COLUMN経営コラム

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遺産相続の相談は税理士にするべき?|その場合の費用の相場は?

2021.09.26

税務

遺産を相続するということは、人生においてそう何回も経験することではありません。

誰もが「ほとんど未経験者」なのです。

では、いざ遺産相続をする立場になったとき、また、自分が大きな財産を築き、家族や近親者に遺産をどう遺すのか考えるとき、誰に相談すべきでしょうか?

非常にセンシティブな問題だとは思いますが、本記事では遺産相続について解説します。

遺産相続について相談すべき相手、相談の仕方、費用などを詳しく案内していきます。

遺産相続とは

遺産相続とは、亡くなった人の財産を残された家族や親族などの人が引き継ぐことを言います。

相続する財産のことを相続財産といい、だいたい以下のようなものです。

  • お金(現金・預貯金)
  • 有価証券(株式など)
  • その他の動産(骨董品・絵画・車など)
  • 不動産(土地・建物)
  • 債権(貸付金・未収入金など)
  • その他の権利(著作権・賃借権など)
  • 債務(借金・未払金など)

プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も相続財産を構成します。

この記事で用いる他の用語についても簡単に説明しておきます。

用語概要
相続人遺産を遺す人。亡くなった人のこと。
被相続人遺産を受け取る人。一般的には相続人の家族や親族。
相続税相続にかかる税金。被相続人に納税義務がある。

遺産相続における専門家の役割

相続に関連しては、税理士や弁護士などの専門家に業務を依頼する必要がある場合があります。

それぞれ、どのような場合に依頼が必要となるか、主な依頼内容をみていきましょう。

専門家業務の内容備考
税理士相続税関係相続税の相談対応・税金対策・相続税の申告書作成および提出・税務調査への対応
弁護士係争の解決係争相手との交渉。係争の解決のための調停・裁判などの手続き
司法書士登記関係業務不動産等の登記手続き。他法務局提出書類の作成や申請
行政書士書類作成・書類収集法務局提出以外の書類作成代行

士業の分業

各専門家の業務範囲は法律上厳格に分けられており、例えば弁護士が遂行すべき仕事を税理士が行うと違法行為となります。

したがって、相続にあたっては、依頼する業務内容に合わせた専門家を選ばなければなりません

では、誰に相談・依頼すればよいのか

最初に相談するには、税理士がおすすめです。
なぜそうなのか、これから説明していきます。

相続では、色々な専門家の助けを必要とします。

専門家どんなときに依頼するか
税理士相続税の申告が必要。または事前に節税などを相談したい
弁護士相続で揉めている。または争いを未然に防ぎたい
司法書士相続財産に不動産など登記が必要なものが含まれている
行政書士争いの調停や税申告、不動産登記の必要はないが、遺産分割協議書などの書類作成は必要

これらの専門家は依頼人が行うべき手続きの代行者ですから、誰にも依頼せずに全て自分で行うことも可能です。

しかし現実的には、相続に関わる手続きを専門家に頼らずに行うのは無理と言っていいでしょう。

知人や顧問税理士などコネクションがあれば、まずはその専門家に相談してみよう

あなたが経営者や個人事業主ですでに顧問税理士がいたり、信頼の置ける知人に弁護士がいるなど、専門家とのコネクションを持っているならば、まずはその専門家に「誰に相談すべきか」を相談してみましょう。

専門家はほとんどの場合、他の専門家とつながりを持っていますので、最適な専門家を紹介してくれるはずです。

相談相手がいなければ、税理士がオススメ

コネクションがない場合、まずは税理士に相談してみることをおすすめします。

なぜなら、遺産相続では税金の問題が避けて通れないからです。
相続財産がどのくらいあり、相続税がかかるのか、税金が発生するとすればいくらぐらいなのかが、多くの場合、相続の話の出発点となります。

また、相続案件を多く手掛けている税理士は、相続に関するあらゆる悩みに通じています。
必要に応じて弁護士や司法書士などを紹介してもらうことも出来ます。

遺産相続で揉めている(揉め事が起きそう)ならば、最初から弁護士に相談することも考えられます。しかし、揉めるほどの財産があれば、いずれ税理士にも依頼することになります。
よって、相談の入り口としては税理士が最適です。

