COLUMN経営コラム

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税理士の仕事はどんなもの?|リアルな実情を紹介します!
投稿日:2021.12.22
更新日:2023.04.25
税務
税理士とは、何をする仕事でしょうか?
税金の計算をして、申告書などを作ってくれるのが税理士。確かにそうですが、実際の税理士の仕事はもっと広範なものです。
クライアントの経営アドバイスをしたり、その他の各種相談をさばくのも、税理士の大切な仕事です。むしろそちらにウェイトが置かれていると言ってもいいでしょう。
この記事では、税理士を志す人や税理士を選ぶ経営者の方に向けて、税理士の仕事のなんたるかを詳しく説明します。
▼ この記事の内容
税理士の仕事は『税金計算&相談役』
税理士はクライアントと顧問契約で繋がっています。
注意しておきたいのは、税理士はクライアントのいわゆる下請け・ただの代理人ではないことです(顧問契約と業務委託契約との違い)。
更に、ほとんどの事業者が税理士との契約を必要とすることから、税理士には税金計算以上の役割が求められます。
税理士法による定義|納税者の「適切な納税」を補佐する
税理士を規定するのは、税理士法という法律です。その第一条では、以下のように規定されています。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
(税理士法 第一条)
少し難しい表現がありますが、簡単に言うと、
ということです。
したがって、税理士は以下の業務を行うことができます。
① | 税務代理 | 税務署などに対する申告や手続きを納税者に代わって行うこと。 税務署などの処分に対して意見陳述や不服申立を行うことも含みます。 |
② | 税務書類の作成 | 申告書などの税務署類を納税者の代わりに作成すること。 |
③ | 税務相談 | 納税者からの申告書の作成や手続きについて相談を受けて応答すること。 |
上記3つの業務は税理士だけに許された業務です。これを一般的に「独占業務」と言います。
税理士でないものがこれらの業務を行うことは(無報酬であっても)税理士法違反となり、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金を課される可能性がある違法行為です。
経営者が求める税理士像|相談役的な役割が期待される
上で述べたことから分かるように、税金に関しての相談や手続代行は、税理士にしか依頼できません。
したがって、ほとんどすべての経営者が税理士と顧問契約を結ぶことになります。
独占業務資格には様々なものがありますが、経営者にとって最も身近な独占業務資格者が税理士です。
結果、経営者は「何かあったら税理士に相談する」「そうすればなんとかしてくれる」と考えるので、税理士にはそれに対応できる能力と知識が必要です。
経営者が日常的に抱えている・または遭遇する問題、必要としている情報として、以下のようなものが挙げられます。
① 節税などの税金の問題
② 売上や費用の増減・取引先開拓などの経営問題
③ 設備投資やその財源確保のための借入れなどの財務問題
④ 補助金など行政が自社に及ぼす影響についての情報
⑤ 労務上の問題(賃金や雇用・解雇などについて)
⑥ 法律上のトラブル(取引先・顧客・従業員などとの揉め事など)
⑦ 社内の役員間・親族の間でのトラブル
①は上述のとおり、税理士の独占業務です。
②③④は、いわば経営コンサルタント的な内容となります。
多くの中小企業経営者は、②③④を相談するために特別な経営コンサルタントと契約するコストを惜しむのではないでしょうか?
そのとき、税理士が②~④の相談に対応できれば、経営者にとって有能な参謀・相談役を得たことになります。
また、上記問題の中には、弁護士や社会保険労務士などの独占業務範囲に含まれるものもあり、全部の解決に税理士が直接関与できるわけではありません。
例えば上記⑤⑥⑦の問題は法律上の税理士の業務範囲を超えている場合が多いでしょう。
しかし、経営者には弁護士などとのコネクションがない場合もあり、「とにかく税理士に相談してみよう」となるはずです。
そういった相談を受けて然るべき専門家(弁護士など)を紹介することも、顧問税理士の大切な役割となります。
税理士に必要な資質とは?
税理士には、社会人として当然、
- 大人のマナーを備えていること
- 時間や約束を守ること
- 身だしなみや態度がきちんとしていること
などができることが前提となりますが、更に以下のような資質も必要です。
1.自身が優れた経営者である
経営者は税理士に税金計算だけを求めているわけではありません。
AI(人工知能)や各種会計ソフトなどの進化などによって税金の計算そのものや単純な経営分析は誰でもできるようになりつつあります。
経営問題・財務問題などの相談相手として、特に開業税理士は「自らが成功した経営者であること」が必要です。自身が税理士事務所の代表社員でなくとも、経営者視点でのアドバイスができるようになる必要があります。
要は、貧乏な税理士の経営アドバイスなど誰も聞いてくれないということ。ただし、過度な金持ちアピールは反感を買う可能性もあります。
2.遵法精神|法律に反しない毅然としたスタンス
税理士はクライアントから「先生」と呼ばれることもあります。先生と呼ばれていない場合でも、少なくとも税務に関しては「指導」する立場から経営者に対応することになります。
税理士は「税務の専門家」であって、「節税や、まして脱税の手引をする人」ではありません。
クライアントから「こういう処理をして税金を安くしたいのだが」という相談を受けたとき、それが違法ならば「ダメです。なぜなら…」と、きちんと説明できる知識と、胆力が必要です。
3.知識の吸収や情報の探索に貪欲である|情報取得の能力
税理士のクライアントには多種多様の業種があります。相談に対応するためには、色んな業種などの特徴や事情を知っておく必要があります。
また、税法や関連の法律・法令について最新の情報収集も欠かせません。
現在はインターネット等で様々な情報取得が可能ですが、反面、情報の真偽を判定することも困難になっています。
こうした情報リテラシーも、法律を扱う専門家である税理士にとって重要な能力です。
税理士のタイプ|結局はマルチな知識が必要
税法は多種多様で、資格を持っている税理士と言えどもすべての税金について熟知しているわけではありません。
「相続税なら◯◯におまかせ!」「建設業界に信頼を得ている事務所です」といったネット上のアピールも見かけますが、税理士の専門細分化は実際、どのジャンルでどの程度すすんでいるのでしょうか?
業種特化型の税理士
建設業・不動産業・飲食業などの業種に特化した税理士。
業界の事情に詳しいので、狭い範囲の経営・税務相談などでは専門性を活かせるでしょう。
反面、地域の経済動向や住民の消費行動、国の施策など広い範囲での情報収集には不安があります(少なくともクライアントはそう思います)。
また、税理士は当然、全てのクライアントに対して平等に接しますが、そのクライアントが全て同業種となると(クライアントどうしが常に競合関係にあるため)シナジー効果が得られにくくなります。
税目特化型の税理士
ネットでよく見かけるのは「相続税に特化した(という)」税理士事務所です。
しかし大抵の場合、相続税には所得税や法人税・贈与税といった税金が絡んできますので、相続税の申告に置いても他税目の詳細な知識が必要となります。
まとめ:税理士を目指す方へ
税法はたいへん複雑で、法人税の申告書などはその記載も難しく、納税者の多くは税理士の助けなしには税金の申告・納税ができません。
税理士は納税者が適切な納税を行うことを補助・代行することにより、国家の財政に寄与し、納税者の無駄な税金支払を防ぐという重要な役割を担っています。
また、経営者に近い位置にある専門家であることから、その企業・地域全体においての経営アドバイザーとしての役割も軽視できません。
税理士という職業・資格、また税理士事務所で勤務する社会的価値は、大変に大きいものです。
税理士を志す方は、本記事で説明したような社会的役割を担う覚悟を持って、その目標に臨むようにしましょう。