COLUMN経営コラム

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【日本政策金融公庫】設備資金とは?初めて融資を申込む方へ

2023.03.03

融資

日本政策金融公庫HPに、運転資金と並んで記載のある「設備資金」。設備資金とはいったい何なのか。融資を申し込むにも、慣れない用語が多く頭を悩ませていらっしゃいませんか?

設備資金とは、事業に必要な資金のうち「金額が大きく長期的に使用する設備」購入の費用を指します(対して運転資金は事業を進めるのに必要な日々の費用)。

今から、日本政策金融公庫がいう設備資金とは何なのかやその具体例、設備資金の扱いで気をつけるべきポイントをお伝えしていきます。

設備資金の扱いをいい加減にしてしまうと、事業に大きな悪影響が生じます(本当です)。しっかり理解して手続きを進めてください。

日本政策金融公庫がいう設備資金とは?

事業に必要な資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」の二つに分けられます。

  • 設備資金とは、「金額が大きく長期的に使用する設備」を購入するための費用
  • 運転資金とは、家賃や仕入費など、事業を進めるのに必要な日々の費用(事業に必要な資金のうち、設備資金以外の資金)

運転資金については「創業計画書の運転資金の書き方」で詳しく解説しました。

設備資金の具体例

それでは、日本政策金融公庫がいう設備資金の具体例をご覧ください。

  • 土地・建物の購入や増改築
  • 建物の賃借に係る敷金・保証金・権利金
  • 店舗内装
  • 機械、車両、パソコン、電話、机
  • ソフトウェア、ホームページ開設費(無形資産も設備資金に含まれます)

いずれも金額が比較的大きく、長期的に使用していくものばかりであることがわかります。

ご自身の資金の使用目的が設備投資に該当するか、わかりましたでしょうか?

事業に関係ない費用は設備資金に含めない

融資を受けるにあたって気をつけなければならないのは、私生活で使用する設備への支払いは、設備資金に含められないということです。これは生活費を運転資金に含められないのと同様であり、あくまで、事業に使用する設備が融資の対象となります。

具体的に、以下は融資の対象とならないので、申込時に記載しません(日本政策金融公庫HP)。

  • 私生活で使う乗用車
  • 店舗付き住宅の住宅部分
  • 法人設立にあたって必要な資本金
  • 増資のための出資金

車両については、営業車・トラック・バス・タクシーなど、事業用車であれば融資を受けられます。

【特徴】設備資金の支払いは一時的

設備資金運転資金
支払い一時的継続的

もう少し、微妙なラインでの設備資金・運転資金の棲み分けを解説します。

設備資金の特徴として、支払いが一時的であることが挙げられます。実際、建物や機械の支払いは一時的です。

一方、運転資金の支払いは継続的に発生します。仕入費・家賃・人件費などは繰り返し支払うものですよね。

このことからも、建物賃借に係る敷金・保証金・権利金は先述の通り設備資金であるのに対して、賃料・礼金は運転資金に該当します。設備資金とは何なのか、もう一歩深くご理解いただけましたでしょうか?

【申込準備】設備資金の借入には見積書が必要

設備資金運転資金
融資を受ける際の根拠資料見積書・領収書自身で作成
(資金繰り表など)

日本政策金融公庫から設備資金の融資を受けようと考えているなら、設備を購入する業者から見積書をもらっておきましょう

その設備資金が必要であることの根拠として、日本政策金融公庫に見積書を提出する必要があるからです。

なお、設備購入後であれば、見積書の代わりに領収書が必要になります(そもそも日本政策金融公庫以外の多くの金融機関では、設備購入後に設備資金の融資を受けることができません)。

※補足:日本政策金融公庫から初めて融資を受けられる場合、「日本政策金融公庫とは?」もご活用ください。審査に通るにはどの程度自己資金を準備するべきかについても、「創業融資の自己資金割合と審査通過の考え方」で解説しています。

【注意点】設備資金の取り扱い

審査前や審査後、晴れて融資を受けられた後など、融資を申し込んだ後に状況が変わることがあります。設備資金の取り扱いを把握し、不要なトラブルは防ぐようにしましょう。

設備そのもの・使いみち・金額の変更は原則できない

設備資金運転資金
借入金の使いみち自由度が低い自由度が高い

設備そのもの・設備の使いみち・設備の金額など、融資決定時の内容から変更することは原則できません。必ず事前に日本政策金融公庫から承認を得る必要があります(日本政策金融公庫HPに記載があります)。

