COLUMN経営コラム

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クラウド会計を導入する前に知っておきたい基礎知識

2023.10.13

税務経理クラウド

クラウド会計ソフトを利用することで、入力作業が自動化し、効率的に処理できるようになります。

ただ、実際にクラウド会計を導入するとなると、何が変わるのか、どのような問題点があるのかなど不安に感じることもあるでしょう。

そこで今回は、クラウド会計導入前に知っておきたい基礎知識をお伝えします。基礎知識を確認した上で導入すれば、不安点も解消し、スムーズに使えるようになるでしょう。

本記事の内容は各分野のプロフェッショナルが所属している団体が執筆しているので、信憑性は確かです。ぜひ記事内の情報を活用してください。

クラウド会計の特徴を知っておこう

クラウド会計ソフトを導入する前に、クラウド会計の特徴を確認しておきましょう。

クラウド会計ソフトでは、インターネット環境上で会計処理ができ、データはクラウド上に保存できます。インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも誰でも会計処理ができます。

業務の共有もでき、従業員同士がアクセスすることも可能です。

従来のインストール型の会計ソフトの場合、インストールしたパソコンのみにデータが保存され、他のパソコンでは処理ができませんでした。そのため、限られた人しか扱えない、データの共有ができないなどの問題があったのですが、クラウド会計ソフトはそのような問題を解消しています。

クラウド会計のメリット・デメリットをチェックしてみよう

クラウド会計ソフトを導入する前に、メリット・デメリットをチェックしておきましょう。

メリット

まず、クラウド会計ソフトのメリットを紹介します。次のようなメリットがあります。

  • デバイスを選ばない
  • 専門的な知識は不要
  • ミスが減る
  • 財務状況をリアルタイムで把握できる
  • 口座取引情報を自動取得できる
  • 使用OSは問わない
  • アップデートは無料かつ自動

いろいろなメリットがありますね。それぞれのメリットについて簡単に説明しておきましょう。

▼デバイスを選ばない

クラウド会計ソフトを利用する場合は、デバイスは問いません。PCでもタブレットでもスマホでもよく、どのデバイスからでもアクセス・処理ができます。

ネットにつながるデバイスなら何でもOKで、時間や場所も気にせずに作業ができるでしょう。

▼専門的な知識は不要

クラウド会計ソフトを使って会計処理をする場合、簿記の専門的な知識は不要です。詳しい知識がなくても、入力・計算できるようになっているので、誰でも利用できます。

操作も簡単ですから、特に行き詰まる点もないでしょう。

▼ミスが減る

勘定項目、貸方と借方、金額などで入力ミスがあっては困りますが。クラウド会計ソフトを使えば、ケアレスミスは大幅に減ります。ケアレスミスが生じれば、修正作業が大変ですが、クラウド会計ソフトでは修正の手間も減るでしょう。

▼財務状況をリアルタイムで把握できる

クラウド会計ソフトを利用すれば、財務状況をリアルタイムで把握できます。記帳データは自動入力され、最新の情報を入手可能。

現在の自社の財務状況がすぐに分かれば、今後の対策も立てやすくなるでしょう。

▼口座取引情報を自動取得できる

クラウド会計ソフトでは、口座取引情報を自動取得できます。銀行口座の出入金はキャッシュフローを把握する上で必ずチェックする項目になりますが、自動取得することで参照しやすくなり、会計処理をスムーズにできるでしょう。

▼使用OSは問わない

従来のインストール型会計ソフトの場合、Windowsでしか使えないものも多かったですが、クラウド会計ソフトでは使用OSは選びません。WindowsでもMacでも使えます。

そのため、別々のOSを使っている者同士でもデータの共有ができ、操作が可能です。従業員同士、円滑なコミュニケーションが図れるでしょう。

▼アップデートは無料かつ自動

クラウド会計ソフトでは、アップデートが無料かつ自動で行われます。自分でアップデート操作をしなくても、最新のバージョンが適用されるのです。法令改正にも素早く応じるようになっていて、安心して利用できるようになっています。

