COLUMN経営コラム

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【創業融資】自己資金と資本金の違い|審査通過に向け準備する

2023.02.02

融資

創業融資を受けようとするとき、審査を通過できるかどうか以前に、審査要件の理解が難しい場合があります。初めての事業ですから、当然のことです。

よくある誤解の一つが、「自己資金は資本金の額がそのまま認定される」というもの。

自己資金と資本金は、全くの別物です

今から、創業融資の審査の場で、自己資金と資本金がそれぞれどのような扱いを受けるのかを解説してまいります。自己資金を準備するのに必要な情報もまとめておりますので、事業開始に向けてご活用ください。

【創業融資】自己資金と資本金は別物

金融機関から創業融資を受ける審査において、自己資金は、審査の重要な要素としてチェックされます。

▼ 自己資金の要件(日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の場合)

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方

引用:日本政策金融公庫「新創業融資制度の概要」

自己資金をいくら準備したかは非常に重要です。

自己資金はいくらか?を考えるにあたっては、「資本金の額がそのまま自己資金と認められるわけではない」ことを知っておく必要があります。

自己資金=資本金とは評価されない

先ほどお伝えしましたとおり、創業融資の審査の場で、資本金の額がそのまま自己資金の額として評価されるわけではありません(結果的に一致する場合はあります)。

例えば、登記簿の記載が「資本金300万円」だとしましょう。

金融機関がチェックして、「自己資金は200万円ですね」と認定すれば、たとえ資本金が300万円でも自己資金は200万円です。

逆に資本金が1万円でも、資本金に組み込まなかった自己資金が200万円あると証明し認定されれば、自己資金は201万円になる可能性があります。

自己資金と資本金は、全く異なる概念なのです。

自己資金資本金
誰が金額を決めるのか融資する金融機関が認定自分で決める
どのような資金か創業に要する資金のうち、自身で用意した資金(返済義務のないもの事業開始のために調達した、事業の元手となる資金(返済義務のないもの
資金の出どころ預金通帳から借入金でないことが証明された資金借入金が含まれている可能性を否定できない
評価されるもの
  • 起業への心構え
  • 堅実さ、信頼に足る人物か
  • 設立時の資金規模
  • 会社の信用・体力
根拠法なし会社法445条

自己資金の準備1:審査通過する自己資金の割合を知る

自己資金の額は金融機関の審査により決まり、資本金の額とは一致しないことがわかりました。

この自己資金、日本政策金融公庫の新創業融資制度においては、自己資金割合3割程度を目安に準備するのが理想です

ただし3割はあくまで目安。創業計画書の内容や事業経験、面接時の印象なども考慮されますから、必ずしも自己資金割合は3割必要なわけではありません。

ですが、自己資金を多めに準備した方が、創業融資の審査に通りやすいのは間違いありません。(自己資金割合についての詳しい解説はこちらの記事でしておりますので、お役立てください)

自己資金の準備2:自己資金と認められるお金を貯める

それでは今から、開業にあたって準備した資金の内、何が自己資金として認められるのかを解説していきます。

現在の自己資金の額を把握し、足りない場合はどのような手段で資金を貯め自己資金を増やすのかの、材料としてください。

自己資金と認められる可能性があるお金

自己資金とは、自分で着実に貯めてきたと金融機関に認められる資金をいいます。前々から起業の準備をし、着実に資金を貯めて来た人なら、安心して融資できるという考え方ですね。

自分で着実に貯めてきた資金かどうかは、きちんと証明できることが求められます。預金通帳(原本)の内容を厳しくチェックされますよ。

▼ 自己資金と認められる可能性がある主な資金

  • 給与などを地道に貯金したお金
  • 退職金
  • 贈与・資金援助(返還可能性のないもの)
  • 株主による出資
  • 配偶者名義の通帳の預金
  • 売却資金
  • みなし自己資金(創業にあたって既に支払った資金)
  • 現物出資(金銭以外の出資)
  • 保険の解約返戻金
  • 第三者割当増資 など

上記の内いくつかを、創業融資の審査にどのような影響を与えるのかや証明方法を交え、解説してまいります。

給与などを地道に貯金したお金

自己資金の最たるもので、融資審査の際に非常に心象が良いのが、毎月の給与を預金口座に貯金してきたお金です。

何年も給与から資金を捻出し続け資金を準備してきたのですから、まさに起業への準備万端、融資の返済もしっかり行われるだろうということですね。

逆に言うと、自宅に現金で保管していた大量の資金を、審査直前に一気に預金口座に移すのは問題があります。

急に多額の資金が振り込まれたということで、自己資金と認定すべきか資金の性質を厳しくチェックされることになるでしょう。

退職金

既に振り込まれた退職金であれば、自己資金と認められます。

ただし、自己資金に占める退職金の割合が高すぎると、融資が受けづらくなります。

退職金は、急に振り込まれる多額の資金ですから、創業に向けて着実に準備してきたとはいう心証は与えられないのです。

▼ ポイント

  • 退職金の源泉徴収票も用意しておくと説明が早い

贈与・資金援助(返還可能性のないもの)

