COLUMN経営コラム

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医療費控除はe-taxで簡単!|コロナ関連の医療費はどこまで控除できるか?
投稿日:2021.11.19
更新日:2023.04.25
税務
確定申告の時期が近づいて来ました。
サラリーマンの方が確定申告をする理由は大きく2つ。
住宅ローン減税を受けるとき(※)と、医療費控除を受ける場合です。
新型コロナウイルス関係の医療費が多額になり、医療費控除を受けたいとお考えの方も多いのではないでしょうか?
医療費控除は確定申告をしなければ受けることができないため、普段は確定申告に縁のないサラリーマンの方にとって、ハードルが高く感じられるかも知れません。
そこで本記事では、医療費控除の基本的な考え方に始まり、新型コロナウイルスへの対応状況やe-taxを利用したインターネットによる申告の方法までをご案内します。
- 医療費控除のやり方が分からない
- コロナ関連の支出は、どこまで控除できるのかを知りたい
- 確定申告は初めてで、どうして良いのかわからない
といった方はぜひ、この記事の内容をお役立ていただければと思います。
▼ この記事の内容
医療費控除とは
医療費控除は、その年に支払った医療費が10万円を超えるときに、超えた分の金額を所得から控除できる仕組み(※)です。
医療費は「医療のために直接要した費用」のこと。自分自身にかかった病院代や薬代などの他に、配偶者などの生計を一にする親族などの医療費を支払った分も入れて計算することができます。
ただし、保険金・高額療養費などで補填される金額は除外します。
イメージしやすいよう、例をあげて医療費控除の計算をしてみましょう。
<<例>>
① 自分が病気のため入院し、入院費などが18万円かかった
② ただし、上記入院に対して加入していた生命保険会社から7万円の入院給付金がおりた。
③ その他、妻が風邪を引いた際に1万円、子供の歯医者代が6,500円かかった。
上の例の場合、医療費控除額は次のように計算します。
このとき、26,500円は所得控除の額です。26,500円税金が安くなるわけではありませんので注意が必要です。
節税できる金額は、26,500円に税率を掛けた金額です。
所得税率が10%の場合(課税所得金額が1,950,000円から3,299,000円まで)、26,500円 × 10% = 2,650円が節税となります。
さらに住民税(税率10%)も同様に減額されるので、節税額は26,500 × 10% = 2,650円が更に加算され、合計で5,300円の節税となります。
5,300円は結構な金額です。それでも従来は、数千円のために確定申告をするのが面倒であるという理由から、あえて医療費控除を利用しない人も多くみられました。
インターネットで簡単に確定申告ができるようになった現在では、医療費控除のハードルが下がっており、これを利用しないのはもったいないと言っていいでしょう。
医療費控除の申告の方法
それでは、医療費控除をインターネットで行うにはどうすればいいでしょうか?
確定申告はスマホなどから簡単に行うことができます。
サラリーマンの方の場合、医療費控除を受けるために用意するべきは以下、たった3つの書類です。
- マイナンバーカード
- 源泉徴収票
- 医療費等の領収証
これらを準備して、国税庁が用意しているe-taxのHPから、申告書を作成しましょう。
実際に操作してみれば分かりますが、思ったよりも簡単に確定申告書を作成することができます。
念のため、医療費控除を適用した場合に思ったように税額が減っているか確認するとよいでしょう。
そのために、上で示したような計算式を用いて自身でざっくり試算できることが大切となります。
ただし、上の計算例は、
- 復興所得税を加味していない
- 医療費控除によって所得税率が変わってしまう可能性を考慮していない
など、いくつか説明を省略しているところがあります。
考え方として、e-taxでの減税額が上の計算式で計算した減税額を下回っていれば、何か間違い(入力ミスなど)がある可能性があります。
控除できない医療費に注意!
