COLUMN経営コラム

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会社設立で消費税免除を活用!インボイス対応と注意点も解説

投稿日:2024.03.18

更新日:2025.04.29

税務経営

個人事業主として事業を営んでいる方の中には、既に施行されたインボイス制度への対応や消費税の納付について悩まれている方も少なくありません。インボイス制度への対応に伴い、新たに会社を設立した場合、原則として設立2期目まで消費税が免除されることはご存知でしょうか。

本記事では、会社設立に際して消費税免除の制度とそのメリット、注意すべきポイントについて、法人化との関係も踏まえて詳しく解説いたします。法人設立の際に知っておくべき消費税に関する制度やインボイス制度の影響、さらに合同会社が選ばれる理由など、多角的な視点から実務に役立つ情報をお伝えします

これから法人設立を検討される方や、消費税戦略を考慮した経営を目指す方にとって、参考になる内容を丁寧にまとめましたので、ぜひご覧ください。

消費税免除の概要と法人化との関係

法人設立にあたっては、さまざまな税務上のメリットを検討することが重要です。とりわけ、消費税の納税義務が一定期間免除される制度は、設立初期の資金繰りや経営戦略に大きな影響を与えます。法人化を進める際、税負担を抑えるための戦略として、免除制度の仕組みとその適用条件を正確に理解することが求められます。

新設法人として認められるための条件や、資本金、売上高、設立時期といった要素がどのように判定基準に影響するのか、またその制度を前提とした法人設立の意義について、具体的に解説していきます。

消費税が免除される法人の条件とは

消費税の納税義務が免除される法人は、一定の条件を満たす必要があります。法人設立後、原則として設立2期目まで消費税の納税義務が免除されるケースが一般的ですが、これはすべての法人に当てはまるわけではありません。

免除が適用されるためには、資本金または出資金が1,000万円未満であることや、設立初期の特定期間における課税売上高や給与等の支払い総額が一定の基準を超えないことが求められます。

これらの要件は、法人が事業開始後の資金調達や経営の安定化を図るための措置として設けられており、免除制度の利用により初期の税負担を大幅に軽減できるメリットがあります。経営者は、免除の適用条件を十分に把握し、自社の資本金や売上高の状況と合わせて、最適な設立タイミングを検討することが求められます。

資本金・売上高・設立時期による判定基準

法人設立後、初めの2期にわたり消費税の納税義務が免除されるためには、いくつかの条件が整っている必要があります。

まず、資本金または出資金の額が1,000万円未満であることが基本条件となります。さらに、法人設立直後の特定期間における課税売上高や給与等の支払総額が、それぞれ1,000万円以下であることが求められます。ここで、特定期間とは「前事業年度開始日以降の6か月間」を指します。

さらに、法人の設立時期や決算期の設定を調整することで、課税売上高や給与等支払額は変動するため、特定期間における数値を管理する戦略も有効でしょう。これらの要件は、法人が安定した経営基盤を築くために非常に重要なポイントですので、設立前に十分なシミュレーションを行い、必要に応じて税理士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。

消費税免除を前提にした法人設立の意義

消費税免除制度を活用することで、初期のキャッシュフロー改善や事業運営の安定に寄与するため、非常に大きな意義を持ちます。

特に、設立直後は売上が安定せず、経営資源の配分が厳しくなる中で、消費税の納税義務が免除されることで、資金面での負担を軽減し、事業成長に集中できる環境を整えることが可能となります。

さらに、免除期間を有効に活用することで、後続の増資や事業拡大を計画する際にも柔軟な対応が期待でき、経営者にとっては長期的な経営戦略の策定にも有利に働きます。法人設立に際しては、消費税免除の要件や判定基準を十分に理解し、これらを前提とした経営戦略を構築することが、持続可能な成長と安定した経営基盤の確立につながると言えるでしょう。

消費税免除のメリットを活かすための注意点

個人事業主が法人化することで2年間は納税義務が免除されます。しかし、消費税免除の要件に合致しなくなった場合や、インボイス制度に対応し適格請求書発行事業者として登録した場合は消費税の納税義務が生じます。

