COLUMN経営コラム

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「丸投げ」から「自計化」まで。税理士にはどこまで依頼するべきか徹底解説!

投稿日:2021.09.05

更新日:2023.04.25

税務

税理士との契約には、色々な内容・形式があります。契約内容の違いは、多くの場合「税理士と事業者との業務分担のバランス」の違いを反映したものです。

契約内容のうち、税理士の業務範囲を広くとったものが、いわゆる「丸投げ」です。
逆に、できるだけ自社(事業者)側で作業を負担するのを「自計化」といいます。

「丸投げ」「自計化」の具体的なイメージを正確に伝えている情報はあまり見かけません。
よくわからずに契約してしまうと、「丸投げで依頼したのに○○はしてくれなかった!」「○○では追加料金を取られた」といったトラブルの元にもなり得ます。

本記事では、税理士との契約内容による業務の分担について詳しく説明します。

  • 「丸投げ」「自計化」はそれぞれどんな内容の契約か
  • 「丸投げ」「自計化」のメリット・デメリットは?
  • 税理士との契約内容によって料金相場はどのくらい変わるのか
  • 自分にとってどんな内容の契約がベストか

この記事では、これらの疑問を解消していきます。

これから税理士との契約をお考えの方、現状の税理士との契約・関わり方に疑念をお持ちの経営者にとってたいへん有益な内容となっていますので、ぜひ最後までお読み下さい。

丸投げはどんな契約か、自計化はどこまで自分でやるのか|判断のために必要な知識

「丸投げ」という名は、税理士に全てを任せる契約というイメージを与えます。
反対に、「自計化」というと全部自分でやらなければいけないような印象があります。

では、「全て・全部」とは具体的にどこからどこまでを指すのでしょうか?
答えは、

税理士がどこまでやってくれるかはその税理士や契約内容によって変わる

です。

「丸投げ」「自計化」それぞれの範囲は、税理士によってもまた契約によっても違ってきます。
更に、税理士との契約は「丸投げ」「自計化」の2択でなく、両者の間には無数の段階があります。

賢い税理士選び・契約内容の選択には、まずこの「業務範囲」の概要を知ることが必要です。

・税理士に依頼できる業務の範囲・料金

まずは、経理や会計、税務にかかる作業の流れと契約ごとの税理士のカバー範囲を簡単に整理しておきます。

No.項目内容契約内容と業務範囲
営業モノ・サービスを仕入れる・売る。その相手を探す基本的に業務範囲外
経営人を雇う。給与・ボーナスなどの体系を整える業務範囲外だが別料金で依頼も可能な場合あり
経理お金を支払ったり、受領したお金を管理する経理及び税務全般space
経理売掛金や買掛金などの債権・債務を整理する
経理請求書や領収書等を整理する
経理・会計会計データを作成(入力)する丸投げspace
経理・会計経営に必要な資料などを作成し、経営上・税務上のアドバイスをする顧問契約space
経理・会計・税務会計データなどをチェックし、税務上の問題を抽出・解決する決算・申告のみのスポット契約
経理・会計・税務税金を計算し、申告する
人事経営計画や投資・金策の計画を考える
経理・会計・税務税務調査など突発的な事態に対応する別途料金がかかる
(※)この表はあくまで一例です。税理士と契約する際には請け負ってもらう業務内容と料金を確認するようにしましょう。

税理士が代行してくれる業務の範囲は、このように契約内容によって異なりますが、通常「丸投げ」という場合には上記の⑥~⑨をカバーする契約と解釈していいでしょう。

逆に言えば、「丸投げ」とは言っても普通、③~⑤は税理士の業務範囲に入っていないことがほとんどです。

一般的に、税理士に任せる業務範囲が広いほど料金が高くなり、事業者(経営者)側の労力が軽減できます。

契約内容ごとの税理士報酬の相場

会計や税務のどこまでを税理士に頼むかによって、報酬額が異なってきます。

税理士の料金は、依頼の内容はもとより、地域や事業の規模によって大きく変わるのですが、ここでは大まかな目安をご案内します。

契約内容料金の目安
決算・申告のみ5万円~30万円
顧問契約(年間)20万円~
丸投げ30万円~
経理・税務全般50万円~

自分に合った契約は?|丸投げ・自計化のメリット・デメリットを把握しよう!