医療にかかった費用でも、医療費控除の制度上、控除対象として認められていない費用があります。
例えば以下のようなものは特に間違えやすいので、注意が必要です。
医療費控除可 | 医療費控除不可 | ||
---|---|---|---|
歯科 | インプラント | 基本的にOK | 美容目的のものは不可 |
歯科矯正 | |||
交通費 | 公共交通機関 | OK | – |
タクシー代 | 公共交通機関による移動が困難な場合 | 通常は不可 | |
入院費 | 通常の入院費 | OK | – |
差額ベッド代 | 治療のために必要と認められる場合 | 通常は不可 |
このあたり、扱いが微妙なケースもあり、判断に迷うこともあるかも知れません。
詳細については国税庁HPもご参照ください。
個別の事例については、所轄の税務署に確認するのが、もっとも確実な方法です。
コロナ関連の医療費では、どんなものが控除対象となるか
新型コロナウイルスの蔓延によって、はじめて医療費控除を検討されている方もおられると思います。
ご存知のとおり、新型コロナウイルスは新しい事象です。
コロナによって医療費控除の制度や基準に変更が生じたわけではありません。したがって、基本的には「医療に直接かかった費用」が対象となります。
しかし、コロナウイルスの登場によって「マスク代は控除対象か?」や「PCR検査の費用は控除できるのか?」など新たな疑問が出てきたのも事実です。
ここでは、新型コロナウイルスに関する医療費等のうち、医療費控除ができるもの、できないものについてまとめました。
医療費控除可 | 医療費控除不可 | |
---|---|---|
マスク購入費用 | – | 不可 |
PCR検査 | 医師の判断による検査 | 自己の判断による検査で陰性だったもの |
自己の判断による検査で陽性だったもの | ||
オンライン診療費 | 控除可。オンライン診療の利用料も控除できる。 | – |
ワクチン接種費用 | – | 不可。ただしコロナワクチンについては現在全額公費負担となっている。 |
この中で、PCR検査について「陰性だったら控除できない場合がある」ことに違和感をおぼえる方もおられることと思います。
なぜこういう扱いになるか。それは、医療費控除の対象があくまで「治療」を対象としており「予防」には対応していないためです。
同様の理由から、人間ドックなどの健康診断費用も医療費控除の対象ではありません。しかしこの場合も健康診断などの結果疾病が見つかり、そのまま治療行為に入れば、この検査費用も医療費控除の対象となるのです。
人によっては理不尽に感じるかも知れませんが、現行の制度はそのようになっています。
これらのことをよく踏まえた上で、医療費控除の手続きを行いましょう。
自分が支払った医療関連費用が医療費控除の対象となるかどうか分からない場合は、所轄の税務署に問い合わせるようにして下さい。
医療費控除の確定申告は税理士に依頼すべきか
これまで説明してきたとおり、医療費控除の確定申告はそう難しいものではありません。
また、節税額は数千円~数万円にとどまる場合が多く、税理士に申告を依頼すると税理士報酬の方が高くついてしまう可能性もあります。
本記事は一般的なサラリーマンの方を対象としていますので、やはりご自身でe-taxを通じて申告なさるのがいいかと存じます。
個人事業主の方や不動産収入がある方で、すでに顧問税理士と契約しているなら、確定申告を2つに分ける事はできませんから、いつもの申告と合わせて医療費控除も税理士に依頼することとなります。
この場合、もちろん契約内容によりますが、ほとんど追加料金なしで引き受けてくれる場合もあるでしょう。
あなたが中小企業の経営者である場合にも、会社の顧問税理士がいるのですから、そちらに相談・依頼した方がいいでしょう。税理士に任せていれば、この費用は控除対象かどうかなど、いちいち税務署に確認する必要がありません。
こちらの場合の料金は、税理士との交渉次第ですが、顧問税理士ならば節税額よりも多くを要求したりすることはないと考えられます。
まとめ:医療費控除を上手に使って「自分で節税する」感覚を身につけましょう
サラリーマンの方は、節税という発想があまりないかも知れません。
税金のことばかり考えているのも問題です。税のことを考えなくても、会社がきちんと税金を徴収してくれる現行のシステムは、給与労働者にとって悪くない制度だと思います。
しかし、せっかくインターネットが普及して、e-taxなどが簡単に使えるようになったのですから、これからのサラリーマンは税の知識を身につけ、少しでも節税すべきだと思います。
言うまでもありませんが、節税は「ズル」ではありません。正当な権利を行使しているだけです。
医療費控除はもともと「多額の医療費を支払った国民の経済状況を救済すること」にあります。
医療費控除を申告し、その恩恵を受けることに何のためらいも必要ありません。
本記事で得た知識を上手に活用して、ぜひ医療費控除を検討してみて下さい。