税理士は遺産相続に関する争いについて、他の相続人と交渉するなど弁護士だけに許されている業務はできません。しかし、お悩みを聞くことはできます。
遺産相続などの話題は友人などには話しにくいことが多く、親族などに不満があればそれを税理士に話すだけでかなり気分が楽になります。

実際には弁護士に依頼するほどの揉め事ではないことも多いのです。
もちろん、心配であればその税理士に頼めば、最適な弁護士を紹介してくれるでしょう。

付言しておくと、税理士経由で弁護士を紹介してもらったからといって紹介料が弁護士費用に上乗せされるということは、ほとんどありえません。
税理士も弁護士も細かな料金体系を持っていることが多く、そのような料金をこっそり上乗せする余地はないからです。

税理士に遺産相続を相談する|方法・手順を詳解!

ここまで「遺産相続の相談はまず税理士にしましょう」という意味のことを書いてきました。

その理由もお分かりいただけたと思います。

では、具体的にどのようにして相談したらよいか、これから詳しく説明していきます。

相続税とは

相談者が税金について熟知している必要はありませんが、基本の「キ」を知っておくことで、税理士との話がスムーズになるかも知れません。
この記事では相続税の算出について詳細は説明しません。なぜなら、相続税はあまりにも複雑で概略も説明しづらいからです。

相続税の計算方法

ここでは、大まかなイメージだけを掴んでいただくよう、相続税の計算を「超」簡単に説明します。

厳密な計算方法とは異なる説明となりますのでご了承ください。

  1. 相続人全員が相続する遺産総額を、実際に誰がいくら遺贈を受けるのかの配分とは関係なく計算。
  2. 上記の合計額を法定相続分(※)に分けて、それぞれに税率を掛けたものを合計した金額を相続税の総額とする。
  3. 相続税の総額を、今度は実際に遺贈を受ける金額で按分し、相続人各自が負担する相続税額を決定。
(※)法定相続分とは、遺産の相続割合の目安を民法で定めたものです。一例として、相続人が、被相続人の妻と子ども2人である場合、妻の法定相続分が1/2、子がそれぞれ4/1となります。

相続税の控除や特例

相続税には、政策上多くの控除措置や特例が設けられています。
特例や特別控除の数が多く、本記事で全て紹介するのは困難です。

また、特例などの適用基準も複雑で、短い記事では正確な説明ができません。だからこそ、相続税の申告は税理士の助けなしにはできないのです。

参考のために特例の一部を簡単に紹介します。

特例・控除内容
小規模宅地等の特例住居や事業に使っている土地に多額の相続税がかかると、相続人はその土地を手放さなければいけなくなる。そのため、一定の条件を満たした土地の評価額を大幅に減額することができる制度が設けられている。
配偶者控除配偶者は多くの場合、被相続人が財産を築くのに大いに寄与している。そのために自身の収入源が少ない場合には、相続税の負担が過多であるため、多額(1.6億と法定相続分の高い方の金額)の控除が認められている
未成年者控除未成年者は独自の収入源を持っていないことが多いため、生活費や学費のために相続した財産に多くの税金がかかると生活に窮することとなる。それを避けるために相続財産から控除できる金額がある。

「特例や控除があるから、自分には相続税の納税が発生しない」という判断は早計です。特例や控除の適用規定は非常に複雑なので、必ず専門家に相談しましょう。

「計算したところ、特例・控除によって相続税額はゼロ円となった。なので申告する必要もない」というのは間違いです。控除や特例を受けるためには、税額がゼロであっても相続税の申告が必要な場合があります。

相続について税理士に相談する際の注意点

相続について税理士に相談するのに、必ずしも上のような税制上の知識を持っておく必要はありません。

何より大切なのは、早めの相談です。

遺産相続での揉め事を避けるためには、相続の大枠を早めに決め、相続人全員の同意を得るのが一番です。

また、相続税対策において相続発生後(相続人の死後)にできることは少ないので、生前から対策を講じる方が効果的です。

若く、健康であっても、不幸にして不慮の死が訪れることがあります。

ある程度の財産がある方は、元気なうちに相続について税理士に相談すべきでしょう。

税理士に相談する際の流れをみていきます。

相談

とにかく早めに相談しましょう。
相続発生(相続人の死亡)以前に相談するのがベストですが、突然の不幸で夫や父親を亡くしてしまった場合なども、辛いでしょうが相続やその税金を考える必要があります。