税理士とのベストな契約は、事業規模やその他経営上の事情によって変わってきます。

税理士と契約する際に、どのような選択が最適となるか、考察していきましょう。

丸投げ・自計化のメリット・デメリット

税理士に経理業務を丸投げするにも、経理・会計作業を自計化するにもそれぞれメリット・デメリットがあります。

以下の表では、それぞれの利点や不利益をおおまかに記載します。最初でも書きましたが、税理士との契約は「自計化」か「丸投げ」の2択ではないことに注意してご覧下さい。

メリットデメリット
丸投げ
  • 業務負担が減り、営業活動などに専念しやすい
  • 経理上の間違いをしてしまう可能性がない
  • 税理士に支払う料金が高くなる
  • 税理士が会計データをまとめるまで現状の利益や税金の見込みが分からない
自計化
  • (毎日経理処理していれば)リアルタイムに経営状況や財務状態を把握できる
  • 業務負担・又は経理の人件費増加
  • 間違いや不正な経理が行われてしまう可能性が生じる

丸投げか自計化か

丸投げ・自計化のどちらを選ぶべきでしょうか?

中小起業や個人事業主はまず、丸投げを検討しましょう。
理由は以下の通りです。

自計化より丸投げ①:経理職員を雇うのは大変!

自計化するには、経理業務に専念でき、経理の知識がある従業員を雇うことが必要です。簿記などの知識があり、経理を任せられる、信頼の置ける人材を得ることは簡単ではありません。
採用費・人件費も少なくないものになるでしょう。
費用面では、経理職員のための業務スペース確保、パソコンや会計システムなどにかかるソフト料などもかかってきます。

自計化より丸投げ②:経理職員が退職したら、補充は困難!

退職などの事情で経理職員がいなくなった場合、長年勤めた経理職員の業務を簡単に引き継げる人材はすぐには見つかりません。

自計化より丸投げ③:不正の危険も!

特定のの経理職員を長年雇っていると、誤った会計処理や、不正な行動(横領など)を招く原因になります。
もちろん、税理士は、会計データなどをチェックして不審な点があれば事業主に報告します。しかし、税理士に与えられる会計データだけでは周到に用意された不正を見抜くのが困難な場合もあります。

上記のような理由から、ある程度大きな企業であっても、税理士事務所などに会計・経理を任せているケースも少なくありません。

経理・会計の大切さ

丸投げか自計化かを判断するにあたって、事業者の方は以下の二点をしっかりお考えいただきたいと思います。

  • 経理・会計・税務は事業の運営上欠かせない大切な業務である
  • 経理・会計・税務は営業などに比べ、副次的な業務である

このどちらもが真実なのです。

会社や事業の資産を惜しみなく注ぎ込む対象は経理業務ではないでしょう。
しかし、経理業務をないがしろにしては、決して事業運営はうまく行きません。

結論として、中小企業や個人事業主は、経理や会計・税務を税理士などの外部に委託するのがベストな選択と言えるでしょう。

「丸投げ」では、スケジュールを設定し、守ることが肝要!

小規模の会社や個人事業主の方は、税理士に丸投げすることを検討した方が良い。
理由はこれまで述べてきたとおりです。

ここでは、「丸投げ」の上手な使い方を解説します。

丸投げのメリットははっきりしているので、デメリットを小さくすることが上手な使い方につながります。

丸投げのデメリットを思い出してみましょう。

税理士に支払う料金が高くなる → 自計化のコストの方が高い可能性もある

これについては、自計化にもそれ以上のコストがかかるので、問題ありません。

税理士が会計データをまとめるまで現状の利益や税金の見込みが分からない → スケジュールの遵守で対応可能!

これは確かに解決不能なデメリットに見えます。ですが、このデメリットを最小限に抑えることはできます。

そのためには、月次決算のスケジュールをしっかりと定め、守ることです。

税理士事務所とよく話し合い、月次決算の日程を定めるようにしましょう。

例えば月末締めの会社の場合、次のような月次のスケジュールが考えられます。

業務内容
事業者(会社)税理士事務所
前月末締日
~当月5日資料をまとめて税理士事務所に渡す
~当月15日税理士事務所の会計データ入力作業・担当者のチェックなど
~当月20日税理士事務所から会社に対して月次会計の報告

こうしたスケジュールを守っていれば、月次ごとの状況把握も遅れることなく出来ます。
金融機関などもいきなり今月の試算表(月次の決算書)を求めたりはしませんので、通常の業務にはこれで十分でしょう。

まとめ|最初は「丸投げ」。規模が大きくなっても「自計化」だけが正解ではない。

中小企業や個人事業主にとって、税理士に会計業務を丸投げするデメリットはほとんどありません。
企業の経営者は事業の推進に全力を注ぐべきです。

それをサポートするのも税理士事務所の役目です。

事業規模がある程度大きくなっても、すぐに自計化するべきかは顧問の税理士とよく相談するようにしましょう。

末松会計事務所では、税理士事務所に丸投げしたい経営者の方の相談を喜んでお受けします。こちらの問い合わせフォームまたはお電話でお気軽にご連絡下さい。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。