贈与・資金援助は、自己資金として認定される可能性が十分にある資金です。

ただし退職金と同様の理由で、自己資金に占める贈与・資金援助の割合が高すぎると、融資が受けづらくなります。

▼ ポイント

  • 贈与する人の名義の口座から、直接振り込んでもらう
  • 贈与契約書を作成しておく
  • 贈与してくれた相手の預金通帳も審査の対象になる

贈与・資金援助が自己資金とみなされるかは、最終的には、資金の出どころや性質をどう判断されるかです。

例えば、赤の他人から急に多額の振り込みがあるよりも、親など身内からの資金援助のほうが自己資金と認められやすくなります。また、贈与された資金を何らかの条件で返還する可能性がある場合は、自己資金とは認められません。

株主による出資

もし会社を立ち上げる際に株主からの出資を受けられる場合、株主からの出資が自己資金とみなされるかどうかは、その実態で判断されます。

例えば、第三者が100%株主である場合、その第三者が全くの他人なのか?資金をコツコツ貯めてきた身内なのか?でも審査結果が変わり得ます。

家族がコツコツ貯めたお金で事業に出資してくれたなら、実質的に家族からの資金援助に近いですよね。

一方、100%株主の第三者が全くの他人の場合、第三者から急に資金が出てきた?出どころは?社長は形だけの雇われ社長なのか?という疑念を抱かせてしまいます。

どこからどこまでが自己資金になるかは、本当に金融機関の審査でいかに証明できるか、どう判断されるかなのです。

配偶者名義の通帳の預金

配偶者名義の通帳にある預金を事業に使用する場合も、自己資金として認められます。

▼ ポイント

  • 配偶者の預金通帳での出どころの証明が必要
  • 配偶者の同意が必要

売却資金

自己の保有する資産を売却した場合も、自己資金と認定されます。

具体的には、株式・有価証券等の金融資産や、不動産・車などを売却して自己資金とした場合です。

▼ ポイント

  • 【金融資産】金融資産の保有状況が確認できるもので出どころを証明する(証券会社HPの画面など)
  • 【不動産や車】売買契約書や譲渡証明書で出どころを証明する

みなし自己資金(創業にあたって既に支払った資金)

店舗の保障金やパソコン代など、創業の準備で既に支払った資金は、自己資金として認められます(事業のために使用したことが証明できた場合に限る)。

この時注意したいのが、購入時の領収証では事業のために資金を使用した証明にはならないことです。理由は、領収証では自己資金を購入に充てたのかが不明であるためです。

現物出資(金銭以外の出資)

自己のパソコンや車、土地などを事業に出資した場合(現物出資という)、これらも自己資金と認められます(事業用資産として使用されている証明が必要)。

自己資金と認められないお金は?

以下の資金は、自己資金とはみなされませんので、資金調達の際は気をつけてください。

  • 見せ金
  • 資金の出どころを証明できないお金(タンス預金など)
  • 借入金
  • 事業で自由に使えないお金

見せ金

金融機関を欺くような見せ金は、自己資金とは認められません。

見せ金とは、自己資金がたくさんあるように見せたいがために、一時的に借り入れてすぐに返済するお金のことです。

資金の出どころを証明できないお金(タンス預金など)

自宅保管の現金(いわゆるタンス預金)は、預金通帳などで資金の出どころを証明できないため、自己資金とは認められません。

自宅にある現金を自己資金としたい場合に取るべき行動としては、早い段階で少しずつ預金口座に預け入れしていくことが挙げられます。

借入金

金融機関や家族、親戚、友人などから借りたお金は、返済義務があるため自己資金とは認められません。キャッシングも同様です。

大切なのは、借入金を頼りにせず、早い段階から計画的に自己資金を貯めていくことです。

事業で自由に使えないお金

貸したお金(=債権)を現物出資した場合や、売掛金などは、手元になく事業で自由に使うことができないので、自己資金とは認められません。

自己資金の準備3:自己資金が足りない場合にできること

何が自己資金と認められるのかをお伝えしてまいりました。

次は、自己資金が足りない場合はどのように行動するのかを解説いたします。

自己資金が足りない場合にできること

自己資金が足りない場合の選択肢は、大きく2つあります。

  • 自己資金と認められるお金を増やす
  • 創業計画自体を縮小する

自己資金と認められるお金を増やす場合は、ここまでお伝えしてきました内容を参考になさってください。

あまりにも自己資金が足りない場合の現実的な対応として多いのが、創業計画を縮小して必要な資金を少なくすることです。

具体的には、店舗や設備の変更などが挙げられます。

この他、開業時に受けられる補助金や助成金もあります。受けられそうなものは積極的に活用していくべきでしょう。

この記事のまとめ

自己資金と資本金は全くの別物で、金額が一致しないことも多々ございます。

資本金の額は自分で決めるため、借入金が含まれる可能性がある一方、自己資金は創業融資に際して金融機関が厳格にチェックして認定するものなのです。

たとえ自己資金が十分に確保できない場合であっても、創業計画の内容によっては創業融資の審査に通る可能性が、十分ございます。

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※上記%は、個人信用情報に問題がある場合を除いたものです。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。