税理士は宗教家ではありませんので、遺族の方の心のケアが上手にできるとは限りません。
ですが、経験上、相続などの問題をお聞きし、弁護士の先生を紹介したり税金の問題をクリアにしていく中で、多くのご遺族の方が少しずつ前向きになっていくのを感じます。

近親者の死という不幸の中にあっても、やはり実際的な問題の解決は必要です。

相続税などの問題をできるだけ専門家に任せてこそ、ゆっくりと故人の死を悼み、今後の人生設計を考えることができるのだと思います。

シミュレーション

生前に、しかもなるべく早くご相談いただければ、相続が発生したときにどのくらいの税金がかかるか、結果、遺族にどれだけの財産を遺せるのかが分かります。

それによって、生前に相続税対策をすべきか、どのような対策が最適なのかを提案することもできます。

相続税対策

財産の額によっては、相続税の税率が相当高くなります(2021年の最高税率は55%)。

子孫や親族になるべく多くの財産を遺すためには、対策が必要です。

相続税対策の多くは、死後では間に合わないため、やはり生前にご相談いただくのがベストとなります。

相続税申告

相続が発生(被相続人が死亡)してしまった場合、相続税を申告する必要があります。

相続税の申告期限は「死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と規定されています。

一般的な場合、被相続人が1/1に死亡すると、11/1日が相続税の申告期限となります。

税理士に依頼していれば通常、申告期限を超過する心配はありません。
しかし、相続税の申告は数日でできるような簡単なものではなく、やはりできるだけ早めに依頼しなければ期限に間に合わないことも考えられます。

税務調査対応

相続税の申告に対しては、20%の確率で税務調査が入ると言われています。
これは、5件に1件の割合です。

相続税の税務調査は、会社などと違い、家庭に税務署員が入って来ます。
税務上問題のない申告をしていても、プライバシーに属する領域に税務署員が踏み込むことも考えられます。

そのようなとき、普通の善良な市民は「ああ、こんなものか」と思ってしまうかも知れません。

逆に激怒して調査官に反抗すれば、余計な反感を買い、以後の対応に困ることもあるでしょう。

経験を積んだ税理士ならば、適切なタイミングで「これは行き過ぎだ」と税務署員を制止することができます。

そもそも、税理士が立ち会っていれば、税務調査官もそこまでの行動には出ないでしょう。

相続に際して税理士を介していれば、税務調査に対して毅然とした対応を取ることができます。

相続税にかかる税理士の費用

相続税の税理士費用は、相続財産の種類や価値によって大幅に異なります。

相続財産の総額が1億円未満でも、税理士報酬は数十万~百万円程度にはなるでしょう。

財産総額がもっと大きくなれば、税理士への報酬は更に多額となります。

相続は、普通の人々にとっては人生に1回あるかないかの出来事なので、申告の大変さは未経験の人にとっては理解しにくいでしょう。

こう考えてみましょう。

相続税の申告は、法人税や消費税と違い、個々人によって大きく内容が異なります。
つまり、相続税申告はルーチンワークとはなりえないのです。

また、納税者にとっても突発的な支払いでしかも多額となる事が多く、税理士には多くの作業時間とストレスがかかってきます。

よって、相続税にかかる税理士報酬がある程度高額になるのは仕方のないことなのです。

まとめ:相続の準備は、すぐにでもするべき

相続税についてはまず、税理士に相談するのがおすすめです。

それも、なるべく早く相談すべきです。

人の命は儚いもの。忙しく働いているあなたは、今は元気だと思っていても、明日病に倒れるかも知れません。
たとえ毎年の健康診断の結果に問題がなくても、1時間後に交通事故に遭う可能性もあるのです。

もちろん、そんな不幸があなたに訪れないことを祈っています。
優れた経営者はいい意味で楽天家です。多分そう簡単には死なないでしょう。

この記事を暗い話と思わずに、懸念事項を払拭して、御社の事業に、明るい未来に邁進するための準備と考えるようにしてください。

そして、ここまでお読みくださった方々の、明るい明日のためにお役立ていただければ幸いです。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。