そのため、消費税免除期間のメリットを十分に享受するためには、単に制度の適用を受けるだけではなく、先を見据えた実務面での運用を進めていく必要があります。具体的には、消費税の納税額の管理方法や経理処理の方式など、多角的な対策を講じることが求められます。

以下では、これらの注意点を具体的な事例とともにご紹介いたします。

消費税の納税額を把握する

インボイス制度に登録することで、課税事業者として消費税の納税義務が発生いたします。そのため、商品やサービスの販売時に買い手側が支払う金額に含まれる消費税の額を正確に把握し、管理することが重要です。

具体的には、全取引における消費税の受領額を把握し、適切な管理体制を整える必要があります。納税額を明確に把握しておくことで、免税措置の適用時や将来的な税務調整の際に不測の事態を回避することができ、顧問税理士や会計ソフトとの連携も円滑に進めることが可能となります。

消費税に対応した経理方式を導入する

インボイス制度に登録後は、適切な経理処理が不可欠です。経理方式としては、「税込経理方式」と「税抜経理方式」の2種類があり、それぞれの方法にメリットとデメリットがございます。税込経理方式では、売上や費用の計上に消費税分を含めて処理するため、全体の金額を一括して管理する方法となります。

一方、税抜経理方式では、売上高と消費税を分離して計上するため、仮受消費税と仮払消費税の差額を正確に把握することが可能となります。特に、納税額の把握や精算の面では税抜方式が分かりやすいとされ、実務運用のしやすさから採用されるケースが増えております。

法人化する場合は、インボイスの影響を考慮する

個人事業主から法人へ移行する際、インボイス制度の影響は見逃せません。既に個人事業主として課税事業者であった場合、法人化に伴って一度制度上の状態がリセットされるため、再度課税事業者としての選択手続きが必要となります。

このため、法人化のタイミングとインボイス制度への対応策を十分に検討することが重要です。事前に税務や会計の専門家と相談し、適切な手続きと対策を講じることで、法人設立後の経営基盤をしっかりと整えることが可能となります。

免税事業者として残るか?課税事業者になるか?

免税事業者としてそのまま継続するか、あるいはインボイス制度に対応して課税事業者となるかは、取引先との関係や事業の性質によって大きく左右されます。どちらの選択が自社にとって有利であるかを判断するためには、取引先のニーズや業界の動向、将来的な事業拡大の可能性など、複数の観点から検討する必要がございます。以下では、各選択肢の特徴やメリットについて詳しく解説いたします。

インボイス非登録のままでよいケースとは?

インボイス制度への登録を行わず、免税事業者として事業を継続するケースも存在いたします。主に、取引先が消費税の仕入税額控除に対してあまり敏感でない業種や、小規模な事業を営む場合には、あえて制度に対応しない選択が有効となることがあります。

また、登録手続きや経理処理の負担を避けたいという観点からも、インボイス非登録を維持するメリットが認められる場合がございます。各企業は自社の事業内容や取引先の属性を十分に考慮し、最適な対応策を選択することが重要です。

インボイスに登録して、課税事業者になるメリット

一方で、法人化してインボイスに登録し、課税事業者となると、取引先に対してインボイス発行が可能となり、相手先も消費税の仕入税額控除を適用できるため、取引関係がよりスムーズになる傾向があります。

結果として、ビジネスパートナーとの信頼関係が強化され、新たな取引先の獲得や販路拡大に結びつくメリットが期待されます。たとえ納税義務が生じたとしても、長期的な視点では事業成長の足がかりとなるため、戦略的な判断が求められます。

顧客属性・事業形態に応じた判断ポイント

免税事業者か課税事業者かを判断する際には、取引先の業種や顧客のニーズ、さらには自社の事業規模や成長戦略といった多面的な視点から検討する必要があります。大口取引先が仕入税額控除を重視する場合や、業界内での競争環境を考慮すると、課税事業者としてインボイス登録する選択が有利となるケースが多く見受けられます。