デメリット

続いて、クラウド会計ソフトを導入するデメリットを見てみます。次のようなデメリットがあります。

  • 月額料金がかかる
  • インターネット環境がないと使えない
  • 合わない業種がある
  • 動作が遅いことがある

それぞれのデメリットの詳細を確認しましょう。

▼月額料金がかかる

クラウド会計ソフトでは、インストール型と違って初期費用はかかりませんが、月額利用料金を支払わなければいけません。月額利用料金は安いものもありますが、年に換算すると1万円を超えることも多いので、費用対効果も見た上で導入する必要があるでしょう。

▼インターネット環境がないと使えない

インターネット上でデータのやりとりをするクラウド会計ソフトは、インターネット環境が整っていないと使えません。

回線トラブルなどにより、インターネットに不具合が生じたときにはクラウド会計の機能は全て動作しなくなります。便利なように思えるクラウド会計ソフトですが、不便な面もあります。

▼合わない業種がある

業種によっては、クラウド会計ソフトが合わない場合があります。例えば、古くからの店舗でネット環境が整っていなければ、手入力での会計処理になるでしょう。

昔から手入力の方に慣れている人も、クラウド会計ソフトの処理を煩わしく感じるかもしれません。

▼動作が遅いことがある

クラウド会計ソフトに時々起こるのが、動作や処理が遅くなることです。クラウド会計ソフト全体の問題といえます。

クラウド会計ソフトを利用する前には、以上のようなメリット・デメリットをよく確認し、納得した上で導入するようにしてください。

どのクラウド会計がいいか確認しておく

これからクラウド会計を導入しようという企業やお店もあるでしょうが、問題なのはどのソフトを選ぶか。自社に合わないソフトを選んでしまうと、うまく機能しなかったり、使いにくくなったりします。

そこでクラウド会計導入前に、ソフトの選び方を確認しておく必要があります。以下で選び方のポイントを示しましょう。

企業規模に合ったものを選ぶ

クラウド会計ソフトは、企業規模に応じて機能などが違っています。そのため、自社の規模に合ったタイプを選ばないといけません。次のようなタイプの中から選択してみましょう。

  • 大規模法人向けソフト:数百人単位の従業員を雇っている企業の会計用
  • 中~小規模法人向けソフト:従業員が比較的少ない安価なタイプ
  • 個人事業主向けソフト:個人事業主の人が利用しやすいソフト

同じクラウド会計ソフトでプランごとに対象企業が分かれているものもあります。大規模法人向けプランはエンタープライズ、中~小規模法人向け、個人事業主向けはライトといった感じです。

クラウド会計ソフトを選ぶ場合は、自社の規模と合うものを使わないと、役に立たない場合があります。

導入目的に応じたものを選ぶ

クラウド会計ソフトをどのような目的で導入するのかを考えてから選択しましょう。

会計処理だけでいいのか、販売管理や給与計算など他の用途にも利用したいのかによっても選び方が変わってきます。導入目的に応じて必要とする機能も違ってきます。

自社に必要としている機能がないソフトもあるので、よく確かめてから選ぶ必要があるでしょう。機能が多すぎるものも使いにくいものです。そのようなソフトはコストがかかるのに対して余計な機能がついているので、無駄な出費を伴いますから、選ばないようにしましょう。

使いやすさで選ぶ

クラウド会計ソフトの使いやすさも選ぶポイントです。

クラウド会計ソフトを操作する人は企業によって変わります。会計の専門知識がない初心者の場合もあるでしょうし、会計事務に慣れた人の場合もあるでしょうし、簿記や会計の専門知識がある人の場合もあるでしょう。

それぞれの立場によってどのような会計ソフトが使いやすいかも変わってきます。操作する立場の人のことをよく考えて、タイプを選ばないと、使いこなせない場合があります。

そうなれば、料金を支払って導入したクラウド会計ソフトが無駄になってしまいますから、慎重に選びましょう。

サポート体制で選ぶ

クラウド会計ソフトを導入する前に確認しておきたいのが製品のサポート体制です。

導入前から導入後までしっかりサポートしてくれるところを選ばないと、操作で分からない点が出てきたとき、以前使っていたソフトとの引継ぎで困ったときなど、対応できなくなることがあります。

クラウド会計ソフトのサポートというとメール対応のところが多いですが、中には電話やチャットサポートになっているところもあります。また、動画やドキュメントで親切に操作方法を教えてくれるソフトもあり。