例えば、車両を購入する予定だったのが、リースで月々支払っていくことになった場合は、使いみちが運転資金に変わってしまっています。借りようとしていた物件を先に借りられ、物件を変更せざるをえなくなることもあるでしょう(借りたい物件は仮押さえしておきましょう)。

無断で計画を変更してしまうと、日本政策金融公庫からの信用を失いますし、最悪の場合は一括返済の可能性もあります。事前の対策や、日本政策金融公庫への連絡を、丁寧に行うようにしましょう。

設備資金を運転資金として使わない(資金使途違反)

設備資金を運転資金として使ってはいけません。資金使途違反となり、ペナルティを受けることになってしまうからです(ペナルティは後述します)。

金融機関は、預金者から預かったお金を、責任を持って運用(融資)しています。ですから、勝手に違う用途に使われるのは、金融機関としては大問題なのです。

運転資金として使う以外の資金使途違反の例としては、

  • 見積もりを多めに出してもらい浮いた金額を別用途で使用する
  • 寄附、他社・他者への流用

などが挙げられます。

金融機関からの信頼を失わないためにも、設備資金は当初の目的通りに使用しましょう(使途の変更がある場合は、先述の通り、日本政策金融公庫に承認を得ましょう)。

資金使途違反のペナルティについて

設備資金を本来の使途以外に使った場合、少なくとも該当する融資を完済するまで、あるいは今後一切、融資してもらえない可能性が高いです。

最悪の場合は一括返済の義務を負います(期限の利益喪失条項に基づく措置)。

資金使途違反などバレないように思われるかもしれませんが、金融機関は領収書・通帳・決算書・固定資産台帳などで確認しますから、知られるものと思ってください。何も言ってこない場合でも、金融機関は把握していることが多いです。

【解説】設備資金の融資条件・特定設備資金・設備資金貸付利率特例制度

最後に、日本政策金融公庫から設備資金の融資を受けようとする際に目にする内容の、基本的な部分をよりわかりやすく整理して終わりにしたいと思います。

日本政策金融公庫から設備資金を借入する際の融資条件

次に、日本政策金融公庫から融資を受ける際の融資条件を、設備資金と運転資金を比較しながらみていきましょう。

一般貸付(一般的によく利用される融資制度です)

設備資金運転資金
融資限度額4,800万円4,800万円
返済期間10年以内
(うち据置期間2年以内)
5年以内
(うち据置期間1年以内)

※2023年3月時点の情報です。

新規開業資金(創業時によく利用される融資制度です)

設備資金運転資金
融資限度額総額7,200万円
(うち運転資金は4,800万円まで)
返済期間20年以内
(うち据置期間1年以内)
7年以内
(うち据置期間1年以内)

※2023年3月時点の情報です。

なお、創業にあたって無担保・無保証人で利用できる新創業融資制度を併用する場合、融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)となります。創業融資を利用できるタイミングについては「創業融資はいつまで受けられるか」をご覧ください。

特定設備資金とは

特定設備資金は、商品や業種の変更を行う場合に必要な設備資金で、通常の設備資金よりも融資限度額や返済期間が優遇されます。

設備資金貸付利率特例制度とは

設備資金貸付利率特例制度は、生産性の高い設備の購入(5年間で2%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる設備投資)をする場合に、低金利で融資を受けられる制度です。

新創業融資制度などと同様、他の融資制度と併用して利用する制度となっています。

この記事のまとめ

設備資金について把握し、お手続きを進めていけそうでしょうか?

  • 創業融資の手続きが難しい
  • 創業融資を確実に受けたい
  • 創業・事業に集中したい

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※上記%は、個人信用情報に問題がある場合を除いたものです。

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この記事の執筆者

末松和真

税理士法人FLAGS代表社員。税理士。 (株)FLAGSホールディングス 代表取締役 税理士として税務・会計はもちろんの事、経営支援・クラウド会計支援・融資実行・補助金に強く、幅広い知識とサービスで企業の成長を支援している。