COLUMN経営コラム

COLUMN経営コラム

ふるさと納税の利用方法について詳しく解説
2021.11.05
税務
みなさんは、ふるさと納税をどんなイメージで捉えているでしょうか?
お肉や、鮮魚、お菓子などをゲットでき、更に節税もできる
というのが普通の印象でしょう。
そのイメージは、ある意味では正しいのですが、間違ってもいます。
本記事では、ふるさと納税の効果をわかりやすく説明します。
- これからふるさと納税をするかどうか、検討中である
- ふるさと納税が何なのか、どういったものか知りたい
- 自分が、ふるさと納税でいくら得をするのか知りたい
という方向けの記事となります。
最後までお読みいただき、ふるさと納税が、あなたにとって、どのように役立つのかを知るために、有効にご活用いただけたら幸いです。
▼ この記事の内容
ふるさと納税とは
まず、ふるさと納税を、正確さを犠牲にして、超・簡単に説明します。
- ふるさと納税は、本来ならば居住している自治体に支払うべき住民税を、お好みの都道府県や市区町村に支払うことができる仕組みです(→支払先を変えるだけであって、大幅に税金を減らす仕組みではない)。
- 寄付金を支払った先の自治体からは、お礼として各種の品物・サービスが届けられます(→寄付金のお礼として、返礼品がもらえる。)
不正確を承知でこのような単純化をしたのは、「ふるさと納税をすると、節税でき、支払ったよりも多い金額が戻ってくる・どんな人でも得をする」というような、よくある誤解を正すためです。
ふるさと納税をしたからといって、その金額(寄附金額)よりも多くの税金還付を受けられるということはありません。
では、ふるさと納税によって実際には何が起きるか、見ていきましょう。
ふるさと納税の概要
ふるさと納税とはいったいどんな制度でしょうか?
総務省のHPによると、「自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行った場合に、寄附額のうち2,000円をs越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります。)」
との記載があります。
これではイメージがつかみにくいと思いますので、具体的な事例を見ていきましょう。
ふるさと納税の具体的な計算例
A市に住む年収500万円の独身サラリーマンが、B市に72,000円のふるさと納税をした場合、税金などの支払いがどうなるかを概算しました。
所得税(国) | 248,000 | 241,000 | -7,000 |
---|---|---|---|
住民税(A市) | 248,000 | 185,000 | -63,000 |
寄付金(B市) | 0 | 72,000 | +72,000 |
合計 | 496,000 | 498,000 | +2,000 |
この表では、ふるさと納税した場合、国に支払う所得税が7,000円(※1)、A市に支払う住民税は63,000円(※2)減っています。
これを合計すると70,000円の節税となります。
一方、B市に72,000円分の寄付をしていますので、支払額だけみると、2,000円多くなっています(※3)。
では、ふるさと納税の利点はなんなのでしょうか?
それは返礼品です。
この例で支払った72,000円の行き先を考えてみましょう。
寄附金額 | 内訳 | ||
---|---|---|---|
行先 | 金額 | ||
72,000円 | 返礼品の提供業者 | 21,600円 | |
寄付先の自治体など | 自治体の粗利益 | 21,600円 | |
税金の増加 | 2,000円 | ||
差額(実質的な納税者の利益) | 26,800円 |
ふるさと納税は通常の住民税と違い、寄付先の自治体からお礼の品が贈られます。
返礼品の種類は様々ですが、当然、自治体の利益にならないと寄付の意味がありませんので、返礼品は寄附金額の30%以下と定められています。
そうすると、72,000円の寄付金に対しては72,000×30%=21,600円以下の返礼品となるわけですが、この21,600円はあくまで自治体が調達するためのいわゆる仕入れ価格です。
調達価格が21,600円の返礼品であっても、一般の消費者が通常購入する末端の市場価格はもっと高くなります(商品・サービスによるが、基本的には2倍程度)(※4)。
調達価格21,600円の返礼品を普通に購入した場合、2倍の43,200円かかるとしましょう。
43,200円相当の返礼品が手に入るので、寄付した金額は72,000円でも、43,200円は商品やサービスとして戻ってきていると考えることができます。
上の表より、支出金額は一時的に2,000円増えていましたので、それを差し引くと、納税者は26,800円得したことになります。
これがふるさと納税のカラクリです。
ふるさと納税を行わなかった場合の納税額 - ふるさと納税の寄附金額 + 寄付による減税後の納税額
を「自己負担額」といい、最低でも2,000円になります。
上記の例では寄付金72,000円に対して市場価格43,200円の返礼品なので、還元率は43,200÷72,000=0.6ですので、還元率60%の返礼品となります。
効率的なふるさと納税の方法
ふるさと納税の上手な利用ポイントは3つです。
控除限度額
ふるさと納税を含め、寄付金による税金の控除には上限があります。
この限度を超えて寄付すると、ふるさと納税の効果が少なくなります。
場合によってはマイナスの効果となる可能性があります。
ふるさと納税の上限額については、総務省のHPで目安を案内しています。
また、各種ふるさと納税案内サイトにも、簡便な計算フォームや目安表がありますので、参照するとよいでしょう。
還元率
還元率は、支払った寄付金に対して、どのくらいの価値の返礼品をもらえたかを示す値です。
簡単に言うと、1万円の寄付金で9千円相当の返礼品を受け取れば、還元率は90%となります。
現在、還元率は寄付金額の30%以下に設定することと法令で定められています。
しかし、その30%とは、自治体が返礼品を調達するためのいわゆる仕入れ価格であり、一般の消費者にとっての市場価格とは異なります。
市場価格との比較による還元率は、30%~95%と幅広く、還元率が低ければ、計算上のお得感は減少します。
金銭的なプラスが大きいことが全てではありません。
ふるさと納税の返礼品を選ぶときには、還元率だけではなく、
- 欲しい・消費したいモノか
- その自治体(地域)を応援したいか
などを勘案し、総合的に判断するようにしましょう。
その他の注意点
住宅ローン控除などの減税処理との併用には注意してください。
特に若いサラリーマン(年収400万程度)で住宅ローンの残高が2千万円以上残っているような場合、月々の給与からは源泉税が引かれていても、年間の所得税・住民税はゼロ円だったりします。
この場合、住宅ローン控除の手続きだけで税金が全額戻って来ますので、ふるさと納税の効果は大幅に減ってしまいます(全く効果がないことも)。
まとめ:ふるさと納税は、直接的な節税ではなく、間接的なものです
ご覧いただいたように、ふるさと納税は、個人の現金流出を減らすための直接的な手段ではありません。
居住地の住民税の納付に替えて、他の自治体に寄付したお金が、部分的に品物(返礼品)として戻ってくるというのが、ふるさと納税の正体です。
また、使い方によっては損をすることもありえます。
ふるさと納税を上手に利用するために、本記事をお役立てください。