簿記・セミナーの解説記事など、充実した学習コンテンツを提供しているソフトもあります。そのようなソフトは、専門知識の勉強に役立つでしょう。

いずれにしろ、サポート体制がどうなっているか確認の上、ソフト選びをしてください。

セキュリティ体制で選ぶ

クラウド会計ソフトのセキュリティ体制も導入前にチェックしておきましょう。

クラウド会計ソフトではデータがクラウド上に自動保存される関係から、社内機密が外部に漏洩する恐れがないとはいえません。

一般的なクラウド会計ソフトでは、データの暗号化、24時間365日のデータ監視などの対策が講じられているので、安心ではあるのですが、セキュリティの詳細はソフトによっても違うことがあります。

のため、各ソフトのセキュリティ対策をしっかり確認した上で、導入するようにしましょう。

費用対効果のほどで選ぶ

クラウド会計ソフトの導入では月額料金がかかるのですが、費用に応じた効果が得られるかチェックしてみましょう。

導入によって十分な業務効率改善、人件費削減などの効果が得られるソフトを選ぶ必要があります。費用に見合う効果が得られないソフトを導入すれば、お金の無駄遣いになります。

さらに他のソフトに切り替えることになれば、余計な費用も加わるでしょう。

したがって、クラウド会計ソフトの費用対効果をよく確認してから、選ぶようにしてください。

クラウド会計ソフトの導入手順を確認しておこう

クラウド会計ソフトを導入する前に、どのように導入することになるのか手順を確認しておきましょう。手順を確認しておけば、選んでから導入するまでのプロセスがスムーズに進みます。

導入前の確認事項

まず、クラウド会計ソフトの導入前にインターネット環境の整備をしておきます。インターネットならつながっていますという企業も多いでしょうが、問題は回線レベル。回線が途切れたり、障害がよく起きたりするインターネットでは、後でクラウド会計処理を行うときに支障が生じます。

クラウド会計ソフトはオフラインでは機能しないので、必ずインターネットにつながっていないといけません。そのためには、信頼できる安定した接続が可能なインターネット回線を選ばないといけません。

現在使用しているインターネット回線に問題がないか確認の上、クラウド会計ソフトの導入を進めてください。

インターネット環境が整ったら、セキュリティ対策をしましょう。セキュリティ対策はクラウド会計ソフト側でも行っていますが、ユーザー自身も対策を講じる必要があります。

基本中の基本の対策としては、PCにウイルス対策ソフトを入れることです。次にクラウド会計ソフトのユーザーIDとパスワードは厳重に管理しましょう。複数人でソフトを使う場合は、個々にIDを設定し、権限設定をしておいてください。

無料Wi-Fiを利用して、クラウド会計ソフトにアクセスするのは避けましょう。無料Wi-Fiは通信傍受される可能性があり、会社の機密情報が漏れるかもしれないので、従業員全体に利用しないように周知する必要があります。

導入直後の設定

クラウド会計ソフトを導入する際に最初に行うのがアカウント設定です。アカウントの作成は、会社名、メールアドレスなどを入力して、パスワードなどを設定します。アカウント作成後は、そのままクラウド会計ソフトを使えるようになります。

次にすることはアクセスメンバーの登録。経営者や経理責任者はもちろん、経理担当者や各事業所の支店の担当者などにもアクセス権限を付与できます。アクセス権限には管理者権限や入力権限などの種類があるので、立場に応じた付与をしてください。

最後に行うのは金融機関からのデータ取得です。金融機関のWebサービスのユーザーIDやパスワードをクラウド会計ソフトに登録して、データを送ります。

金融機関のユーザーIDやパスワードを登録して大丈夫なのかと不安になる人がいるかもしれませんが、暗号化されるので心配する必要はありません。

クラウド会計導入前の準備をしっかりしておこう

今回は、「クラウド会計を導入する前に知っておきたい基礎知識」というテーマでお送りしました。

これからクラウド会計を導入して、会計業務などを効率化させたいと考えている企業もあるでしょうが、導入前に確認しておくべき基礎知識があります。基礎知識を確認しないでやみくもに導入すれば、自社に合わなかったり、機能が十分でなかったり、あるいは余計な機能があったり、使いにくかったりなどにもなりやすいです。

そのため、事前にクラウド会計ソフトについてよく調べた上で、導入するかどうか決める必要があります。その際に役立つ情報を記事内で紹介したので、ぜひ参考にしてください。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。