逆に、地域密着型の小規模事業などでは、現状の免税措置を継続することが、運営コストや管理の手間を軽減する上で合理的と判断される場合もございます。

法人化するなら合同会社が選ばれる理由

法人化に伴う各種コストや運営の柔軟性を考慮すると、合同会社は非常に魅力的な選択肢となります。合同会社は、株式会社と比較して設立時の初期費用や運営コストが抑えられる点、そして経営の自由度が高い点から、個人事業主から法人へ移行する際のハードルを下げる役割を果たします。

以下では、具体的な理由とともに合同会社の優位性について詳しくご説明いたします。

コストが安い

合同会社の設立にあたっては、株式会社に比べて登録免許税や定款認証に関する費用が低く抑えられるため、初期投資が軽減されます。たとえば、設立費用自体も株式会社に比べて大幅に安価であり、さらに運営面でも定期的な株主総会や決算公告の義務がないため、継続的なコスト削減が可能です。これにより、限られた資金で事業を開始したいと考える中小企業にとって、大きなメリットとなります。

会社を自由に経営しやすい

合同会社は、所有と経営の一体化が図られているため、経営方針の変更や意思決定が迅速に行える点が大きな魅力です。個人事業主時代に確立した経営理念や方針をそのまま引き継ぐことが可能であり、外部からの干渉が少なく、柔軟な経営判断が求められる現代のビジネス環境においては非常に有利と言えます。経営の自由度が高いことは、急激な市場変化に対する迅速な対応力にもつながり、事業の安定成長を後押しする要因となります。

合同会社から株式会社に移行できる

事業拡大や株式公開など、将来的により大きな組織体制が求められる場合には、合同会社から株式会社へ移行する手続きが用意されております。初期段階では合同会社で柔軟な経営を行い、事業の成長に合わせて組織変更を実施するという戦略は、リスクを抑えながら拡大を図る上で効果的です。

逆に、株式会社から合同会社への移行は、一定の株主総会の承認が必要となるため、事業規模や将来的な展望に応じた適切な判断が求められます。

まとめ|インボイス時代の法人化は“消費税戦略”がカギ

インボイス制度の導入に伴い、法人設立時の消費税対策はますます重要な経営戦略となっております。資本金や売上高の設定、経理方式の選択、そしてインボイス登録の有無といった要素は、各企業の将来的な税務負担や取引環境に大きな影響を及ぼします。事前に十分な検討を行い、自社にとって最適な形態を選択することが、持続的な成長と安定経営の実現につながると言えるでしょう。

資本金と売上の設定で免税効果を得るには?

法人設立にあたっては、資本金の設定や売上高の見通しを明確にすることが、消費税免除の効果を最大限に引き出すためのポイントとなります。資本金や売上高の水準を適切にコントロールすることで、免税措置の対象となる基準を満たし、法人設立初期の納税負担を抑えることができます。事業計画と連動させた具体的な数値目標を設定し、専門家と連携することで、最適な免税効果を実現することが可能です。

インボイス制度対応も含めた事前の検討ポイント

インボイス制度の導入は、法人設立後の税務処理や経理システムの運用に大きな影響を及ぼします。そのため、法人化を決定する前に、制度に対応するか否かや、具体的な準備や手続き、さらには取引先との調整事項についても事前に検討することが不可欠です。将来的な経営の自由度を保ちながら、円滑な制度移行を図るためにも、税理士や会計の専門家との連携を深め、万全の対策を講じることが求められます。

FLAGSでは設立~税務相談までトータル支援可能です

FLAGSグループは、長年にわたり中小企業の成長を支えてきた実績を背景に、法人設立からその後の税務相談に至るまで、ワンストップで幅広いサポートを提供しております。専門の税理士、司法書士、社会保険労務士が一丸となり、各企業の状況に合わせた最適なアドバイスと手続き支援を行うことで、安心して事業拡大に専念できる環境を整えております。

法人化を検討される皆様には、確かな知識と実績に基づいたサポートを受けながら、インボイス制度に対応した戦略的な経営を実現していただけるよう、FLAGグループが全力でお手伝いさせていただきます。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。