続的な発展を支援するサービスを提供しています。経験豊富な専門家が集結し、クラウド会計の導入はもちろんのこと、公的制度支援やM&A支援など幅広いサービスが提供可能です。高精度な決算予測・税額予測は、経験豊富なFLAGSグループにお任せください。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。